本性
「小さい頃、何考えてた?」
「…晴れてるなぁ、とか」
「馬鹿か。そういう質問な訳無いだろ」
「いや、だって覚えてないですよ普通」
「だろうな。俺も実際覚えてないし」
「例えばですよ、全人類で”これが僕の本性です”って覚えておくようにしたら、やっぱり分かりますかね?」
「分類とかは出来るんだろうな。今で言う所の優しいとか」
「他になんかありましたっけ?」
「…無いかもな。怒りっぽいは、違うか」
「確か、性格診断とかありましたよね。性格を何パターンかに分けるやつ」
「それに怒りっぽいとかの分類はあるのか?」
「そう呼ばれてないだけで、そういう分類はありますよ」
「ちなみにお前の分類は?」
「1152Bだったかな」
「型番かよ」
「実際、それくらい統一されてる方が楽な気もしますけどね」
「俺らの仕事の場合な」
「せっかくなんで、先輩もやってみては?」
「断る」
「ケチ」
「俺の分類はケチかもな」
「あと無表情、効率厨、怠慢」
「悪口しかないな」
「悪口じゃない分類なんて無いでしょ。優しいですら半分悪口なのに」
「は?そうなのか?」
「みんながみんな相手を見下すんですから、全部悪口に決まってるじゃないですか」
「卑屈な思想だな」
「そういう仕事ですよ」
「お前の分類はどんなのなんだ?」
「外交的でお喋り、不真面目で欲望に忠実」
「…外交的は褒め言葉だろ」
「いえいえ、特に若者の間では、外交的ってのはあまり良い言葉として使われてませんよ。陽キャだとか」
「あぁ、でもそれは陰キャの評価だろ?」
「陰キャだろうが陽キャだろうが市民権はありますよ?もしかしてレイシストですか?」
「そうだが?」
「そうでしたか」
「優生思想だよ。多分みんな持ってるだろ」
「どうでしょうね。あんまりそういう事言うとまた怒られますよ?」
「あぁ、そうだったな」
「…本性も、遺伝子から選別できると思います?」
「育成環境に違いがなければ可能だろ。狐の家畜化実験は成功だったろ?」
「人間も?」
「もうなってる」
「へぇ、言われてみれば、そうかもしれませんね。にしては随分多様性がありますが」
「ちまちま取り除くのはめんどくさいだろ?やるなら一斉にだ」
「あー…なるほど?」
「人間にも分類があれば、確かにもっと楽かもしれないな」
「じゃあ、やります?性格診断」
「俺は別に要らん」
「じゃあ僕が、先輩になり切ってやってみますね」
「なんだそりゃ…」
「お、出ましたよ。2144F」
「あくまでもお前の中の俺だが」
「無口で冷徹だが、視野が広く頼りになる」
「…どうだ?」
「どうでしょうね。似て非なるものというか、ピンとこないというか」
「…同じ番号の有名な奴はみんな学者だな」
「一般社会では受けが悪いという事ですね」
「否定は出来んな」
「そうでしょうね。だって今から先輩はこの番号に囚われるんですから」
「嫌な言い方だな」
「僕はホッとしてます。先輩に番号が無いのは歯痒いんで」
「俺は今、お前に決められたことが歯痒いよ」
「じゃあ、自分でやりますか?」
「…分かったよ、やる」
「どうぞ」
「……2134K」
「お、案外近いですね」
「多分、お前に言われて思考が寄ったな」
「分かりますよ、結局そういうもんですよね。洗脳というか」
「お前は悪人だと言われてれば悪人になるってやつか」
「そうそうそれですよ、逆はどうなんでしょうか?」
「今からは無理だろうな」
「残念!迷い込んだばっかりに」
「そもそも、こいつだって悪気があって首を突っ込んだ訳じゃない。ただたまたま本性に対して好奇心があっただけだ」
「好奇心は猫をも殺す」
「だが、真実は猫を生き返らせる」
「本当に返すんですか?」
「別に、まだ教えてないからな」




