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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
無窮の記憶編
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旅路:旅の隙間 ヨン

「し、試着室の奥に、地下に通じる階段がある………それと………カウンターの奥の部屋からも地下に………」


「バカだねアンタら。二人を攫って………オレのことはどうするつもりだったの」


「ば、バカみてぇなガキだったから………適当に騙せると思って………」


「それでオレに脅されてちゃ世話ないね」


 ずるずると、男の胸倉をつかみながら店内を引きずる。―――そして、男の言う通り、試着室の前で立ち止まる。


「………」


 当然ながら、カギは開いていないため、ヨミヤは仕方なくドアを蹴破ろうとする。


「な、なんだテメェ―――」


 が―――


「ッ!?」


 引きずりまわしていた男が突如として、飛んできたナイフに()()()()


 その光景を振り向きざまに確認したヨミヤは、探知(ディスカヴァー)を発動。―――振り向いた自分の背後を取る()()()に風をぶつける。


 簡単に人間を飛ばす風に見舞われた襲撃者は、盛大にその奥にある試着室に突っ込む。


「何人いるんだよ………」


 男から手を放したヨミヤは視線を襲撃者に向け―――ため息をついた。


「またお前らか………」


 そこには仮面の()()が控えていた。


 シュケリを連れ去ろうとする暗殺者。―――どうやってシュケリの位置をとらえているのか気になるヨミヤだったが、今だけはその疑問は頭の片隅に追いやる。


「来なよ。―――まとめて相手してやる」


 暗殺者はヨミヤの挑発に―――静かに応えた。


「数は………十ぐらいかな」


 地下牢で戦った暗殺者達もいるのだろう。ワイヤーで動きを止められ、全員で一斉に飛び掛かられる。


 その中に、探知に反応があるのに、視認できない奴も混じっている。


「ぬるいぬるい」


 暗殺者はすべからく『領域』の内側。


 なら、ヨミヤのやることは簡単だ。


「沈んでろ」


 暗殺者の付近に火球を浮かべ―――熱線を打ち出す。


「「「!!??」」」


 急所は狙わない。


 しかし、そのすべてが的確に()を狙ったものだった。


 下から、上から、熱線が行き交う。


「ついでに寝てろォ!」


 そして、続けざまに風の弾丸を発射。すべての襲撃者が風の弾丸によりとてつもない衝撃を受けながら壁際に叩きつけられる。


「チッ………化け物が………」


「………一人仕留め損ねた?」


 全滅したかに見えた暗殺者達は、けれど、ワイヤーを操る暗殺者―――フィーガンだけが倒れることはなかった。


「フン………風の魔法は一度見てる………」


 よく見れば、フィーガンは風を両腕でガードしていた。―――彼は、撃ち抜かれた足を、自身の『氷を生み出す』能力(ギフト)で止血する。


「オレはもう、後には退けないんだよ………ッ!」


 焦りを感じさせるフィーガンは次の瞬間、ダンッと止血した足で地面を踏みつけた。


 その瞬間、地面から『氷の棘』が一気に飛び出し、一直線にヨミヤに向かっていく。―――フィーガンも、その棘の上に乗っかり、虎視眈々とヨミヤに追撃する機会をうかがっている。


「そうだな………」


 そんなフィーガンを見て、ヨミヤは少しだけ悪い顔を浮かべる。


「死ねェェ!!」


 四つの氷の棘が迫り―――続いて、五つ目の棘に乗ったフィーガンが肉薄する。


「オラァッ!!」


 ヨミヤはまず、四つの棘を義手の裏拳で一気に破壊する。


 続いて迫るフィーガンに、身体を回し、再び義手を用いて彼の顔面を掴み―――跳躍。


「グァァァァァァァァァァ!!」


「時間がないんだ―――このままいくぞ」


 天井付近まで跳んだヨミヤは、まるでモノのようにフィーガンを振りかぶりながら、風の力で自身を猛スピードで床へ()()()()()


