魔法都市メフェリト イチ
夢を見る。
家から出ていく父の後姿を女の子が心配そうに見つめる場面を。
夢を見る。
亡き母の遺体の目の前で、父が泣き腫らす顔を。
夢を見る。
父と喧嘩する女の子を。
夢を見る。
夢を見る。
夢を―――――――
※ ※ ※
魔法都市『メフェリト』。
そこは魔法技術を礎に発展した街。
街の面積は帝都より少し小さい。しかし、人口は帝都に迫るほどであり、帝国に住む人間が一度は聞いたことのあるほど有名な街だ。
帝都は『魔法』を探求する側面が強い。一方で、メフェリトは『魔道具』に重点を置いて研究・開発する。―――ここ数年では、魔道具よりも高度の技術、『魔工具』のおかげでさらなる発展を遂げている。
「………」
「………」
街の景観は、帝国のどの街とも異なる。
街の色は一言で表すなら『白』。―――街を囲む魔獣除けの壁も、乱立する空を衝くような建物も、すべてが白。
基本的に建物は二十メートルはある魔獣除けの壁よりも尚、高い。―――その景色を現代人が見れば、『ビル群に囲まれた街』とでも形容するのだろう。
とはいえ、そんな都会な街にも、比較的低い建物もあり、それらの建物の間は必然的に狭くなりがちである。
いわゆる路地裏。
髭面の二人の男はそんな路地裏に入り、静かに呟いた。
「「解除」」
魔法の解除ワードを。
現れるのは、短パンにタンクトップに白のローブを着るエルフ―――ハーディと、ジャケットの裾を正すヨミヤが現れた。
「いいの? アタシはともかく、ヨミヤ君は変装したままの方が………」
「いいですよ。―――この先は魔力を浪費したくありません」
ヨミヤはジャケットについているフードを被り、視線を落とす。
現在、ヨミヤはウラルーギにもらった変装用の変色スプレーを持っていない。
というのも、『ランスリーニ』の宿にほとんどの荷物を置いてきたヨミヤ。ハーディがヨミヤを助けに来る際にカバンを持ってきてくれたものの、変色スプレーや片眼鏡などの変装道具を置いてきてしまったのだ。
故に、ヨミヤは街に入る際に教えてもらった変装の魔法をぶっつけ本番で行使し、『メフェリト』に入ったのだ。
「………それにしても、よく指名手配犯と一緒に行こうと思いましたね」
ちなみに、『メフェリト』に向かっている道中、ハーディにはヨミヤが指名手配犯だとバレている。
彼女曰く、変装していることは最初から知っていたそうだ。
「まぁ、これでも無駄に生きてるエルフだからねぇ。―――ヨミヤ君がどんな人かはわかってるつもりよ」
ハーディはヨミヤの事情を聞きはしない。―――彼女の判断基準は、短い旅の中で感じたヨミヤの人柄。
「それに、今はシュケリちゃんとヴェールちゃんの救出が目的。―――ヨミヤ君のことはとりあえず後回しね」
「………つまんないことです。聞く価値もありません」
ハーディの言葉に、ヨミヤは皮肉そうに口角を上げて―――そして歩き出した。
閲覧いただきありがとうございます。
SAOがクリアされた日に投稿したかったのに…
疲れて書ききれなかったっ…