最後の道
結婚式、ここまでくるのにとても時間がかかったような気がする。
二十数年育ててきた娘、それの後姿はとてもきれいだった。
涙で世界がゆがんでいくが、それもここまでようやったと思う気持ちが勝る。
赤じゅうたんの上を一歩、一歩と歩いていく。
彼氏あらため娘の夫となる人のところへと連れていく。
父親として、娘にしてあげれる最後のこと。
それも、短い、たった数歩の道のりだった。
しかし、娘が生まれた時から夢に見ていた数歩だ。
これが最後の道。
「……行ってくるね」
真正面を見ながら、娘が言う。
「ああ、行ってらっしゃい」
できるだけ静かに、娘に言う。
そして組んでいた腕がほどかれた。