出会いと出会いの騒動 ゴ
最初に動いたのは、ダーノだった。
牢の扉を破壊しながら、ヨミヤの元へ突撃してくる。
「………」
ヨミヤは、後方のシュケリを見やり、迎撃しようと動こうとするが………
「…………っ?」
まるで人形になってしまったかのように、身体が動かなくなった。
「フィーガン、そのままで頼むぜ!!」
「言うな馬鹿………いいからさっさと終わらせろ!!」
突貫してくるダーノは、おもむろに手を振り上げると―――その指が突如として金属のように変化した。
鉄の爪………鉄爪とでも呼ぶべき必殺の一撃を持って、ヨミヤを終わらせようとするダーノ。
しかし―――
「牢の扉―――壊してくれて感謝するよ」
次の瞬間、ヨミヤは自身の前方に強烈な風を発生させる。―――初級の風魔法『風圧』だ。
本来、牢は魔法の行使を抑制する結界が張ってある。しかし、それは『術式法』―――牢の壁や、鉄格子に小さく書かれた『ルーン語』によって成立していた魔法。
ゆえに、術式を担っていた鉄格子………牢の扉が破壊されたことで、魔法の行使が可能になったことを感覚で理解したヨミヤは、牢の中で風を起こして見せた。
ちなみに、ヨミヤは魔法の知識に関して素人なため、『術式が破壊された』だとか、『ルーン語』だとかは全く知らない。
「動けないけど………コレ―――ワイヤー?」
敵を吹き飛ばせど、動けないヨミヤは、自分の四肢に極細い鉄線が巻かれているのを確認した。
「『糸使い』ねぇ………ロマンだけど………糸をどう動かしているのかいつも気になるんだよなぁ………」
ヨミヤは、独り言を言いながら、熱線でワイヤーを焼き切り、身の自由を確保する。
「おいダーノ、出し惜しみして勝てる相手じゃないぞ」
「………わかってるての。めんどくせぇ」
猛烈な風で、ヨミヤの牢とは反対にある牢屋に激突した暗殺者達は、打ち付けた背中に痛みを感じながら、小声で話しあう。
「めんどくせぇし、疲れるが………いつものやつで殺るぞ」
「任せろ。合わせる」
そうゆうやいなや、仮面達は動き出す。
「ッ!!」
最初に、フィーガンと呼ばれた暗殺者が、自身の能力を発動。
「っと………―――氷の壁?」
ヨミヤの視界をふさぐように、牢屋一杯のつららを生成。
「オラァ!!」
続いて、そのつららを、ダーノが砲声と共に破壊。破片がヨミヤへ殺到するが―――
「………」
強化されたヨミヤの動体視力が、すべての氷の破片を捕捉。寸分の狂いなく熱線が飛来する破片を溶かしつくした。
「………居ない?」
しかし、その間に、巨体のダーノが煙のように消失する。
「―――どこいった」
首を回し、周囲を確認するヨミヤだが、その姿はどこにもない。―――のだが、彼の耳は異音を察知して………
「まだだッ!!」
だが、ここでフィーガンが怯むことなく、今度は先ほどのワイヤーを使って再びヨミヤを拘束しにかかる。
「それは無駄だって………って、なんだこれっ!!」
先ほどと同じように、速攻で熱線を用いてワイヤーを焼き切ろうとするヨミヤだったが―――ワイヤー越しに全身が凍結を始めていて、慌ててしまう。
「めんどくさかったが………これで終いだ」
その瞬間、どこからともなく現れたダーノが、鉄爪で少年を貫こうとして―――
「なんてね」
ヨミヤが自身に向けて火球を打ち込んだ。
凍結された身体は瞬時に解凍をはじめ、吹き飛んだ身体は後方のダーノに激突する。
「よっと………」
空中で重なるダーノとヨミヤ。
すると、少年は再び自身に向けて魔法―――風圧を発動。強烈な風がヨミヤの身体を地面に向けて吹き付ける。
「がッ―――」
当然、ヨミヤの下に居るダーノは、少年の代わりに、激突の代償を受け取る。
地面に後頭部を強打したダーノは、そのままピクリとも動かなくなる。
「よっと………」
ダーノを下敷きにして、バウンドしたヨミヤは、そのまま空中でバランスを取り、見事に着地を決めた。
「くっそッ―――!!」
取り残されたフィーガンは、すぐさまヨミヤに攻撃を仕掛けようとするが―――
「遅いね」
刹那、周囲に現れた火球八発に、同時に襲われ、あっという間に制圧された。
閲覧いただきありがとうございます。
平日は嫌ですね。書く時間があんまり取れません。
せめて、早めに終わる仕事でよかったと感じる今日この頃です。