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3話

 私はラッキーガールだ。それは物心ついた時からなんとなく理解していた。

 今までで一番のラッキーエピソードは小学生の時。両親とケーキ屋さんに行ったらちょうど目当てのものが売れてしまって、自分の準備が遅かったせいだとベソをかいていた私をお店の男の子が慰めてくれた。実はもう一つだけあるんだ、と優しく言われて顔を上げると、本当にケーキが出てきて無事に買うことができた。

 見えないところのラスイチまで手に入れてしまうなんて、さすが世界一のラッキーガール!


 最初は私ばっかりいいのかなー、とかちょっと思ったけど、どうしようもない事だし最近は割り切っている。いや、むしろ優越感に浸っている。


 思うに、私以上のラッキーガールはいないのではないだろうか。私は毎日、何かしらラッキーなことが起こる。しかし世の自称ラッキーさんは起こるラッキーが月1レベルなのだ。

 ヌルい。ヌルすぎる。せめて週1レベルにならないとラッキーガールを名乗る資格は無いのでは?


 しかし毎日ラッキーなことが続くと、飽きるというか新鮮味がないというか……なんというかあまり楽しくない。なので心機一転! 私のこのラッキーを、世のため人のために使おうと思ったわけです。

 例えば宝くじを当てて募金に使うとか。ちょっとは使っちゃうかもだけど。


 そこで、結斗くんと出会った。始めはラッキーを名乗る不届き者かと思って勝負を持ちかけたけど、話してるうちになんだか違うような気もしてきて。まあコテンパンにして優越感に浸りたかったから勝負は続行したんだけど。




 そして今日は1月1日、元旦。勝負の日だ。

 どっちが真のラッキーかを決める戦い-宝くじ10万円勝負-と名付けた勝負は、今日の午後、双葉ちゃんとドンキまで出陣してくる予定だ。


 でもまずはお参りだ。双葉ちゃんのお家の近くにはちょっと大きい神社がある。年中何かしらの花が咲いていてとっても綺麗なので、2人で遊ぶ時は集合場所として活用中。今日は日々のラッキーを感謝するつもりだ。


 ただ、問題がある。約束の5分前に起きちゃったのだ。 しかし! 私はラッキーガールなので、間に合っちゃうのである。




「双葉ちゃん、おはよ!」

「おはよぉ」

「あのねあのね、今日は流石に間に合わないかと思ったんだけど、信号がずっと青でスイスイ〜って通れちゃって!」


 まだ眠そうに目をこする双葉ちゃんに今日の私のラッキーをアピール。


「良かったやん。早くお参りしよ。寒いわぁ」

「だね〜」


 普段は人気のない神社も、今日ばかりは人気者だ。でも今はちょうど人の少ない時間らしくそこまで混んではない。


「今年は何お願いするん?私はタナカの安産祈願」

「お! もうすぐか。私は今日の戦いに勝つことかな」

「あのねぇ、そんなんもう昨日のうちに結果は確定してるんよ。無難に受験合格とかにしとき」

「それはそうだけど! 今回の勝負は私のアイデンティティをかけた重要な戦いで……」

「あーわかったわかった。ま、がんばり」


 双葉ちゃんが私に冷たい……心なしか繋いだ手も冷たい……! ポッケに入れとこ。



 お参りを終えて、鳥居をくぐる。端に咲いてい

た花の名前を考えていた時、不意に声をかけられた。


「あれ? 丹羽ちゃんと猫田ちゃん?」

「あ! 進くんだ!」

「能瀬くん。おはよぉございます〜」

「どうも能瀬進です。おはよ。俺らやっぱ家近いんだね。あ、結斗もあっちに」


 なんとなんと、我が宿敵、角谷結斗くんがこの神社に居るっぽい。これはまさかの盤外戦術? いやいやまさかね。

 知らないかもしれませんが、実は当選番号の発表はもう昨日されてるんですよ〜だ。今から何したって無駄さ。神に願ってもね!


