第一の試練:勇気と雑魚の第一歩
星の試練:勇気と雑魚の第一歩
魔法Eランクの落ちこぼれが、墓の奥で星の力を引き出し、謎のモンスターと戦うことに!
そして、学園の寮でエルナに怒られたり、リリアの謎めいた言葉に戸惑ったり…。
続きをどうぞ!
「お前の血が、星を呼ぶ。
信じろ、雑魚でも英雄になれる!」
アルディオンの声が墓の深部に轟き、俺、天城悠真の体がビクッと反応した。
母の形見である星型ペンダントが熱を帯び、握りしめた古びた短剣が青白い光を放ち始めた。
だが、その高揚も一瞬で、僕たちは光に吸い込まれ、見知らぬ通路に立たされていた。
「ここ…どこだ?」
俺は周囲を見回した。
石造りの長い回廊が続き、壁には星型の模様が刻まれ、微かに光っている。
「ようやく気付いたか、雑魚。此処は余が認めた『星の回廊』と呼ぶ場所ぞ!」
アルディオンが金髪を翻し、浮遊しながら傲然と宣言した。
「聖騎士の墓の内なる試練の道! 星の力が雑魚如きに降り立った以上、逃げ道など余の前にはありえんのだ。覚悟せい、雑魚!」
「逃げ道ないって…! 俺、魔法Eランクの落ちこぼれなのに!」
俺は抗議したが、アルディオンは鼻で笑い、隣のエルナが「悠真、ビビりすぎ! しっかりして!」と鋭く叱った。
彼女の赤いリボンが揺れ、剣を握る手に力が入る。
回廊を進むと、突如暗闇が広がり、冷たい霧が足元を這った。
アルディオンが嘲るように口を開いた。
「ふん、此処が試練の場の一つ、影の間だ。 第一の試練、勇気の試練の舞台だ、雑魚。
震え上がる貴様が勇気を証明できぬなら、余の足元にも及ばぬ虫けら以下ぞ!」
壁から無数の赤い目が光り、異様な気配が迫った。
現れたのは10匹以上のモンスター――狼型の幻影だが、通常の獣とは異なる異形だった。
体は黒い霧でできた不定形の輪郭を持ち、背中から無数の触手のような光の糸が蠢き、牙はガラスのように透明で、星の欠片が内側で脈動している。
爪は鋭く、地面を削るたびに不協和音のような金属音が響き、唸り声は低く、遠くの雷鳴が反響するような耳障りな音を立てた。
「うわっ…! 死ぬ! エルナ、帰ろうよ!」
僕は震えながら後ずさった。
こんな化け物に勝てるわけがない!
「ハハッ! ビビるな、雑魚!
ルミナスシャドウウルフの魔法攻撃は激しいからな。
この中では結界で魔法は封じてあるぞ
余は優しいだろう?」
魔法が封じられた結界の中…ということは俺たちも剣技に頼るしかない状況だ。
「くそ…あいつら多すぎる!」
さすがのエルナも、こんなに囲まれてちゃムリだろ…俺は足手まといにしかならないし。
「逃げてもいいぜ、雑魚とエース。生き残れるかは知らんがな!」
逃げ道はないとか言ったくせに、アルディオンが毒舌を浴びせてくる。
幽霊なのにその傲慢さが容赦ない。
恐怖でガクガク震える手がペンダントを握りしめた瞬間、頭に聖ルミナリス魔法学園の寮生活の記憶がフラッシュバックした。
回想:学園の寮・共用ラウンジ
寮の共用ラウンジは、夕食後の喧騒が落ち着いた頃だった。
木製のテーブルには魔法の教科書や剣術の指南書が散らばり、僕はソファにぐったり座って薬草学の補習課題を眺めていた。
「はぁ…俺、なんでこんな学園に来ちゃったんだろ…」
母の死後、父との気まずい生活を避け寮暮らしを選んだけど、内向的な性格で馴染めず、一人だった。
ドスドスと足音が近づき、魔法杖を手に持ったエルナが現れた。
「悠真! あんた、課題まだ終わってないの? ほんと使えないわね!」
「エルナがいつも完璧すぎるだけだろ! 俺みたいな落ちこぼれにはキツイんだよ!
