ホンモノハドッチ?
ヨウが呪いにかかっていた一方で、
大朔は目の前に母が2人いることに呆然としていた。
ウソだろ・・
母さんが何でここに!?
しかも2人って・・
「おや?
顔が青ざめているようにみえるよ?クックック。
お前の大事な人。連れてきちゃった。ハハハ!!」
2人の母さんが口をそろえて喋った。
でも、
所詮は偽物・・
本物の母さんを傷つけるわけじゃない。
冷静になれ・・俺!!
すると2人の母さんが喋った。
「おっと。
勘違いしちゃいけないよ?
どちらかは俺。
もう片方はホ・ン・モ・ノの心を連れてきました!!
ことの重大さがわかったかな?
お前が間違えて攻撃すれば、
母親の命はないよ・・ククク」
そんな・・
どっちかが母さん・・・?
声も服も顔も同じなのに!!
どうやって見分ければ・・
「さあ・・
困惑しているようだけどさあ。
ルールを言うねー?
簡単さ。
偽物を殺すんだ。
つまり、
”俺を殺せばいい”。」
!!
だけど・・
間違えれば母さんの命が・・
2人の母さんは微笑んだ。
そして、
それぞれの手に包丁が握られた。
「さあ。
始めようか・・
お前の大好きな母さん。
くれぐれも殺さないようにね?」
母さん達が笑いながらこっちに向かってきた!!
くっ!!
どうしたら・・自分の親を傷つけるなんて!!
俺には・・できない
一人の母さんが俺に包丁で切りつけて来た!!
ガッ!!!
「っ!!母さん!!
正気を取り戻してくれよ!!」
俺は必死で母さんの腕を掴んで包丁の攻撃を封じた。
「大朔・・痛いわ・・
腕を離してちょうだい・・
ね?お願いよ。」
「母さん。
本物の母さん?
だけど・・包丁持って・・」
その時、
俺が動きを封じた母さんの後ろから、
2人目の母さんがヌッと現れた。
同様に手には包丁が握られていた。
「私が本物よ?
さあ・・どっちが本物かな?
お前の判断が親を傷つけるんだ・・クックック
そして・・
判断が鈍ればこうなるのさ!!!」
ザシュッ!!!
「ぐっ!!腕が・・
そっちが偽物だったか!!」
俺は後に現れた偽物に腕を切りつけられた。
俺はひたすら防御し続けた。
俺の身体には包丁で切りつけられた傷でいっぱいになり、
全身自分の血で真っ赤になっていった。
それでも、
母を傷つけることはできず、
どんどん体力を失っていった。
そして・・
「はぁはぁ・・はぁ」
ガクっ・・
俺は立っていられなくなり、
ついに膝をついてしまった。
なお、俺から血が流れ出し続ける・・
血が・・こんなに・・
俺はここで死ぬ運命なのか?
まだ、
死にたくない。
でも俺にはどうすることもできない。
母さんを傷つけたくないんだ。
やっと・・
偽物がどっちかわかったのに・・
身体が動かない。
俺はそのまま倒れ込んだ。
意識はまだあった。
大朔は、
ただひたすら切りつけられていたわけじゃない。
どちらが偽物なのか見極めようとしていた。
そして分かった。
どちらが偽物なのか。
だけど、遅かった。
身体が動かないのだ。
せっかく・・
わかったのにな・・
母親達がいった。
「あら。大朔。
そんなに血が流れていたら死んでしまうわよ?
でも心臓はまだ動いているのね。
それじゃあ、逆に辛いでしょう?
ひと思いに死んでしまった方が楽じゃないかしら・・あはははは」
母さんは笑った。
一人だけ。
ほら・・
こんなにヒントがあったじゃないか。
本物の母さんは笑っていないよ・・
笑っているのは偽物だけなんだ。
時間とともに片方の母さんが笑わなくなっていたんだ。
偽物は常に俺を見ているから、
本物の母さんの顔なんて見ていない。
だから気づかないんだ。
それに・・
「さあ。
今楽にしてあげるからね?
母親の手で死ねるんだもん。
むしろ感謝しなさいよ?
大朔クン。」
だけど、
変化があったのはそれだけ。
どちらも攻撃の手は休めない・・
片方の母さんが俺に近づいてきた。
ゆっくりと確実に。
ザ・・ザ・・ザ・・
こっちはホンモノの母さん?
ザ・・ザ・・ザ
母さんが、俺の目の前で止まった。
俺は母さんを見た。
もう顔すら動かすことをためらうくらい激痛が全身を電気のように駆け巡る。
それはホンモノの母さんだった。
なんで分かったかって?
そんなの簡単だよ。
だって母さん。
泣いてんじゃん・・
「さあ。殺せ」
その時、
後ろの方にいた偽物が、
本物の母さんに命令を下した。
母さんからは大粒の涙が落ちる。
俺の目の前にポタポタとその悲痛な涙がこぼれおちる。
あぁ・・母さん。
そんなに手が震えて・・
母さんは震える手で包丁を上へ上へと高く上げた。
母さんすまない。
俺が巻きこんだんだ。
こんなことさせて・・
俺、
恨んだりしないから・・
頼むから。
”泣かないで”
包丁は俺めがけて振り下ろされた。