「進。あ、2人も来てたんだ。あけましておめでとう」

「あ! あけおめ言い忘れてた! あけおめ!」


 現れた結斗くんにあけおめを返していると、双葉ちゃんに腕を引かれたので後ろをむく。


「あのさぁ、このカッコ恥ずいんだけど。このまま対決やるつもりなら私先帰ってていい?」

「え!」


 たしかに今日はささっと帰る予定だったからコートの下は寝巻きだ。たぶん双葉ちゃんも。

 ここら辺は同級生が少ないので油断していた。


「でも、元はドンキ集合の予定だよ。今は解散でいいんじゃない?」

「そうしてもいいけど、何時にするんよ、結局。何も言わずに帰っちゃったじゃん」

「たしかに! 今会えなかったらお互いすれ違ってたかも」


 さすが私、ラッキー! でも連絡先を交換しようにも朝は急いでてスマホを家に置いてきてしまった。今のままはさすがに恥ずかしさがある。


「あの〜。2人とも話してるとこ悪いんだけど、俺らお参りだけ先行ってくるわ。実はまだなんだよね」

「俺も進も、寝坊しちゃって。じゃあ」


 止めるまもなく、2人は参拝の列に飲み込まれていった。


「これは……待つ一択……?」

「ん〜。私ちゃちゃっと着替えて来るわ。こうなったらさっさと勝負つけて、いい気分のままお雑煮食べよ」

「双葉ちゃん……! やっぱり私の勝利を信じてくれてるんだ!」

「いや別に、どっちに転んでも私としちゃおもろいから」

「またまた〜」


 双葉ちゃん家は神社のある通りを真っ直ぐ、1分くらいでつく。2人がお参りを終わらせる前に身だしなみを整えて帰ってくることも可能だ。

 ツンデレな双葉ちゃんをからかいながら、急ぎ足で神社を出た。




 今までにないほど高速で着替えると、髪を整えながら双葉ちゃん家を出る。駆け足でどっちが先に着くか競ってたら、ギリギリ私が勝った。

 あ、あの紺のコートは結斗くん。彼は結構大人っぽい格好をする。さあ、今度は落ち着いて双葉ちゃん家へ。


 家の人はまだ寝ていて、代わりにペットのタナカが出迎えてくれた。妊娠中で気がたっていたのかすぐにどこかへ行ってしまったけど。


「それでは、結果発表をします!」

「お〜」


 結斗くんは若干居づらそうにしながら、進くんはノリノリで結果発表が始まる。

 当選番号を確認するため、一斉に画面をのぞきこんだ。


「ん〜、下一桁2はないなぁ」


 いち早く数字を見た双葉ちゃんが机の上にある宝くじ10枚全ての番号を確認して、残念そうにつぶやく。


「6等は3000円だって。下二桁76。結斗、どう?」

「無いな。ひまりちゃんは?」

「ない!」


 私も結斗くんも無しが続いて少し悲しい。いやでも、私は当たるはず! ドキドキしながら数字を確認する。


「次は下三桁351。あ、ある!」


 当たった! 分かってたことだけどやっぱり当たると嬉しい。結斗くんに自慢しようとくじを取ったら、その下のくじ番号が見えた。


「ねぇ、これも351だよ! 2枚当たってる」

「凄いじゃんひまり」


 びっくりして双葉ちゃんに確認してもらう。一気に当たることってあるんだ。


「角谷くんは無いん?」


 調子が出てきた私と違って、まだ結斗くんは当たっていないみたい。


「残念ながら。まあ、まだまだあるから」

「うんうん。うちの結斗は負けんぞ〜」


 進くんが結斗くんの肩を叩きながら自慢げに言ってきた。あちらも相当な自信があるようだ。

 いやでも、2万円と0円。なかなかのラッキーガールぶりを見せつけられている気がする。


「次は、下三桁989。俺は……ないな」


 結斗くんはまた無し。なんだか淡々としててあんまりガッカリしてない感じだなぁ。進くんがその分まで焦ってるけど。

 それはそうと、またまた当たっていたので報告しておく。


「私また当たりだよ〜」

「に、丹羽ちゃんすげー」


 あまりの驚きに口が塞がらないみたい。よしよし、こういうのが見たいのだ。進くんはとってもいい反応をくれる。


「これでひまりが3万円だから、角谷くんが勝つには4等当てるしかないんじゃない?3等だと10万越ちゃうし」

「5万円か。どうだろう」


 今のところ結斗くんはラッキー度ゼロだ。大丈夫かな? もしかしてショックすぎて逆に反応できないのかも。

 あと残りは5等の最後の1つと4等だけ。次のやつくらいは当たってるといいんだけど。


「次は〜、下三桁564! ……え、残りの2枚当たってる」

「え……!? じゃあひまり全部当たったの!?  やば」

「まじか」

「丹羽ちゃん、なんか逆にこえーよ……」


 さすがにこれはびっくり。やっぱり神様にお願いしたのはやりすぎだったのだろうか。ラッキーの大渋滞だ。

 あ、でも結斗くんがやっと驚いてくれて嬉しいかも。ふふん、凄いでしょ。


「お、おちつけ結斗。まだ4等がある!」

「4等は下四桁4351。……角谷くん、ある?」


 当たるのかな、当たらないのかな。これで当たれば同点、勝負は引き分けか。

 それも楽しいけど、やっぱり勝ちたいな。



「……………ない」


 進くんが何も言わずに番号を確認し出した。何度確認しても結斗くんの宝くじに同じ数字は無い。

 双葉ちゃんは気まずそうに髪を触りながら、そっぽを向いている。


 そして、私は。


 満面の笑みで結斗くんを煽っていた。おっといけない、悲しそうな顔しないと。でも嬉しい気持ちが抑えられない。


 やっぱり、世界一のラッキーガールは私だったのだ!!


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