渇望の番人 ゴ
『今こそ、今こそ地上へ出るのです!』
『ウォォォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!』
頭に角を生やす男たち。その先頭で、真っ赤な修道服の男は高らかに宣言した。そして、坑道の出口に向かって走り出す。
迎えるのは、暖かな日差し………―――などではなかった。
『がふっ…………………?』
修道服の中央に、一本の矢が刺さる。
『出たぞ! 悪魔どもだ!! 殺せぇぇぇぇぇ!!』
その言葉を皮切りに、角の軍勢と人の軍勢がぶつかり合う。
修道服の男は謙虚だった、実直だった、献身的だった、そして、信心深かった。
『おぉ、神よ、なぜ………なぜ………我らにこんな苦難を与えるのです………なぜ………私のために尽くした仲間を傷つけるのです』
男の前には、仲間であった何かが転がっていた。
『なぜ………なぜ………なぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
そして、信仰はいとも簡単にひっくり返る。
記録にも残らなかったこの戦いは、角の軍勢を坑道入り口まで後退させたところで決着を迎えた。しかし、最後まで戦い続けた一人の魔法使いにより、人は、多くの犠牲を余儀なくされたという。
※ ※ ※
一本角のスケルトンは、空中を漂っていた。
あまりに傲慢に、利己的に、ただヨミヤ達を見下していた。
『彼』はただ、一本の魔法の剣を飛ばしたのみで、何もしてこない。
「砕けろ」
そんな一本角に、ヨミヤは容赦なく火球を撃ち込む。―――極太の熱線だ。直撃すれば、少なくとも、上半身は消し飛ぶ。
しかし―――
次の瞬間、スケルトンは嘲笑するように顎の骨をカタカタと鳴らした。そして、スケルトンは結界を展開。
ヨミヤの攻撃を易々と防ぎ切った。
「なっ―――」
絶句するヨミヤ。しかし、スケルトンは間髪入れずに、先刻モーカンを狙った魔法の剣を展開する。
その数三十。
「ッ!!??」
圧倒的物量。
瞬時に、イルやモーカンが回避できないと悟ったヨミヤは、とっさに巨大な火球を複数展開し、解き放つことで剣の殺到を迎え撃つ。
爆発の花が坑道に咲き乱れる。坑道全体が悲鳴を上げるように揺れ始めるが、今のヨミヤにそんな余裕はない。
―――そのとき、爆発を逃れた剣がヨミヤヘ向かう。
「しまっ―――」
魔法の剣が、少年の心臓を穿つその寸前。
―――イルの剣がヨミヤを守った。
「ヨミヤ。私は足手まといかもしれないが………自分の身は自分で守れる。それどころか、お前にもらった力で、このチンピラを守ることはできる―――――戦うことに集中していい」
イルは、再度、爆発を抜けてきた剣を打ち落とす、
「………ありがとうイルさん」
ヨミヤは、少しだけ微笑むと、またしても飛来する剣に、火球をうちこんで迎撃する。
「じゃあ、イルさん! 頑張って逃げてください!!」
「へっ………?」
刹那、ノータイムで放った熱線―――『鉄踊り』を蒸発させた極大の熱線を、一本角のスケルトンへ放った。
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最近にじさんじにハマりました。