勇ましき者とは ヨン
「いいだろう? 結局、さっきみたいにノロノロ歩いてるくらいなら馬車に乗った方がマシだって!」
結局、そんな風に白衣の男にごり押しをされて、ヒカリは乗合商業馬車へと乗ることに決まった。
もちろん、この世界の通貨なんて持っていないため、傭兵団の仕事を手伝いながらの乗車となった。
「お前、つえーなぁ!」
「剣もいいけど、今度俺と組み手をしてくれ!」
「どっからきたんだお前?」
傭兵団の人間は、ひたすらに実力のあるヒカリを認めていた。
また、不愛想なヒカリであったが、暇を持て余していると、余計なことを考えて、いてもたってもいられなくなるため、白衣の男に言われ、積極的に乗合商業馬車の仕事や、乗客の困りごとにも応えていた。
結果――――――
「ヒカリ君、馬車のタイヤが調子悪くてね………見てくれないかい?」
「………わかった。メシのあとに見に行く」
「ねぇねぇ、ヒカリ、またボール遊びしよう」
「今の聞いてたろ。暇じゃないんだ。また今度。――――っていうか、俺と遊んでて楽しいか?」
「うん! このあいだ教えてもらった『さっかー』? っていう遊びたのしい!」
「おい、ヒカリ! 明日の朝稽古、俺とやろうぜ」
「ああ、わかった」
乗組員、乗客、傭兵団、様々な人たちの人気者になっていた。
「どうやら、無事馴染めてるみたいだね」
「………誰かさんのせいでな」
「まぁ、我慢してくれ。明日の昼頃には帝都に到着する」
「そうか………」
夜の乗合商業馬車。配給されたスープとパンを食べながら、ヒカリはじっと、輪になる人々の中央で燃えるかがり火を見つめた。
「―――心の負担というのはね」
不意、白衣の男性は口を開いた。
「誰かに話して………そして、共に問題に立ち向かわなければならない」
「………どうした急に」
「いやいや………ただ、一般論を語ってるだけさ」
肩をすくめる男性は、空の器を片手にヒカリと同じく炎を見つめる。
「『話を聞くだけでいい』なんて人間もいるし、実際、それだけでいいことも場合によってはある。―――ただね、問題が大きすぎるならば、僕は、誰かに助けを求めた方がいいと思う」
「………………」
「じゃないと、問題は膨れ上がって………いつか君に牙を剥くだろうね」
炎が揺らめき、そして少しだけ勢いを増した。
「………そうかよ」
器を握りしめるヒカリ。木製のその器は、ヒカリの力によって少しだけ罅が入っていた。
「まぁ、かといって、僕に今の君の悩み・問題を話されたとして、解決できないとは思うけどね」
「はっ………無責任な医者だな」
「別に、心の傷は、誰でも治せるし――――――誰にも治せない。こういった話にはね、立場は関係ない。当人にとって、その他人がどうゆう役割を持つかが重要なんだよ」
「……………………」
男と少年は共に、燃え上がるかがり火を凝視した。
「あぁ、きっとオレには誰も治せないなぁ………」
少年の脳裏には、一人の少女が浮かんでいた。
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最近、6~10年前ぐらいのアニソンを聞いて、「懐かし~」となっております。