…聖騎士さまには分からないだろーけど…」
俺はムッとして言い返す。
エルナは目を細め呟いた。
「完璧? …ふん、聖騎士の血統なんて、ただの重荷よ」
「え、それどういう…?」と聞き返すと、
「なんでもない! ほら、課題手伝うから! もー放っとけないんだから!」
とノートを奪い、隣に座った。
強引だけど、気遣いを感じる態度だった。
二人が課題を進めていると、ラウンジの隅で本を読んでいた転校生、リリア・クロウが顔を上げた。
黒髪に紫の瞳、ミステリアスな美少女だ。
彼女は近づき、僕のノートを覗き込む。
「天城君、薬草学、苦手? 」
「うん…苦手って分かっちゃう?」
「ふふ。…そのペンダント、素敵ね。特別なものなの?」
声は優しいが、探るような響きがあって、僕は戸惑った。
「え、ただの母の形見だけど…」
「ふふ。…無理はしない方がいいよ?」
リリアは微笑んで意味深に去っていった。
エルナがリリアの後ろ姿を睨む。
「あの子、なんか変よ。悠真、近づかないでよね」
「え、でも親切じゃん?」と返すと、「ふん、バカ! あんた、ほんと鈍いんだから!」と頬を膨らませた。
第一の試練:続き
ルミナスシャドウウルフが一斉に襲いかかってきて現実に引き戻された。
エルナが剣技で牽制するが、数が多すぎる。
正面の敵を威圧しているが、横の敵に噛みつかれそうになって、エルナが小さく悲鳴を上げた!
「悠真! 動け! 私がピンチなの、わからない!?」
エルナの怒鳴り声で我に返る。
「エルナにカッコ悪いとこ見せたくない!
俺、雑魚でも…やる!」
エルナの背を守るように立ち、目の前のモンスターに向かって剣を構えた…つもりだった。
剣はフラフラで、棒を持っただけみたいだ。
アルディオンに笑われる。
「なんだそれは!剣術と呼ぶには哀れすぎる田舎の棒踊りぞ! 雑魚」
「悠真、ヘタクソだけど…悪くないわよ!」
言ってる間にも触手が俺の足元に絡みつき、転びそうになった。
瞬間、エルナが素早く剣を振り下ろして光の糸を切り裂いた。
「動けって言ってるでしょ!」
彼女の声に焦りが混じる中、俺は慌てて体をよじり短剣を振り回した。
刃が透明な牙に当たってキラリと光り、なんとか一匹の頭を掠めた。
黒い霧が散り、星の粒子が宙を舞うように消え去る。
だが次の瞬間、別のやつの爪が地面を削り、金属音と共に僕のすぐ横を掠めた。
心臓が縮こまり、足が竦む。
「左! 気をつけて!」
エルナは剣で触手を弾き飛ばす。
彼女の動きは流れるようで、赤いリボンが戦いのリズムに合わせて揺れる。
俺もなんとか短剣を構え直し、触手が再び伸びてくるのをなんとか切り払った。
息が上がるけど、エルナの背中が近くにある安心感で…なんとか立ち続けることができた…。
僕が最後の一匹の触手を斬ると、黒い霧が星の粒子となって消滅した。
「…少しだけ見直したわ。少しね」
とエルナが頬を赤らめる。
「え、マジ!? やった!」
僕はニヤけた。
「浮かれるな、雑魚! 影の間はまだ終わりじゃないぞ!」
とアルディオンに一喝される。
その時、床に青い宝石「星の雫」が現れ、短剣に吸収された。
刃に星の模様が浮かび、軽さが増す。
僕はリリアの言葉を思い出した。
「あの転校生、ペンダントのこと知ってるっぽい…?」
呟くと、エルナに腕を引っ張られた。
「余計なこと考えないで! 行くわよ!」
影の間の奥に、星型の門が浮かび上がる。
試練の第一段階、勇気の試練はとりあえず終わったようだ。
アルディオンが笑う。
「次はもっとキツイぜ、雑魚」
「悠真、ちゃんと付いてきてよね!」
とエルナが睨む。
リリアの謎めいた言葉が頭を離れず、僕の心は不安と期待でざわついた。
雑魚の僕に、この試練を乗り越える勇気があるのか?
わからない。
でも、エルナの声とペンダントの温もりが、なんとか前に進む力をくれた。
ここまで読んで頂きありがとうございますれ
初投稿からまだ日が浅い自分ですが、反応を頂けて嬉しくて、調子に乗って続きを書いてみました!
正直、悠真に英雄の器があるのかわかりません。
でも、アルディオンの毒舌とエルナのツンデレに引っ張られ、なんとか一歩を踏み出します。
つたないかもしれませんが、読んで応援していただければ、雑魚も頑張れる気がします!
次回は(計画通りいけば…)試練の続きとアルディオンの過去話を書ければと思っています。
感想やブックマーク、待ってますので、よろしくお願いします!