出会いと出会いの騒動 ナナ
「意識がない………」
牢を出たヨミヤとシュケリは、すぐさま奴隷の少女の居る牢へ向かう。
牢の扉の蝶番を、熱線で溶かし、中へ侵入。―――そこで、ぐったりと倒れている少女を発見したのだ。
「………大丈夫です。息はあります。―――仮にも魔族です。人間よりも身体は頑丈なハズです」
すぐに容体を確認したシュケリは、とりあえず命に別状がないことをヨミヤに伝える。
それを聞いた少年は、ひとまず安心し―――そして、少女を片手で抱いて、器用に立ち上がった。
「………じゃあ行こう! 何に襲われているかわからないけど………ここまで敵が来たら面倒だ」
「わかりました」
地下牢を脱出した二人が最初に向かったのは『倉庫』。
シュケリ曰く、囚人の荷物はおそらく倉庫にあるだろうとのことだった。
ヨミヤとしては、武装も、服も別に未練はなかったが、イルさんに作ってもらったカバンや、ウラルーギにもらった義手を放置していくことはできなかった。
「そこの突き当りの道を左です! 一番奥の部屋が倉庫になっています!!」
走る走る。
帝宮よりは劣るが、至る所に贅を凝らされた屋敷を走る。
屋敷のあらゆるところで武器と武器をぶつけ合う音や、魔法による衝撃が響いている。そのすべてを無視してヨミヤは奴隷の少女を抱えて走る。
「人間だ! 殺せェ!!」
そこで、廊下の突き当りから角の生えた人間―――魔族が現れた。
「なッ………」
まさかの襲撃者に目を丸くするヨミヤ。
そう、領主の屋敷を襲撃したのは魔族だったのだ。
「おい、同胞を攫う気だッ!! なんとしても殺せェ!!」
「っ………!!」
あらぬ誤解を受けていると理解したヨミヤだったが、向こうが殺す気で向かってくるため、すぐさま対話を諦めて戦闘に入る。
といっても、ヨミヤのやることは簡単だ。
向かってくる魔族は四人。そのすべての側頭部に風弾を生成。
「「「「がッ………」」」」
人間よりも遥かに強いと言われる魔族を一瞬にして制圧してしまった。
これにより、ヨミヤは立ち止まることなく廊下を突破した。
※ ※ ※
「よし、これでオッケー………」
ヨミヤの服や、持ち物、装備一式は、まとめて木箱に収められていた。
最後に義手をつけたヨミヤは、感覚を確かめるように、義手をぐっ、ぱっ、と開く。
「おぉ、その不思議な腕はヨミヤ様のでしたか………」
「………? それがどうかしたの?」
「いえ、先日、その腕をネコババしようとしている騎士様を見かけたので」
「え”………」
まさかの告白に後ずさるヨミヤ。
「あと一日遅ければ、やってきた行商人に売られるところでしたね」
「あんまり聞きたくない報告だったかな?」
屋敷の襲撃者に、こんな形で感謝することになるとは思わなったヨミヤだった。
閲覧ありがとうございます。
さっきほどまでスプラトゥーンをやっていて、慌てて投稿致しました笑




