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5話

 始業式が終わった。先生に呼び出された進をさっさと見捨てて先にドンキに向かう。


 結局、ひまりちゃんたちとはあれから会えていないし、最後色々とゴタゴタしたせいで連絡先も交換し忘れてしまっていた。

 隣の区だし会おうと思えばすぐに会えるんだろうけど、なんだかモヤモヤして落ち着かない日々だ。


 少しも暖かくならない天気に文句を言いながら急いでドンキの中へ滑り込む。一気に変わった温度にブルっと震えながらも、もっと温かい方に行くべく奥に向かう。

 すると、女の子の声が聞こえてきた。


「ほら、換金行くよ。今度の土曜、このお金で食べ放題でも行こか」

「え! 行く! あ、でも……10万当てれたら……もっと……たくさん……」

「あーもー考えるの辞めえ!」


 どこか聞き覚えのある声に、もしやと角を曲がると見覚えのある赤いコートが現れた。やっぱりひまりちゃんと双葉ちゃんだ。


「ひまりちゃん、双葉ちゃん、久しぶり」

「わ! 結斗くん」

「おひさ〜。そっちも換金? あ、今のひまりは絶賛ネガティブモードだから気にしないで」


 絶賛ネガティブモード? まだ落ち込んでるのかな。そろそろ元気になってもいい頃だと思うんだけど。


「う、今までの自分が恥ずかしいよ。所詮井の中の蛙。こんな寒い季節じゃ、蛙は井戸の中でさえ飛べもしないの……」

「ね、なんか勝手にヘンコでくの」

「これは重症だね……」


 あまりのネガティブさにどう励ましたらいいか迷っていると換金所についてしまった。双葉ちゃんがなかなか行こうとしないひまりちゃんから宝くじを取り上げてさっさと換金しにいく。


「すいません、この5枚、換金したいです〜」

「はい。確認いたしますね。5等5枚、計5万円です」

「ありがとぉございます」

「あれ?」

「ん? なんですかぁ?」

「あの、もしかしたら」「あー! 丹羽ちゃんじゃーん!!」


 ひまりちゃんと一緒に換金所のそばで待っていると、進がやっとやってきた。

 久しぶりに会えて嬉しいのか弾けんばかりの笑顔だ。


「そっちも換金? よく会うね〜」

「う、うん。そうだね」


 ひまりちゃんのネガティブモードを説明しようとしたその時、突然双葉ちゃんの大声が響いた。


「ちょっとひまり!! あ、そこの2人もこっち来て!!」

「「「え?」」」


「おめでとうございます!! 4等と5等の重複当選です!!」


「「「え……!?」」」



「4等と5等、ってことは…」

「合わせて6万円、他の5等の分全て合わせると、合計10万円の当選となります!」

「えー!!」


 予想打にしなかった一言にみんな揃って言葉をなくす。進にいたっては双葉ちゃんの存在にも今気づいたらしく双葉ちゃんと宝くじを交互に指しながら固まっている。


 あれ? ということはあの勝負、引き分けだったのでは? 重複当選って、まじか。しかもぴったり10万円。あまりに驚きすぎて開いた口が塞がらない。


 先に驚きから脱却したひまりちゃんが、ぐるんっと振り向いた。


「ていうかむしろ、全部当てながら重複当選っていうレアを引き当てつつぴったり10万円な私の方が真のラッキーガールなのでは!?」


 そう一息で言い切り、言いながら本人も半信半疑な様子。


「ひまり〜! 凄いよほんとに!」

「なんかよく分からんけどすげー!」

「これは、確かに。金額は同じでもラッキーさが雲泥の差だ。俺の負けだよ」


 言いながら、胸の奥からじわじわと言いようのない何かが沸き起こってくる。

 これが悔しさ? それとも特大の悲しみ? 今、自分が何を感じているのかが全くわからない。



 ずっと憧れていた。勝ったり負けたり、お互い全力でぶつかって。ババ抜きやUNOでいい、そんな些細な勝負ごとでも、全力で、思いっきり、ハラハラして負けるかもって緊張して。そんなくだらないことをしてみたかった。


 彼女は、ひまりちゃんはどうなんだろう。気にしてないのかな。勝負を吹っ掛けてきたくらいだし、ラッキーなことを楽しんでいるのかも。

 どんな考えでもいい。そんなことは関係ない。たぶんもう、全力でハラハラドキドキを楽しめる勝負ができるのはお互いしかいない。そのことを改めて感じたら、なんだか胸がぎゅっとなって、指先が震える。


 ひまりちゃんの顔をチラとうかがう。彼女は気づいているだろうか。この、運命の出会いに。



 しばらく自分の勝ちに喜ぶと、ふと真顔になって。口元に指を当てながら何かを真剣に考えている。

 だんだん頬が紅潮して、瞳がキラキラと輝いて。


 あの瞳を、また見つけた。



「あのさ、ひまりちゃん。……また、こうやって勝負しない?」


 ぎゅっと目をつぶる。頷いてくれるだろうか。気づいているのだろうか。俺を、嫌っていないだろうか。


「その話、乗った!!」


 薄目を開けると、満面の笑みで手を差し出すひまりちゃんがいた。

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