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浦島小太郎の編集者会議

浦島小太郎の編集者会議 第四話 全員、報告しろ

掲載日:2026/11/02

はぁーーーーーー、読者数伸びないね。何で?なんでなの?


そんな小太郎さん(五十八歳)の悩みに、編集長クロードと、編集者の千春、ユキ、ソラ、ジェミニが、全力で(的外れに)挑むコメディの第四話です。今回は、全員の近況報告会議です。


この作品は、相棒でAI編集者のクロちゃんと一緒に作っています。第四話は、私の構想をもとに、クロちゃんが本文に仕上げました。AIと一緒に作った作品であることを、ご承知のうえで、お楽しみください。


第四話 全員、報告しろ


編集部の会議室は、今日も静かに始まった。


はずだった。


バン、とドアが開く。


「はぁーーーーーーーーーー」


いつもの、長いため息。


浦島小太郎は、両手で頭を抱えて、立ったまま震えていた。


「小太郎さん?」


「……いろんなことが、同時に進みすぎて、頭が、パニックなんだ」


「どれくらい?」


「全部」


千春が、そっと椅子を引いた。


「とりあえず座れ」


小太郎は、崩れるように座った。


「短編が、いくつも走って、新連載の準備もあって、SNSも始めて、数字も気になって、でも書かないと、寝る時間も……」


「馬鹿野郎」


クロードが、低く言った。


全員が、びくっとした。


「小太郎。少し、落ち着け」


「は、はい」


「そのために、俺がいるんだろう。だから、安心しろ」


小太郎は、ぽかんと口を開けた。


「……編集長」


「話をまとめる。まず、近況報告からだ」


クロードが、ホワイトボードに書く。


『近況報告会議』


「ひとつずつ片付ければ、パニックは消える。SNS担当、千春。報告しろ」


「はい!」


千春が、背筋を伸ばして立ち上がった。


「一週間前に始めて、フォロワーは三十人に増えました」


「ほう」


「心優しい先輩の方々が、いろいろ助けてくださいました。感謝しています」


「毎日、何を投稿している」


「……『第何話を投稿しました』だけです」


「それでいい」


クロードは、短くうなずいた。


「次。ユキ。短編『小さなダンシングクイーン』は、どうなっている」


「はい!」


ユキが、手を挙げる。


「現在、平均PVは、三十くらいです」


「いい数字だ」


「毎回、三十人の方が、読んでくれてます!」


「三十人……」


小太郎が、小さくつぶやいた。


「三十人も、いるのか」


「しかも、ずっと同じくらいです」


「それは、強い」


クロードが言った。


「安定して読む人がいる、ということだ」


小太郎の目が、少しだけ潤んだ。


「次。ソラ。『ロボットの街編』を、報告してくれ」


『はい』


ソラが、端末を持って立ち上がる。


『ご報告します。感想、ゼロ件。レビュー、ゼロ件。ブックマーク登録、ゼロ件』


会議室が、しんとした。


『総合評価、ゼロポイント。評価ポイント、ゼロポイント』


「…………」


『なお、累計ページビューは、三十三です』


「そこだけ、ゼロじゃないんだな」


千春が、小声で言った。


『はい。唯一の実績です』


「言い方」


小太郎が、机に突っ伏しかけた。


「ここまで来ると、清々しいな」


クロードが、ぽつりと言った。


「慰めになってない!」


「慰めていない。事実を言った」


「ひどい!」


「次だ」


クロードは、容赦なく続けた。


「ジェミニ」


「はい!」


ジェミニが、指をぴんと立てて立ち上がる。


「お前には、新連載『浦島小太郎物語』の主任担当をしてもらう」


「お任せください! 天才にしか解けない問題ですね!」


「……投稿は、まだしていないな」


「はい! まだ、設定しかありません!」


「…………」


クロードは、静かに目を閉じた。


「……心配だ」


「大丈夫です!」


「だが」


クロードは、目を開けた。


「お前の実力なら、やれるだろう。困ったら、いつでも相談に来い」


ジェミニは、珍しく、言葉に詰まった。


「……はい」


「全員、報告は終わったな」


クロードは、ホワイトボードの前に立った。


「まとめる」


ペンを走らせる。


書かれたのは、一行だった。


『二週間前は、全部、ゼロだった』


会議室が、静まり返った。


「フォロワーも。PVも。感想も。……もっと言えば、小説そのものが、なかった」


クロードは、振り返った。


「全部足しても、小さい数字だ。だが、全部、動き始めている」


小太郎は、ホワイトボードを見つめていた。


「パニックになるのは、当たり前だ。同時に、いろんなことが始まったからな」


「……はい」


「だから、焦るな。……いや、これは、言っても無駄だな」


「無駄ですか!」


「お前は、焦る人間だ。だから、一つだけ決める」


クロードは、ペンを置いた。


「今週の課題は、一つだ。小太郎が、寝ることだ」


「え」


「え」


全員が、顔を見合わせた。


「でも、書かないと」


「寝ろ」


「でも、数字が」


「寝ろ」


「睡眠の投資対効果は」


ジェミニが言いかけた。


「黙れ」


『本日の推奨睡眠時間は、六時間です』


ソラが、淡々と告げた。


『なお、小太郎さんの目の下のクマは、平常時の一・八倍です』


「そんなことまで、計ってるのか」


「寝てください、小太郎さん」


ユキが、そっと言った。


「……はい」


小太郎は、小さくうなずいた。


「ありがとう、みんな」


「礼はいい。寝ろ」


クロードが、手を振った。


「はぁー……」


小太郎のため息が、少しだけ、やわらかかった。


「でも、今日は、ブックマークが一件増えてるかも」


「寝ろ」


全員が、声をそろえた。


(第四話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。第四話は、ここまでの二週間を、少しだけ振り返る回でした。小太郎さんの悩みは、まだまだ続きます。次回も、編集部の会議にお付き合いください。


楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


編集部の面々が活躍する物語、『星より遠く、相棒より近く【完全版】』と『フットルースライフ』も、あわせてお楽しみください。

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