表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
無窮の記憶編
63/268

旅立ち・再会 ゴ

「シュケリさん可愛い!」


「ヴェール様も、似合っておりますよ」


 『ネラガッタ商会』にきて三日後。


 ヨミヤは、商会の入り口にある広間にて集まっていた。


 ちなみに、今までの服では目立つだろうとのことで、三人それぞれウラルーギが新しい服を用意してくれていた。


 ヴェールは、白いシャツに黒の短パンとブーツ。そして、髪をまとめてハンチング帽の中に隠し、瞳の色を変える魔法のかかった伊達メガネをかけていた。


挿絵(By みてみん)


 対して、シュケリは黒いワンピースだ。長袖で、足首まであるスカート丈が特徴的な服である。


 二人とも、元々の顔がいいのも相まって、とても似合っているのだが………そんな感性は今、寝不足で死にかけているヨミヤには皆無であった。


「………」


「………ヨミヤ様、大丈夫でございますか?」


「………す、すごい顔だね………もう少しでアンデッドになりそう」


 シュケリはヨミヤを気遣い、ヴェールは口元を引きつらせながらヨミヤをジッと観察している。


 ちなみに、見張りを始めた翌日、部屋から出てきた二人には、『見張りは要らない』と言われていたのだが、ヨミヤが勝手に見張りをし続けていた。


「おい、ヨミヤ」


 そこへ、呆れた顔のハグラが現れた。


「あ、ハグラさん」


「受け取れ」


 彼は、持っていた濡れタオルをヨミヤへ投げて渡す。ヨミヤはそのタオルを危なげなくキャッチすると、不思議そうな顔でハグラへ視線を送った。


「どうしたんですか?」


「それで顔でも拭いてろってことだよ。………せっかくここまで面倒を見たんだ。乗合商業馬車(キャラバン)に乗り遅れたらブッ飛ばすからな」


「あ、あぁ………ありがとうございます!」


 なんだか、見張りを始めた夜から、ハグラにずっと呆れた目で見られているようなヨミヤだったが、顔を拭くタオルには素直に感謝する。


「一応、お前の装備は俺が見繕ってみたが………動きにくさとかあるか?」


 その質問に、ヨミヤは顔を拭くのを一旦やめて、ハグラへ顔を向ける。


「いえ、まったくないです。鎧なんか、つけたこともないんですけど………全然違和感ないです!」


 ヨミヤの装備―――服装は下が黒のズボン。上が白のシャツに、これまたフード付きの黒いジャケットと、黒多めの服装だった。


 その上から、左肩から胸までを守る肩当てや、金属製の脚鎧を装着している。


「そうか。ならいい」


 それだけ言うと、ハグラはヨミヤの奥の部屋に行こうとして―――


「『フォーラム』に気をつけろ」


 ボソッとそんなことを呟いた。


「!? それは一体―――」


「さぁな。―――だが、想像以上にヤバい奴らだ。これ以上は味方してやれねぇ。………ウラルーギに迷惑がかかる」


 青年はそれだけ言い残し、奥の部屋に消えていった。


「『フォーラム』って………」


「ヨミヤ様。いいところにいらっしゃいました」


 ハグラの言葉について考える暇もなく、今度はウラルーギが現れた。


「頼まれていた宝石類の換金終わりました」


「ああ、ありがとうございます」


 ウラルーギの手には、大量の金貨が入った袋が握られていた。


「そ、そんな高価なモノだったんですか………!?」


「ええ、それはもう。どの宝石も高く………指輪の部分もかなり古い装飾な上に、保存状態も良かったもので、こちらで高値で買い取らせていただきました」


 ちなみに、ヨミヤの売った宝石類というのは、奈落から脱出する際に通った坑道………その出口付近で戦った『血の一本角』が持っていた宝石類だ。


 なんでも、どの宝石にも高度な保存の魔法がかけられていたらしく、帝都での激戦を経てもなお、傷つくことはなかったそうだ。


「今回はしっかり受け取ってくださいますね?」


「え、えぇ………そうですね………ちゃんとした対価だし………先立つものは大事だし………」


「ご安心ください。装備の代金はこちらからすでに受け取ってありますゆえ」


 ヨミヤは若干ドキドキしながら、袋を受け取り、赤いショルダーバッグの中にしまい込む。


「それと、こちらも持って行ってください」


 顔の引きつっているヨミヤに対し、ウラルーギはさらに、バックを渡す。


「こちらはサービスです」


 いつもの有無を言わさぬ顔をしているウラルーギ。―――経験上、断っても押し付けてくることは目に見えていたので、大人しくバックを受け取り、中を確認した。


「変装用に、髪の色を変える術式の刻印されたスプレーと、片眼鏡(モノクル)。―――それと、()()のために持ってこられた魔導書でございます」


 ヨミヤは、スプレーと片眼鏡(モノクル)は、ウラルーギの好意として受け取る意味を理解できた。


 しかし、中に入っていた魔導書は、ヨミヤがお金にしようとウラルーギに渡したものだった。


「コレ………オレ、中身を読めなかったので、売りに出したんですけど………」


 不思議そうな顔のヨミヤ。


 そんな少年に、ウラルーギは顔を近づけ―――シュケリに聞こえない程の声量でヨミヤに告げた。


「最初の晩………暗殺者の襲撃があったそうです」


「!!?」


 この三日間、ずっと見張りをしていた少年に、衝撃が走る。


 しかし、ウラルーギは言葉を続けた。


「ご安心を。ハグラが迅速に処理いたしました――――――どうやら、何か厄介な問題にかかわっているらしいので、魔導書(コレ)はお持ちになった方がよいかと」


「で、でも、コレ………中に書いてある文字が読めなくて………」


「私も、ルーン文字は読めますが………細部まで解読は出来ませんでした。………しかし、それは古い魔法の証。身に付けることが出来れば必ずヨミヤ様の力になります」


 確信めいた声色でそう告げるウラルーギは、その魔導書をヨミヤの手からそっと取り上げると、渡したバッグの中に再びしまう。


「………すいません。何から何まで………そして、迷惑をかけてすいませんでした」


「迷惑だなんてとんでもない。―――共に旅をした仲ではありませんか」


 朗らかに笑うウラルーギ。


 彼は外の様子を窓から伺うと、『さぁ』とヨミヤ達を出入口へと招く。


「名残り惜しくはありますが………そろそろ出発の時間でございます」

閲覧いただきありがとうございます。

いままであんまり言ってなかったのですが、ご意見・ご感想はいつでも受け付けております。

是非、お気軽に感想欄でも、Xでも、好きなところにご感想をお送りください!


追記:

夏野露草さん(https://x.com/Tsuyukusa00)にヴェールを描いて頂きました!

ちゃんと今回の話で着替えた格好をしてるんですよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ヨミヤ君がここにきてパワーアップ出来そうで、その布石となる魔導書の内容が気になるところですね。寝不足でそれどころではないんでしょうが。新たな旅がどうなるのか、とても楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