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カケ



・・"ネア"。


あの母犬は確かにそう言った。



俺はあの声に導かれて光に飛び込んだあと、

意識を回復した。


当然のごとく、まず最初に肩の激痛が身体中を駆け巡った。

さっきの闇みたいな空間に居たことが嘘みたいだった。


でも嘘じゃない。

俺の頭の中には”ネア”という名前がこびりついて離れない。


血がドクドクと流れてる。

俺が生きてる証拠。


まぁ、

こんなにたくさん血が流れてたらいつ死ぬかわからないけど・・


俺は痛む肩を押さえて上半身を起こした。


貧血みたいに一瞬目の前が真っ暗になったけど、すぐ見えるようになった。


頭がガンガンする。

何か堅いもので殴られてるような感覚・・・


状況を把握しようと、辺りを見渡した。


すると、

アランが俺を守るように戦ってた。


また・・

助けてもらったな・・

ありがとう。アラン。



首にかみつき


お互いをひっかき合い


突進して壁にたたきつけたり・・


人間の戦いなんて比にならないくらい壮絶な戦い。

そんなのが目の前で繰返し行われている。


両者が動くたび、壁や物にぶつかるたび、

様々な物が飛び交い派手な音を立てて粉砕する。

まるでなんの変哲もない石ころだって、銃弾のように飛んでくる。


俺はふと獣の方を見た。


あれは・・・?


俺は目を凝らして獣の足元を見た。



「・・・!!なっ!うそだろ?」



俺は自分の目を疑った。


獣の足は徐々に闇に侵食されていた。


足から上へ・・上へとどんどん侵食されていくのが分かる。



「ヤバイだろ・・これは。


 はやくなんとかしないと!!」


俺はすぐに立ち上がり、走った。



「アラン!!


 奴の足元をみろ!!」



するとアランは驚いた顔でこちらを見た。



「だ・・大朔!!

 お前いつ目が覚めたのだ。


 足元?

 一体何が・・?


 ・・!!」



アランは一度引いて、後ろに下がった。


あれはなんだ。

黒いものが足に絡むように・・


あれに触れてはならん!!



「アラン!!あとは俺に任せてくれ!!」



「なっ!!

 駄目だ大朔!!


 その黒いのに触れてはいかん!!」


遅かった。


大朔はもうすでに獣へと向かっていた。


そして・・



俺は獣によって壁へと叩きつけられた・・



「がはっ!!」



叩きつけられる時、

俺は腹を爪で引っ掻かれた。


ぅ・・

また血が・・


!!


俺は自分の腕を見た。


あの黒い塊のようなものが腕に巻きついていた。


しまった・・

油断してた。


たぶん、この感覚は身体を侵食されないとわからないだろう。


黒いものは見た目どおりのものだった。

痛みじゃない。


でも、侵食されるのがわかる。


まさに絶望・・

それしか伝わってこない。


楽しみ、喜び、希望。


すべての感情をこの黒いものが飲みこんでいく・・


心が・・壊される・・


いやだ!!


俺は創造者の思い通りにはならない!!


身勝手な考えで死者の魂をいいように使って・・


そんなことが許されるものか・・!!


俺は思いっきり腕をきつく握った。


こんなもので食い止められるものではないのは分かっていた。


自分の気をしっかり持つために・・


俺の行動が、アランの気持ちが、ヨウの痛みが・・


無駄にならないように意を決した。



「こ・・んなもの・・!!

 こんなんで簡単に心を操れると思うなよ・・!!


 創造者の・・好きにさせない!!!!」


俺はもう一度立ち上がった。


そして獣めがけて突進した。



獣に取り憑いた黒い塊はもうすでに獣の身体の大半を飲み込んでいた。

苦しくて、苦しくてもがき苦しむ姿はあまりに哀れだった。



「うぉおおおおおおお!!


 これ以上・・


 苦しめるのはやめろぉぉおおお!!!」


俺は


獣めがけて飛び込んだ・・



ネア・・

もう苦しまないでくれ・・




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