渇望の番人 ロク
一本角のスケルトンは戦慄した。
己の魔力量をもってしても再現できないであろう、極大の魔法が、なんの前触れもなく発射されたのだから。
とっさに結界を展開。身を小さくし、その中に二重の結界を張る。
そして、熱線と結界の衝突。
宙を漂っていたスケルトンの結界は、即座に天井に接触。しかし、それでは勢いは弱らず、熱線は徐々に天井を溶かし始め―――
轟音を立ててスケルトンを外へ押し出したのだ。
崩れる坑道。
『ッ!!!!!!!』
通常、坑道が崩れれば、中の人間の末路など容易に想像できる。―――しかし、傲慢なスケルトンには確信にも似た予感があった。
ゆえに、本気の結界を展開。
スケルトンの得意とする結界術。一枚の防壁を何枚もつなげ結界とするこの魔法体系は、防壁の加工により、『剣』など、様々な形をとる。
しかし、真骨頂はそこではない。
防壁に対し、付与効果をつけることができるのだ。例えば、『魔力を吸収する』などの効果を―――
ゆえに、『血の一本角』は展開した。
『魔法を反射する』結界を。
「………………………」
刹那、崩れた坑道から上空へ火球が放たれる。―――そして、その火球に追従するように、ヨミヤが肉薄していたのだ。
『………………』
『勝った』とニヤつくスケルトン。―――現に、その火球は見事に反射し、少年は爆炎に包まれた。
これにて、身の程知らずの少年は爆発四散し、スケルトンはまた、坑道へと身を潜ませる。
だが、この角のスケルトンは知らなかったのだ。この少年が――――――
どれだけ自分の炎に焼かれてきたのかを
「びっくりしたぁ………そんなこともできんだ」
それが聞こえたのは、上。
スケルトンが上空を見れば、日の光に隠れ、少年が勢いよく剣を振り下ろしている最中だった。
『ッ!!??』
視界がぶれる。
叩きつけられた力が、重力を後押しする。どんでもない力を全身に感じながら、スケルトンは地面へ激突した。
目の前がグルグルと周り、前後不覚へと陥る。歴戦の戦士であれば、すぐに自分の状態を把握できたのだろうが、角のスケルトンは生憎と、魔法使いだった。
「おし、やっと近づけた」
そのとき、少年の声が響く。
『ッ!?』
「おっと」
即座に放たれた剣を何事もなく弾く少年。すぐに距離を取ろうとするスケルトンだったが。
「逃がさない」
後方から爆発が起き、結界ごと、地面へ引きずり倒される。
「ここはオレの『領域』。何をしなくても、数百の魔法がお前を狙う」
聞いたこともない話だった。スケルトンには少年の話は理解できなかった。しかし、彼には一つだけ確かなことがあった。
「ははっ、『結界』があれば大丈夫って感じだね」
そう、この壁があれば、敵は絶対に自分を害することはできない。それほどまでに、この結界は固い。『血の一本角』には絶対の自信があった。
だが――――――
「残念。ソレは妄信」
次の瞬間、スケルトンの腹部あたりから爆発が起きた。
『ッ!!!!??』
本日何度目かの驚愕。しかし、自前の魔法への耐久力により、死を防ぐ。
「『領域』はオレから一定の範囲内であれば、好きな場所から魔法を再現する。―――この意味、分かるだろ?」
次の瞬間、結界内に少年の魔法が再現された。
無限の炸裂。
スケルトンの最後に見た景色は、爆裂の黒煙のみだった。
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