輝く花には裏切りを ハチ
初手はヨミヤの熱線。
「ぬりぃ!!」
ヒカリはそれを、オーラを纏う右手で受け止め、握りつぶした。
「っ!?」
初めての現象。原因は不明。それでも、ヨミヤは止まることなく、ヒカリの背後から風による体制崩しを敢行するが―――
「………風がでない!!」
『領域』内だというのに、風の再現が出来ず、一瞬の空白が発生する。
「ㇵァッ!!」
その隙をヒカリは見逃さない。彼は、肉薄から袈裟斬りを一閃。
「ッッ!!」
咄嗟に一歩後ろに下がったおかげで、致命傷を避けることができるが、おかげで左肩を大きく切り裂かれる。
「まだまだァ!!」
続く連撃。
左手の剣を握る手が、痛みで震えるが、無理やり無視して、剣戟を剣と義手で迎え撃つ。
「………っぁああ!!」
胸を横一文字に浅く切り裂かれる。それを覚悟のうえで、身体を無理やりひねり、後ろ回し蹴りをヒカリの顔面に叩きこむヨミヤ。
「グッ………!!」
蹴りがクリーンヒットしたヒカリは、たたらを踏み後退。対するヨミヤも、バク転を使い、ヒカリから距離を取る。
「分かんないなら………まずは物量!!」
そして、即座に大量の火球を生成。先刻、茶羽とザバル・フェリアの魔法を迎撃したのと同等の量の火球を生成。
「受けてみろ」
刹那、マシンガンのようなスピードで次々と火球がヒカリへ殺到。
「………」
しかし、ヒカリは避けることもしない。そして、次の瞬間には、爆裂の花が咲き乱れる。
「チッ………コイツは………」
普通なら致死量の爆発。だが、目の前の勇者は、何食わぬ顔で爆炎から顔を覗かせる。
ここまでの命のやり取りで、ヨミヤが気づいたことは二つ。
一つは、魔法威力の大幅減衰。―――その減少率は、なんでも貫通する火球が握りつぶされるほど。
もう一つは、ヒカリの周囲で魔法が発動しないこと。具体的にどのくらいの範囲かは不明だが………それは、意味ありげに先ほどから展開されている、あのオーラに原因があると考えられた。
「―――対『領域』用能力」
不意に、ヒカリは口を開いた。
「このオーラは、『オーラに触れた魔法を減衰する』、『オーラ内での魔法の発動を無効にする』効果がある。―――お前を妬みすぎた勇者の哀れな能力さ」
「………どうゆうつもりだ」
意味のない能力の開示。ヒカリは肩をすくめて………そして、ヨミヤを見下した。
「別に………能力の全容を知ってたとして………お前にどうにかできる力じゃない――――――諦めて投降しろ」
勇者の不遜な言葉に、青筋を浮かべながら少年は笑顔で返した。
「くたばれ」
※ ※ ※
初めから、この能力は勇者に備わっていたわけではない。―――むしろ、勇者が日頃より本心を抑えて日常を過ごしていたせいで、異世界に来て直後は力が形を成していなかった。
否、正確に言うなら、力の輪郭は出来上がっていた。しかし、肝心の中身が―――能力の効果が定まっていなかった。
それが、ヨミヤとの戦闘で彼の力を知り、『凌駕したい』と無意識のうちに願ってしまった。それが能力の『効果』として定着してしまった。
それは、一人の同級生を妬み、嫉み、恨んだ勇者の、醜い内面そのものであった。
「うぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!」
ヨミヤは火球を生成。一直線に飛んでいく火球と共に肉薄。避けることもしなかったヒカリは爆炎の中から現れるヨミヤの剣を受け止める。
そして、そのままヨミヤの剣を打ち返し、連撃。そのすべてを剣や義手を駆使して受け止め、流し、さばききる。
その流れの中で、ヨミヤも積極的に火球や熱線を展開。
火球を弾いては、剣を盾に熱線を凌ぎ、あらゆる角度から迫る魔法をオーラと、持ち前の反射神経ですべてを打ち落とす。
「『無限鎖』!!」
やがて、ヨミヤは接近戦をあきらめ、義手から鎖を伸ばし、民家の壁をつかんで空中に出ることで、ヒカリから距離を取る。
「逃がすか!!」
しかし、相手はヨミヤを遥かに上回る化物級身体能力。その程度の距離は一足で詰めてくる。
「誰が逃げるかァッ!!!!」
対して、ヨミヤはその一瞬が欲しかったと言わんばかりに、ヒカリの迎撃を試みる。
「ㇵァッ!!!!」
飛び上がったヨミヤを袈裟斬りにする一撃。少年はそれを、自らに風を当てて、態勢を変えることで無理やり回避。
さらに、そのままの勢いで勇者の腹部に蹴りを見舞い、彼をそのまま空中に放り出す。
「減衰するなら………その上からぶっ殺す!!」
憎しみを込めて、少年は吠える。
刹那―――『鉄踊り』をも蒸発させた極大の熱線が勇者に放たれる。
帝都の暗い空に、眩い光が現れた。
閲覧いただきありがとうございます。
昨日モンハンダブルクロスを買いました。
たのしぃー