汚泥深層決戦 イチ
「………ここは」
気が付けば、オレは見渡す限りの青空を見上げる形で、浅い湖の真ん中で寝転がっていた。
「………」
状況がうまく把握できず、仕方なく立ち上がれば、そこは果てのない青空と湖が続く幻想的な場所だった。
「なんだここは………」
もちろん、直前の記憶は『ウーズ・ブレイク』の中で魔法を使った場面だ。こんな場所に居る理由も意味も分からない。
「こんにちわ」
そんな時、背後から声がかけられた。
人の居る気配はしなかった。………しかし、その声の主から敵意は感じない。そのため、慌てることもなく振りむいて、
「なッ―――!?」
オレは目を見開いた。
「初めましてだよね………千間ヨミヤくん」
振り向いた先には、シュケリをそのまま黒髪にしたような少女が佇んでいた。彼女は、柔和な笑みでこちらを見つめている。
しかし―――
オレが驚いたのはそこではない。
「君は………何者だ………」
黒髪の少女の背後に、天を衝くほどの『ウーズ・ブレイク』が存在しており、静かにこちらを見下ろしていたのだ。
黒髪の少女の背後に『ウーズ・ブレイク』―――この位置関係で、オレには到底、少女がウーズと無関係だとは思えなかった。
「何者って………そうだなぁ………まぁ、『君の敵対者』かな?」
「敵対者って………」
状況もわからぬまま、少女が『敵対者』を名乗るものだから、オレは身構えて『ウーズ・ブレイク』と少女を交互に見る。
「ああ、安心して。―――後ろのはただの飾りだから」
手をプラプラと振る少女は、少し息を吐くと、オレへ向き直った。
「ここは君たちと『ウーズ・ブレイク』である私達が繋がったいわば―――『精神空間』」
「『精神空間』って………まさか」
「ええ。君たちが使った馬鹿げた魔法のせいで出来上がった空間に私達はいるの」
その言葉は、オレの発動した魔法が、正しく発動したことを意味する。
そして、ここが精神空間であるのなら、『ウーズ・ブレイク』を名乗る目の前の少女の言う、『私達』とは………
「じゃあ―――シュケリ、居るよね?」
「………そうね。―――不本意ながら」
オレの指摘に、目の前の少女は、まるで苦虫でも噛みつぶしたような顔で―――『ウーズ・ブレイク』の足元を指さした。
オレは、素直にそちらに目を向けて―――
「シュケリ!!?」
『ウーズ・ブレイク』に下半身と両腕を飲み込まれているシュケリを発見した。
「シュケリ!! 今助け―――」
すぐに駆け出そうとして、オレは足を止めた。
何故なら、上空から何者かが強襲してきたからだ。
「くっ………!!」
咄嗟に後方に下がり、水飛沫と共に襲い来る風圧から顔を守る。
「―――行かせるわけないでしょう千間ヨミヤ」
そして、強襲者の姿をみて、オレは唖然とした。
「………しつこすぎるぞ爺さん」
それは、アルドワーズの形をとった分身体だった。
「この女を助けたければ、力づくで来なさい。―――君たち全員を殺して、この女を私が完全に吸収するわ」
「そんなこと………させるわけないだろ!!」
閲覧いただきありがとうございます。
ちなみに、今回の決戦フィールドは『ウユニ塩湖』を意識しております。




