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忍び寄る影と星の封印

こんばんは!

とうとう墓から始まる英雄譚も5話目、正念場です。

ぜひごゆるりとお楽しみください…

学園へと戻ると、俺とエルナは、カイトやミナに駆け寄られ、無事を喜ばれた。

「悠真! エルナ! 大丈夫だったか!? 裏山でなんかあったって噂で…!」

カイトの心配そうな顔と、ミナのほっとしたような笑顔が、なんだか温かい。

ああ、俺にもちゃんと心配してくれる友達がいるんだな、と改めて実感した。


ーーあの時、影の使徒の攻撃で絶体絶命な俺たちを救ってくれたのは、まさかの謎の転校生リリアだった。


「リリア……? なんでここに……?」

俺が戸惑うと、リリアはいつもの天然な微笑みを浮かべた。

「ふぁ……天城君、大丈夫? 心配で、つい……」

彼女はそう言うと、持っていた小さなダガーを静かに鞘に収める。

銀髪のショートボブがゆらりと揺れ、紫の瞳が俺を覗き込んだ。

「心配でって……どうやってここに来たんだよ? ここ、禁断の墓だぞ?」

俺は訳が分からず尋ねるが、リリアはただ首をかしげるだけだ。

「ふぁ……? なんとなく、天城君がいるような気がして……」

その言葉に、俺は背筋がゾッとした。

この少女は、ただの天然な転校生じゃない。

一体何者なんだ……?

「フン、余の結界をすり抜けるとはな……ただの人間ではないな、あの娘」

アルディオンが不機嫌そうに呟く。

「警戒しておけ、雑魚。

この学園には、お前が想像もせぬような影が潜んでいるかもしれんぞ」

リリアは俺たちに微笑みかけると、来た時と同じように、ふっと霧の中に消えていった。

まるで、最初からそこにいなかったかのように。



寮の自室に戻ると、祭壇からついてきたのか、半透明のアルディオンがふよふよと現れた。

「フン、生きて戻ってきおったか、雑魚。まあ、褒めてやる。ほんの少しだけな」

相変わらずの毒舌だけど、その声にはどこか安堵の色が混じっている気がした。

「少しだけってなんだよ! あんなに大変だったのに!」

俺が文句を言うと、アルディオンはニヤリと笑う。

「世の中、努力が必ず報われるとは限らんのだ、雑魚。お前が生き残れたのは、運が良いだけだろうな」

「うるさいよ、幽霊の分際で! ていうかさ、あれから全然姿見せなかったじゃん! 心配したんだぞ!」

「余はいつでも貴様を見守っておるわ。ただ、貴様が弱すぎるから手出し無用と判断したまでだ」

「それって結局見捨ててたってことじゃん!」

毎度毎度、この幽霊騎士との掛け合いは、疲れるけどなんだかんだで面白い。



翌日からの学園生活は、表面的には平和そのものだった。

エルナは相変わらず、俺のドジっぷりに呆れながらも、何かと助けてくれる。

そのツンデレっぷりも、最近は少しだけ優しさが増した気がする。


授業中、俺がうっかり居眠りをしていると、隣から肘でつっつかれた。

「悠真! あんたって本当に、魔法の授業中に居眠りばかりして! また追試になったらどうするのよ!」

エルナのキツい声に慌てて起き上がると、彼女は呆れたようにため息をついた。

「ほら、ここ。この詠唱、発音を間違えると魔力が暴走するから注意して」

そう言いながら、彼女は俺のノートに、丁寧に要点を書き込んでくれる。

その真剣な横顔を見ていると、ドキッとしてしまう自分がいる。


放課後、剣術の自主練をしていると、カイトがひょいっと俺の隣に並んだ。

「お、やってんじゃん、悠真。相変わらずヘタクソだな!」

「うるさいよ! 俺だって頑張ってんだよ!」

「まぁまぁ、力みすぎだぜ。もっと肩の力抜けって!」

カイトはそう言うと、豪快に木剣を振って見せてくれる。

そのフォームは力強く、俺には到底真似できない。

「ま、なんとかなるっしょ! いつか悠真も、俺みたいに強くなれるって!」

親指を立てて笑うカイトの言葉が、なぜかとても嬉しかった。


図書室で勉強をしていると、ミナがそっと俺の隣に座った。

「あの、悠真くん、これ……よかったら使って」

ミナが差し出したのは、薬草学の授業で使う図鑑だった。

彼女のノートには、綺麗にイラストとメモが書き込まれている。

「わ、ありがとう! めっちゃ助かるよ!」

「いえ、その……少しでも、お役に立てれば……」

ミナは恥ずかしそうに頬を染め、ふわりと微笑んだ。


そんな日常の中で、リリアだけが、どこか浮いているような、そんな印象を受けた。

ある日の放課後、俺が一人で裏山を歩いていると、遠くの木陰にリリアが立っているのが見えた。

彼女は空を見上げ、その表情は、昼間の穏やかなものとは全く違っていた。

どこか悲しそうで、そして、ほんの少しだけ、憎悪のような、強い感情が滲み出ているように見えた。

(……気のせい、だよな?)

俺はそう思い込もうとしたけれど、あの時のリリアの目は、妙に引っかかった。

そんな、穏やかな日常に、不穏な影が忍び寄りつつあった。


学園の図書館で古文書を調べていたエルナが、深刻な顔で俺に駆け寄ってきた。

「悠真、大変なことが分かったの!」

「どうしたんだ、エルナ?」

「この古文書に、千年前に魔王ヴォルガノスが封印された時の記録が残っているんだけど……その封印が、徐々に弱まっている可能性があるって!」

エルナの言葉に、俺は息を呑んだ。

「封印が弱まってるって……まさか、魔王が復活するってことかよ!?」

「可能性は低いって書いてあるけど……でも、気になる記述があるの。魔王の復活を企む者たちが、今も暗躍している可能性があるって……」

その時、背後から低い声が聞こえた。

「フフフ……まさか、このルミナリスに、我らの同志がいるとはな」

振り返ると、そこに立っていたのは、見慣れない男だった。

黒いローブを身につけ、顔には禍々しい紋様が刻まれている。

その目は、底の見えない暗闇のように、冷たく光っていた。

「貴様らが、聖剣の持ち主か……そして、聖騎士の血を引く娘だな?」

男の声は、ねっとりとしていて、聞いているだけで鳥肌が立つ。

「お前……誰だ!?」

俺は聖剣「星降る刃」を構え、エルナはレイピアを前に突き出した。

男は、不気味な笑みを浮かべた。

「わたくしは、魔王ヴォルガノスの復活を願う者……『影の使徒』の一人だ。

貴様らの持つ力、魔王様のために利用させてもらうぞ」

ついに現れた、魔王復活を企む影の使徒。

平穏な学園生活は終わりを告げ、俺たちの新たな戦いが、今、始まろうとしていた――。

ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます!

ついに、物語が本格的に動き出しました!


これから、悠真と仲間たちがどんな困難に立ち向かい、どんな成長を見せてくれるのか、自分自身もとてもワクワクしています。

これからも彼らの物語を、一緒に見守ってもらえたら嬉しいです!

もしよかったら、感想やコメントで、あなたの応援を届けてくださいね!

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