爆発(イクス)!!」


 義手の仕込まれた爆発の魔法を発動。


 床への接地と同時にフィーガンを地面に叩きつける。


「ガッッッ!!」


「砕けろォ!!」


 刹那。


 建物床が陥没。―――地下空間の天井が一部崩れ、ヨミヤは暗殺者と共に地下へ落下した。



 ※ ※ ※



「一体何が………」


 白い肌を、打撲と擦過傷で汚すシュケリは、突然、目の前の天井が崩れ唖然とする。


「おい、てめら大丈夫か!?」


 地下室は長方形の形をしている。崩れたのは、シュケリとは反対側の、地下室の入り口の天井だ。


 無論、その付近に居た誘拐犯たちは崩れる瓦礫の下敷きになっている。―――無事なのはシュケリとヴェールを除いた三~四人といったところだろうか。


「思ったより勢いが強かったな………死んでないかな………――――――大丈夫そうだね」


 巻きあがる砂塵の中から現れるのは、白髪に片眼鏡(モノクル)を掛けた少年―――ヨミヤだった。


「あぁ………ヨミヤ様………」


 少年の姿を見つけたシュケリは、口の端から血を流しながら笑みを作った。


「ヨミヤぁ………」


 ヴェールも、その幼い瞳に涙を浮かべ、少年の名を呼ぶ。


「シュケリさん………ヴェール………」


 ヨミヤも、二人の姿を確認し、少しだけ安堵したあと―――シュケリの傷を見て、その眼を細めた。


「お前らか………」


 少年が見つめるは、禿頭のデブの拳についた血。


「クソガキが………舐めたマネしやがって………」


 一方、禿頭のデブも、額に青筋を浮かべている。


「お前ら………あのガキを殺せ」


 ハゲ頭に血管を浮かべる男の周りに、残った誘拐犯が集まる。―――その中にはシュケリとヴェールを試着室に誘った女もいる。


「…………………」


 ひたすら冷めた目で誘拐犯を見つめるヨミヤは、次の瞬間―――消えた。


「なッ―――」


 驚く禿頭のデブを尻目に、ヨミヤはシュケリとヴェールを試着室に誘った女の顔面を掴む。


「まずお前」


 そして、壁が砕けるほどの膂力で女を壁に叩きつける。―――それだけで女は意識を手放す。


「くッ………強いのかよこのガキ………」


 顔を引きつらせる禿頭の男。


 その間にもヨミヤは動く。


「次」


 消えるように見えるほどの速さで動く少年は、続いて、足を振り上げ近くの男に肉薄。踵落としで下っ端の意識を刈り取る。


「次」


 そして、別の男へターゲットを切り替えると、そいつへ踏み込みながらアッパーをぶち当てる。


「ぶっ飛べ」


 浮いた男の腹部へ、今度は渾身の拳を叩きこみ―――ハゲ男の方へ吹き飛ばす。


「うおぁッ!!」


 ハゲはこれを間一髪で回避。―――しかし、その隙にヨミヤは男の懐へもぐりこむ。


「さて」


 少年は、無造作に男の胸倉をつかむ。


「お前が最後だ」


「く、クソォ!! 放せェ!!」


 ここまでの蹂躙劇を見ていたはずの男は、それでも拳を繰り出す。


「………」


 それはヨミヤの顔面につき刺さり――――――少年は一つも動じなかった。


「う、ウソだろ………お、俺ぁ、『身体能力補正』があるんだぞ………ば、ばけもの………」


「………こんな拳でシュケリさんを殴ったんだなお前」


 口の端から血を流すヨミヤ。


 そんな少年の顔は―――憤怒で彩られていた。


「死んでも文句言うなよ」


 ヨミヤは、義手を振り上げる。


「ちょっ―――まっ―――」


 そして、無慈悲に魔法名を発音した。


爆発(イクス)


 勇者すら昏倒させた一撃が、禿頭の男の顔面に突き刺さった。

閲覧いただきありがとうございます。

私の好きな実況者様が、モンハンの公式に認められました。

おめでとうございます。

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