フェーズ1 イチ
『―――よし、じゃあこの作戦はいくつかのフェーズに分けよう』
全員が特定の位置につき、人の少なくなったビルの最上階。
ヨミヤは、隣で剣を見つめるシルバーの気配を感じながら、一人天井を見上げて作戦会議の内容を振り返っていた。
『まずは、住民の保護。―――差しあたって、敵の注目を集める人間が必要だ』
作戦会議では、他のメンバーがそれぞれ役割を全うしている間、ヨミヤとシルバーは魔獣の注目を集める役割を言い渡された。
要するに『ヘイト集め』だ。
「まさか、お前と共闘することになるとはな」
「調子のいいことを言うな。―――『フォーラム』がシュケリをあんな目に合わせたんだ。共闘はしない。………互いに『標的にしない』それだけの話だ」
「………可愛くねークソガキ」
「うるさい」
今までのことを忘れることのできないヨミヤは、シルバーに悪態をつき、彼もまた生意気なことを口にするヨミヤへ文句を告げる。
一見、相性最悪な組み合わせ。
しかし、それでもこの二人が陽動に選ばれたのには明確な理由がある。
「――――――時間だ。行くぞ」
「へいへい。………せいぜい死ぬなよクソガキ」
「そっちこそ」
互いに睨みあいながら―――ヨミヤは左手を掲げた。
刹那―――魔力が高まり、周囲の熱を上げていく。ヨミヤの魔法・火球だ。
熱線は空を貫く極光になって、開戦の狼煙となった。
最初はヨミヤの魔法だった。
空中に飛び出したヨミヤは、これまでの戦闘の中で成長した能力―――広大な『領域』による爆破攻撃。
義手に仕込まれていた大爆発を再現した。
―――本来は術者の近くにしか発動のできない爆発の魔法も、『領域』の制限のない魔法再現能力によって、術者から離れた位置に魔法を再現することができる。
―――できるだけ派手に………!
自身の役割を今一度、心の中で復唱し、ヨミヤは音もなくやってくる分身体の群れに再び極光の熱線を浴びせる。
しかし―――
「一体、やれてない………!」
分身体の中に、ひと際大きい個体がおり、一撃では仕留め切れていない。
「クソガキ! 足場出せ!!」
「チッ………!」
下から飛び上がるシルバーにヨミヤが渋々結界の足場を出す。
「『四・百銀の光彩』」
すると、死にかけていた分身体をあっという間にみじん切りにしてしまう。
「分担だ。デカブツは優先的に俺がやる」
「―――あぁ。そのほうが効率的だな」
二人がヘイト集めに指名された訳は、圧倒的な『殲滅力』。
ヒカリやタイガでも、きっと戦うことはできる。―――それでも、大群への殲滅力はこの二人に劣る。
故に、相性最悪と言われつつも、敵を殲滅し続ける役割を二人は言い渡された。
二人が、殲滅の方向性を決めたその時。
『ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!』
『ウーズ・ブレイク』がヨミヤとシルバーを認識したのか、さらなる分身体を生み出した。
その中には、地上を走る『地上型』も居る。
「変更。オレが飛んでるヤツやるから、デカいのと地上のヤツやって」
「ㇵァ!? 俺だけ作業量多いだろ!?」
「足場は出す。頑張れ」
地上型の殲滅を『面倒』と判断したヨミヤは、地上戦の得意そうなシルバーに仕事を押し付け、足場に立っているシルバーを蹴り落とした。
「は………っ?」
「まぁ、空のデカブツはオレのほうでも処理しとくから」
次の瞬間、重力がシルバーを地上へいざなった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ふざけんなクソガキィィィィィィィィ!!」
しっかりと地上でシルバーが着地したのを見て、ヨミヤは再び分身体の殲滅に戻った。
閲覧いただきありがとうございます。
描くか分かりませんが、作戦立案から実行まで少しだけ時間があり、それぞれ話してたことがあるようです。




