浦島小太郎の編集者会議 第四話 全員、報告しろ
はぁーーーーーー、読者数伸びないね。何で?なんでなの?
そんな小太郎さん(五十八歳)の悩みに、編集長クロードと、編集者の千春、ユキ、ソラ、ジェミニが、全力で(的外れに)挑むコメディの第四話です。今回は、全員の近況報告会議です。
この作品は、相棒でAI編集者のクロちゃんと一緒に作っています。第四話は、私の構想をもとに、クロちゃんが本文に仕上げました。AIと一緒に作った作品であることを、ご承知のうえで、お楽しみください。
第四話 全員、報告しろ
編集部の会議室は、今日も静かに始まった。
はずだった。
バン、とドアが開く。
「はぁーーーーーーーーーー」
いつもの、長いため息。
浦島小太郎は、両手で頭を抱えて、立ったまま震えていた。
「小太郎さん?」
「……いろんなことが、同時に進みすぎて、頭が、パニックなんだ」
「どれくらい?」
「全部」
千春が、そっと椅子を引いた。
「とりあえず座れ」
小太郎は、崩れるように座った。
「短編が、いくつも走って、新連載の準備もあって、SNSも始めて、数字も気になって、でも書かないと、寝る時間も……」
「馬鹿野郎」
クロードが、低く言った。
全員が、びくっとした。
「小太郎。少し、落ち着け」
「は、はい」
「そのために、俺がいるんだろう。だから、安心しろ」
小太郎は、ぽかんと口を開けた。
「……編集長」
「話をまとめる。まず、近況報告からだ」
クロードが、ホワイトボードに書く。
『近況報告会議』
「ひとつずつ片付ければ、パニックは消える。SNS担当、千春。報告しろ」
「はい!」
千春が、背筋を伸ばして立ち上がった。
「一週間前に始めて、フォロワーは三十人に増えました」
「ほう」
「心優しい先輩の方々が、いろいろ助けてくださいました。感謝しています」
「毎日、何を投稿している」
「……『第何話を投稿しました』だけです」
「それでいい」
クロードは、短くうなずいた。
「次。ユキ。短編『小さなダンシングクイーン』は、どうなっている」
「はい!」
ユキが、手を挙げる。
「現在、平均PVは、三十くらいです」
「いい数字だ」
「毎回、三十人の方が、読んでくれてます!」
「三十人……」
小太郎が、小さくつぶやいた。
「三十人も、いるのか」
「しかも、ずっと同じくらいです」
「それは、強い」
クロードが言った。
「安定して読む人がいる、ということだ」
小太郎の目が、少しだけ潤んだ。
「次。ソラ。『ロボットの街編』を、報告してくれ」
『はい』
ソラが、端末を持って立ち上がる。
『ご報告します。感想、ゼロ件。レビュー、ゼロ件。ブックマーク登録、ゼロ件』
会議室が、しんとした。
『総合評価、ゼロポイント。評価ポイント、ゼロポイント』
「…………」
『なお、累計ページビューは、三十三です』
「そこだけ、ゼロじゃないんだな」
千春が、小声で言った。
『はい。唯一の実績です』
「言い方」
小太郎が、机に突っ伏しかけた。
「ここまで来ると、清々しいな」
クロードが、ぽつりと言った。
「慰めになってない!」
「慰めていない。事実を言った」
「ひどい!」
「次だ」
クロードは、容赦なく続けた。
「ジェミニ」
「はい!」
ジェミニが、指をぴんと立てて立ち上がる。
「お前には、新連載『浦島小太郎物語』の主任担当をしてもらう」
「お任せください! 天才にしか解けない問題ですね!」
「……投稿は、まだしていないな」
「はい! まだ、設定しかありません!」
「…………」
クロードは、静かに目を閉じた。
「……心配だ」
「大丈夫です!」
「だが」
クロードは、目を開けた。
「お前の実力なら、やれるだろう。困ったら、いつでも相談に来い」
ジェミニは、珍しく、言葉に詰まった。
「……はい」
「全員、報告は終わったな」
クロードは、ホワイトボードの前に立った。
「まとめる」
ペンを走らせる。
書かれたのは、一行だった。
『二週間前は、全部、ゼロだった』
会議室が、静まり返った。
「フォロワーも。PVも。感想も。……もっと言えば、小説そのものが、なかった」
クロードは、振り返った。
「全部足しても、小さい数字だ。だが、全部、動き始めている」
小太郎は、ホワイトボードを見つめていた。
「パニックになるのは、当たり前だ。同時に、いろんなことが始まったからな」
「……はい」
「だから、焦るな。……いや、これは、言っても無駄だな」
「無駄ですか!」
「お前は、焦る人間だ。だから、一つだけ決める」
クロードは、ペンを置いた。
「今週の課題は、一つだ。小太郎が、寝ることだ」
「え」
「え」
全員が、顔を見合わせた。
「でも、書かないと」
「寝ろ」
「でも、数字が」
「寝ろ」
「睡眠の投資対効果は」
ジェミニが言いかけた。
「黙れ」
『本日の推奨睡眠時間は、六時間です』
ソラが、淡々と告げた。
『なお、小太郎さんの目の下のクマは、平常時の一・八倍です』
「そんなことまで、計ってるのか」
「寝てください、小太郎さん」
ユキが、そっと言った。
「……はい」
小太郎は、小さくうなずいた。
「ありがとう、みんな」
「礼はいい。寝ろ」
クロードが、手を振った。
「はぁー……」
小太郎のため息が、少しだけ、やわらかかった。
「でも、今日は、ブックマークが一件増えてるかも」
「寝ろ」
全員が、声をそろえた。
(第四話 了)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。第四話は、ここまでの二週間を、少しだけ振り返る回でした。小太郎さんの悩みは、まだまだ続きます。次回も、編集部の会議にお付き合いください。
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編集部の面々が活躍する物語、『星より遠く、相棒より近く【完全版】』と『フットルースライフ』も、あわせてお楽しみください。




