ココロトハナニカ
俺の声、もがき苦しむ獣の姿・・
息遣いでさえもすべてが遅く感じる。
スローモーションのようだ。
どんなに遅く感じても、獣との距離は縮まる。
ゆっくりと・・確実に。
前に”救いたい”って言葉は・・
なんてちっぽけな言葉なんだろうって思ったけど・・
本当はそんなんじゃなかったんだ。
ちっぽけじゃない。
むしろ、何万キロ歩いてもたどりつかないような・・
なんて言ったらいいんだろうな。
すごく遠い存在なんだ。
大股に開く脚、
空気をつかむように伸びる腕。
俺の手が、脚が・・獣に近づく。
時は今か今かと俺を急がせる。
なにもかも
努力すればいいってもんじゃない。
俺の息が上がる。
獣との距離は近づくばかり・・
なにもかも
形だけ救えばいいってもんじゃない。
一歩一歩しっかりと進む俺の身体・・
大量の血が、
まるで俺なんてただの血を受け止める器だと言わんばかりに流れ出す。
生き物達が何で苦しんでいるのか・・
どうしてほしいのか。
みんな苦しんでる理由はそれぞれ違うんだ・・
獣の闇の侵食はすでに首にまで迫っていた。
その目は光を失ったかのように黒く染まり、闇が渦巻いていた。
俺が救いたいのは”心”そのもの。
例え心を操られたとしても
何人たりとも完璧に心を操ることなんてできない。
それが”心”だ。
獣はその真っ黒な目から黒い涙をながした。
その涙がどんな意味で流したのかはわからない。
助けを求めたのか、
ただ自然に流れただけなのか。
わからない。
わからないからいいんだ。
未来にはいつも”可能性”が秘めている。
俺は自信がある。
その”可能性”がいい方向へ向いていると。
だって、
俺が獣に触れる直前、
その目からとても綺麗な涙が一滴・・流れたから
それは”助けて”のサインだよな?
俺の指先が・・触れた