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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
罪科の犠牲編
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その『炎』の名は ニ

『ウォォォォォォォォォォォォォオォォォォォォォオォォッ!!!!!!!』


 全身を茨の刺青に覆われ、最早『漆黒』と成りはてた少年だった『何か』。


「人間が………魔獣に………なった………?」


 人間が突如として怪物———魔獣のように変異する現象に、流石のエクセルも困惑を隠せないでいるようだった。


「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


 その時、近くに居た騎士———『白馬』の構成員の男が、目の前に現れた異形に悲鳴をあげ、逃げ出した。


『ォォォォォ………』


 漆黒の獣は逃げていく騎士を凝視すると———


「なっ………」


 エクセルも目を見開くほどの速度で逃走者を追い越し、


「ぎゃッ!!?」


 無造作に男の身体を肥大化した右手でつかみ上げた。


「ぎッ………ィ………やめ………はなっ………せ………」


 その右手の力は見た目通りなのだろう。―――涙と鼻水で顔面を汚す男は、同時に血を吐き出しながら必死に首を振っている。


『………』


 だが、『漆黒の獣』は無感情な瞳でジーッと掴み上げた男を見上げると———


「――――――」


 そのまま一人の人間を『力』のみで握りつぶし―――圧死させてしまう。


「ハッ………………見た目通りだなクソが」


「………」


 黒い獣は、やがてエクセルへ視線を向ける。


「上等だバケモン。―――こっちから殺しに行ってやる」


 魔獣のまがい物を淘汰すべく、エクセルは地面に刺さっていた剣を引き抜き、力強く一歩を踏み出す。


 それだけでエクセルの中に秘められた力の奔流が外界にあふれ出す。


 ―――すなわち雷電の顕現だ。


「さぁ、『獣狩り』だァ!!」


 刹那、エクセルの姿が掻き消える。


「まずは右腕ェ!!」


 声が聞こえたのは『漆黒の獣』の背後。


『………』


 エクセルは迷わず獣の右腕に向かって刃を振り下ろし―――あっけなくその肥大化した右腕を切断した。


「ほらほらどうしたバケモン!!」


 その光景に嬌声のような声を上げたエクセルだが———


『………』


 次の瞬間、()()()()が迫る。


「なッ………!?」


 咄嗟に防御態勢が間に合い、何メートルも飛ばされながらも無傷で済んだエクセル。


「右腕が………再生………しやがった………」


 だが、その脳内は驚愕で埋め尽くされていた。


 そう、今まで様々な能力をもった魔獣と戦ったことがあるエクセルでも、そんな常識外れな能力を持った魔獣とは出会ったことがないのだ。


「あの身体能力に、あの再生力………特殊強化魔獣——————いや、下手したらそれ以上………」


 元は人間だとは到底思えない程の異常性に、エクセルは初めて表情から笑みを消して———


「………」


『ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!』


 『漆黒の獣』の咆哮と同時に跳ぶ。


 目標地点は先ほどと同じ獣の背後。


「シッ———」


 鋭い息と共に、今度は()()()()()()


『ゥゥゥゥゥ………』


 獣はいつの間にか左手に持っていた『ヨミヤの剣』で、エクセルの剣を受ける。


「なんつー賢いケダモノだよ」


 少しだけ驚愕するエクセルは、それでも止まらなかった。


「―――雷蹄瞬歩(らいていしゅんぽ)


 瞬間、紫電が軌跡となって獣を取り囲む。


 それは、標的を惑わし、隙を作るためだけの技………高速の歩法である。


昇顎渦雷(しょうがくからい)ッ!!」


 紫電はやがて獣の頭上に集まると、一閃の稲妻となって獣に降り注ぐ。


『ォォォォォォ!!』


 獣は電雷を帯びるその一撃を真正面から受け止める。


「チッ………」


 エクセルは舌打ちを隠しもせず大きく後退。―――だが、着地した先で剣を地面すれすれまで低く構える。


「………霧蛇誘雷(むだゆうらい)


 刹那、雷速でジグザグと獣に迫ったエクセルは何度目かもわからない切り返しの後———


「はぁぁぁぁぁッ!!」


 再び獣の首目掛けて刃を振う。


『ォォッ!!』


 しかし、獣はなんなくその一撃を防ぐ。


「―――だと思ったぜバケモン」


 が、次の瞬間、反転したエクセルは刃に電気を纏い、渾身の一撃を獣の腹部をねらい振う。


 それすらも自らの剣で受け切る獣。―――エクセルの刃は振り切った。


「―――雷牙(らいが)ァ!!」


 その態勢から、エクセルは剣を逆手持ちに切り替え、返す刃で再び獣の腹部を狙い———


『オオオオォォォォォオォォォオォォッ!!?』


 その胴を貫くことに成功する。



 のだが———



「ガッ………!?」


 『漆黒の獣』は、そんなダメージなどお構いなくエクセルの身体を右手で持ち上げた。


「ぐッ………おおおぉぉぉぉ………!? はなしやがれ………この化け物がァ………!!」


 強化された身体で必死に高速を抜け出そうとするエクセル。―――だが、その万力の如き握力になすすべもない。


『………』


「てめ………!?」


 そんなエクセルを見て………獣は確かな『笑み』を浮かべた。


「ふざけろバケモンが………!!」


 そして―――


 『漆黒の獣』は男を力の限り地面へと———叩きつけた。

閲覧いただきありがとうございます。

やっと作中屈指のカスに、真正面からダメージが入りましたね。

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