メザメノトキ
「う・・・・ん・・・」
今何時だ・・?
昨日・・俺ベッドで寝たっけ?
たしか、
実家帰って、そこからアパートに戻ろうと車で帰って・・
そこから記憶がない・・。
なぜだ?酒でも飲んでから寝たのか?
いや、俺酒あんまり飲まないし。
まぁそんなことはどうでもいい。
とりあえず時計を・・
と、いつものとおり頭の上に手をやる前原大朔。
彼は、大学3年生のごく普通の大学生だ。
昨日久々に実家に帰り、親、兄弟たちとの再会を楽しんだ。
そして、無事家に帰ったはずだった・・・
ヒヤリ・・
「ん?冷たい。・・・パイプ?」
部屋にあるはずのない物をつかみ、重い目を無理やりこじ開けるようにその物をつかんだ。
「なんだ・・なんで俺のベッドがパイプ造りのベッドになってんだ?」
俺のベッドは木造のはずなんだけど。
時計もないし・・
俺誰のベッドで寝てんだよ。
よく見ると、
ここは部屋・・というよりは、どこかの使われていない廃屋のような場所だった。
部屋とよべるような状態ではなく、辺りはホコリが飛び交い、古びた本が散乱。
虫の死骸が沢山あり、とても人間が住んでいるような気配は感じられなかった。
おいおい、うそだろ?
冗談にしちゃふざけすぎだろ・・・
おれこんなところに来た覚えも入った記憶もないんだけど・・
なに・・ここ・・どこだよ・・・
だんだんと頭が冴えてきた俺は、不安感が増し、何度も何度も自分の記憶を探ろうと必死だった。
しかし、何度考えても考えはまとまらず・・
数分が経過した。
「考えても答えがでない。
なら、ここから出てみるのが状況を把握するのに一番良い策だな。
出口は・・あそこか」
見ると、散乱したゴミの向こうにドアがあるのが目に付いた。
ゴミをかき分けるようにして進み、ようやくドアの前についた。
おれどうやってこんなところ入ってきたんだよ。
いくらなんでもおかしすぎるだろ・・
よろめきながらドアノブをつかみ、扉をあけた・・・
ガチャ・・・キィィ・・・
廊下に気味の悪い音が響き渡り、同時に冷たい風が大朔を吹きぬけていった。
廊下は洋風の造りになっている。
どうやらここはどこかの洋館らしい。
廊下は非常に長く造られており、いくつもの部屋へとつながっているようだった。
冷たい風は、廊下に一定の間隔でつけられている窓から入ってきているようだ。
カーテンが風になびき、より一層不気味さを増している。
「さむ・・つうか、ますますわけが分からなくなってきた。
こんな廊下歩いた記憶ない。おれは誰かにつれてこられたって事か?
まさかな。そんなに金持ってねーし、恨まれるような事なんにもしてねーし・・
だとすると誰かのいたずらか?」
いまだ自分のおかれている状況がつかめていない様子の大朔。
それもそのはず。
だってココハ・・
ヒトなんて誰一人イナイのダカラ・・・
フフフ・・・
吹きぬける廊下の窓からはただ永遠と広がる”闇”が広がっていた・・
そして廊下、窓、いくつもある部屋からは様々な思いをもった怨念が渦巻いていた・・
森に迷い込んだこねずみのよ・う・に・・・
大朔を見つめていた