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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
奈落の復讐者編
47/268

小話ヨン:ヨミヤとウラルーギ

『ギャウ!!!』


「ふッ………!!」


 飛び掛かってくるウサギ型の魔獣を、ヨミヤは右腕の義手で迎撃する。


 相手はヨミヤのひざ下程度の大きさしかない。―――もちろん、そんな小型の魔獣が、身体能力の底上げをされている鉄の義手に殴られれば、


『ギャッ―――』


 打ち返された野球ボールのように、遥か彼方へ飛んでいくことは想像に難くない。


「ふぅ………」


「―――いかがですか、義手の使い心地は?」


 魔獣退治が一段落して、息をつくヨミヤへ、身なりのいい商人―――ウラルーギが、義手の様子を確認しながら近寄ってくる。


「ウラルーギさん………はい、言ってた通りかなり頑丈で―――それでいて、まるで自分の手みたいに使えて………いいですねこの義手!」


「それは結構です。―――今一度、動作等の確認をしますので、馬車の中までおいでください」


 人当たりの言い笑顔―――商人スマイルを浮かべるウラルーギに従い、ヨミヤは馬車の中まで戻ると、右腕の袖をまくった。


「では失礼――――――」


 腕を持ち上げては、各部品を細かくチェックし、何か呪文を唱えたと思ったら、しきりに頷き―――やがてウラルーギは『大丈夫です』と義手から手を放す。


「問題ないですね。どの部品にも損傷はなし………術式にも異常は見られませんでした」


 ペラペラと、義手の状態を話す商人………どこかこの義手に詳しそうな商人にヨミヤは首をかしげる。


「ウラルーギさん………………商人ですよね?」


「?? えぇ、そうですね。全国四十二店舗を構える大・商会『ネラガッタ商会』の元締めである大商人ですが………」


「………」


 言葉尻にたくさん装飾がついていたが、ヨミヤは半眼を向けるだけで、突っ込むのを何とか抑えた。


「………商人なのに、『魔工具』? でしたっけ。詳しいんですね」


「そうですねぇー………一応、商品を紹介しなきゃ売れる物も売れませんからねぇ。魔工義手(ギミック)の商談が決まったときに――――――お勉強したんですよ」


 照れくさそうに鼻を触るウラルーギ。


 そんな彼に、ヨミヤは、『スゴイですね』なんて能天気に返す。


「あぁ、そうだヨミヤ様。―――これ、先ほどの魔獣退治の報酬です」


 ウラルーギはそういうと、お金のはいった小袋をヨミヤに握らせる。


「あ………えっと………ありがとうございます………」


「………まだ魔獣退治で報酬をもらうのに慣れてないみたいですね」


「えぇ、まぁ………はい………」


 そう、ウラルーギの馬車に乗ってから早三日。こうして何度か魔獣退治をしては、そのたびに、使いの報酬として、ヨミヤはお金を握らされていた。


「だって、魔獣退治なんて、オレも不利益被るわけで、それが嫌だから協力してるだけなのに………お金をもらうとなると気が引けますよ」


「前にも言ったでしょう? その理論でいくと、私も魔獣退治に参加しなければいけないのに、それをヨミヤ様に任せているのです。―――対価を払うのは当然です」


 このやり取りは都度、四度目。ウラルーギの強引さに押し負けるヨミヤは、結局お金をもらってしまう。


「さて、ではそろそろご飯にしましょう! ヨミヤさん! いつも通り動物のさばき方をお教えしますので! 獲物を調達しましょう!」


「あぁ、はい………苦手なんだよなぁ」


「そんなこと言わず! 自分で食べるものを調達できれば、食費が浮きますよぉ!」


「………はい」


 こうして、利害関係なんだか、そうではないのか、よくわからない少年と商人の旅は少しの間続いた。


 後に、この旅で学んだ野営の知識は、少年を大いに助けることになる。

閲覧いただきありがとうございます。

今回で小話ラストと言ったな…

あれは嘘だ。

すいません、後一話あるのマジで忘れてました。すいません…

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― 新着の感想 ―
ウラルーギさんは名前と態度がものすごく胡散臭いのに、ものすごく親切にしていますね。でも、何かの先行投資なのかなぁと思えてしまい。主人公の利害とあまり対立しませんように、となんとなく応援してしまいます。…
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