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『口笛』  作者: kachan
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#12 言葉を紡ぐ

 僕は、出会ってから僅か一年で転校していってしまった真夏と、文通を始めた。


 そして、真夏から、何故私のことか好きなのか、どこが好きなのかを聞かれた僕は、どう返答すべきか、悩んでいた。


 僕は恐らく、真夏が転校して来て、初めて僕たちの前に現れた時から、好意を抱いていたのは間違いが無かったのだが、そう言う気持ちを、どう言葉で伝えれば良いのか良く判らなかったのだ。


 それでも、僕は一生懸命、言葉を探し、選んで、伝えようとした。



『真夏へ



手紙、有り難う。


返事が来て、とてもうれしかった。


先週、野球大会の一回戦があったんだ。


9対1で勝利。


真夏が、そっちで応援してくれたおかげだな。


そっちは、どう?


そういや、前に喘息って聞いたけど、最近は、どう?


真夏の好きなところについてどう答えようか、ずっと考えてたよ。


変な答えだったらごめんな。


おれは、真夏のどこが好きかって実は、今まであまり考えたことが無かったんだ。


今、真夏のどんな顔が浮かぶかと言うと、まず初めに、転校してきて、あいさつした時の顔。


そして、テストでおれに負けて悔しがっている時の顔。


キックベースで活躍して喜ぶ顔。


みんなで海を見ているときに、オレンジ色の夕日が反射している顔。


おれは、そんな真夏のいろんな顔を見て、気が付いたら好きになってたんだよ。


こんな答えじゃ、おかしいか?


どこが好きかうまく答えられなくて、ごめんな。


でも、真夏のこと大好きだよ。


じゃ、返事を待ってるから。


ばいびー。



わたなべより』 



 僕達は、そうして、ゆっくり流れる時間に抱かれながら、手紙のやりとりを続けた。


 基本的には、日常の出来事についての報告が中心だったが、時折、自分達の気持ちも忘れずに確認しあった。


 僕達は、恐らく、小学生の男女が面と向かってなら、到底話が出来ないようなこと、自分の夢や希望について、一生懸命考え、語り合い、意見し合った。


 僕は、この時、気持ちを文章にする事、言葉にする事の大切さ、力を知らず知らずのうちに学んでいたように思う。そして、僕たちを繋ぐ大切な細い糸が切れないよう、僕達は、お互い必死に、言葉を紡いでいったんだ。



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