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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
奈落の復讐者編
33/268

輝く花には裏切りを ヨン

 その男の子は優しかった。誰に優しくされなくても、誰かに優しさを分けてあげられるほどに。


 今思えば、彼のそんな所に惹かれたのだと思う。


 そんな大好きな男の子が、今、誰かを傷つけ、あたかも、誰かの人生を終わらせようとしている。



 ※ ※ ※



「さて、これで終わりにしよう剣崎」


 腹部に圧力をかけられ、動くこともできないヒカリは激痛に耐えながら、うっすらと瞳を開いた。


「………………悪かった。千間」


 『ゴポッ』と口から血を流し、それでもヒカリはヨミヤから目を離さない。そんな勇者の謝罪に、ヨミヤはあらんかぎりに歯を食いしばる。


「は? 謝るなよ。別に謝罪なんかいらない。オレが欲しいのはお前の死体だけだ」


 足を振り上げ、再びヒカリの腹部を踏みにじる。


「ぐ………ッ…………………―――だろうな」


「もう、もうやめて………ヨミ………………もうやめようよ………………ヨミが人を傷つけるトコ………見たくない………」


 地面にへたり込み、ヨミヤへ懇願するようにそう呟くアサヒ。そんなアサヒへ、ヨミヤは向き直る。


「オレは許せないよアサヒ。――――――コイツは、アサヒが死ぬかもしれないって時に、オレの邪魔をして、あろうことか殺そうとした。許せないよ」


 ヨミヤはまっすぐアサヒを見つめ、言い切る。


 その瞳に議論を余地がないことをアサヒは理解し、ヨミヤを止めるすべがないことを知り力なくうなだれる。


 アサヒの様子を見ていたヨミヤは、再びヒカリへ身体を向けて、今度こそ剣を振り上げる。



「ちょっと待ってくれ」



 振り下ろした腕を、肘を絡めることで止める者がいた。


「コイツが何かしたんだろうが…………………それだけは勘弁してくれ千間」


「………タイガくん」


 ヨミヤの剣を止めたのは赤岸タイガだった。


「千間くん!!」


「千間くん!」


 タイガの後方には、茶羽セイカ、加藤フミヤ、ザバル、フェリアが控えていた。


「何があったか聞かせろ千間。――――――そして、戻ってこい!!」


「………………」


 クラスメイト達がヨミヤの前に立ち塞がる。今の彼にはそれが『ヒカリを庇っている』ようにしか認識できない。


「タイガ―――いや、赤岸くん。オレは戻ってもいいよ」


 その言葉に、クラスメイト達に希望の光が灯る。しかし、その希望は、続く言葉で粉々に破壊される。


「剣崎ヒカリを差し出せば、そっちに戻るよ」


「「「………………」」」


 クラスメイトがクラスメイトを殺そうとするその現場に、全員の表情が絶望に染まる。


「――――――もういいだろ赤岸くん。オレは何を言われようが、そこのクズを殺す。そして、君たちはなにがあっても勇者を守りたい。………………目的が対立してるんだ」


 ポツリと、雨粒が天から降り始める。


「勇者の取り巻き共、オレは勇者を殺す―――――――オレを殺す気で止めに来い」

閲覧いただきありがとうございます。

今、異世界失格を鑑賞中です。面白いですね!

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― 新着の感想 ―
確かに生かしておいてもヒカリ君は何をするか分かりませんね。ヨミの気持ちもよくわかりますし、仲間たちの言うことも綺麗事としかならないような気も読んでいてします。人の本質はなかなか変わらないですから。今回…
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