表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
無窮の記憶編
146/270

剣閃の先に映るは『夜』 イチ

「剣崎………」


 アサヒは、はるか遠くに蹴り飛ばされたヒカリを見て、一人呟く。


 シルバーはすでに、ヒカリを追いかけてこの場には居ない。


「………」


 一人残されたアサヒは、何が何だか理解が追い付いていない状況下で、今後の自分の立ち回りについて考える。


―――ヨミの助けになりたい………まずはヨミの戦っている敵について知らなきゃ………


 すぐに目標を決めるアサヒは、具体的な行動案を考えようとして―――



「居たぞ!!」



「!?」


 数人の男達―――騎士達がアサヒを見つけ、大きな声を出した。


「なんだ………帝国の―――」


 最初こそ驚いたアサヒだったが、帝国の騎士の恰好をしていたため、すぐに胸を撫でおろす。


 のだが。


―――あれ、あの手に持ってるのって………


 騎士の手に握られている()に、アサヒの視線が集中した。


「『銃』………?」


 それは、日本の学生には見慣れないもの。―――それでいて、人生で一度は映像などで見たことのある物。現代兵器の象徴。


「………………」


 遠くから走ってくる騎士の顔は見えない。―――それでも、手に握られている物が嫌な想像を掻き立てる。


―――っていうか、なんでこの世界に銃が………っ


 最悪の予感に急かされ、その場を離れようとしたときには………もう遅かった。


()()ッ!!」


 剣など抜かず、騎士達は銃を構えて確殺の号令をかけた。


「ぁ―――」


 刹那―――



「さぁせるかァァァァァ!!」



 加藤が、アサヒの代わりに銃弾を喰らった。


「加藤………くん………っ!?」


 『同級生が撃ち殺される』最悪な未来を想像したアサヒから、絶句が漏れる。


「ぐっ―――」


 しかし、


「いってぇぇぇぇッ!!」


 すぐに死とは程遠い絶叫………もとい悲鳴が()()から響いた。


「………へっ?」


 振り向き、加藤へ駆け寄ろうとしていたアサヒから間の抜けた声がこぼれ出る。


「防御力があるって言っても痛いモンは痛いんだ!!」


 ………何故無事なのかを説明すると、加藤の防御力を底上げする能力由来だ。魔族の爪を弾く身体が銃弾を通すわけもない。


 そんなことを知らない襲撃者の騎士達は、一様に呆けた様子だ。


 中には『銃』の故障を疑う者までいる。


「んな危ない物………使うんじゃなーいッ!!」


 とりあえずなんともなさそうな加藤に安心するアサヒをよそに、加藤は急加速。


 一瞬の足技で三人をあっという間に昏倒させる加藤に、事態が安定したとアサヒは胸を撫でおろした。


「………ありがとう加藤くん」


「間に合ってよかったよ真道」


 銃弾が当たった箇所の服が破れ、皮膚が赤くなっている箇所を確認しながら喋っている加藤を見ながら、アサヒは改めて切り出す。


「タイガとかセーカは?」


「二人は魔族たちを蹴散らした後に襲ってきた一般人っぽい人たちに銃撃されて、路地裏から動けない状況。―――タイガくんが動けないから、撃たれても問題ない俺が真道を呼びに来たってわけ」


「なるほど………」


 自分が離れた後に、様々なことがあったようで若干申し訳なくなるアサヒは、タイガの状況を想像してすぐに顔を上げた。


「詳しいことは後っぽいね。―――すぐ行こう」


「あぁ! 何かあれば俺が盾になるから!」


「よろしく!!」


 チラリと、ヨミヤの入っていった塔の入り口を一瞥して―――アサヒは仲間の元へ走った。



 ※ ※ ※



「どうしたクソガキ!! 『片腕のガキ』はもっと楽しませてくれたぞッ!!」


 楽しそうな声とは裏腹に、目の前の男はビルの屋上をみじん斬りにした。


「ホラホラホラァ!! どうにかしないと死ぬぞ!!」


 もはや嬌声とも呼べる声と同時に、男は隣のビルに飛んだヒカリへ肉薄する。


「逃がさねぇぞ!!」


「ぐッ………!!」


 振り下ろされた剣をギリギリで防御するヒカリは、そのまま直下のビルへ叩き落される。


 不快感を感じる暇もないスピードの落下。ヒカリは空中で身を捻り、何とか着地に成功するが、あまりの衝撃に屋上に大きな亀裂が入る。


―――真剣にこっちの話を聞いてたと思ったら、突然ハイテンションに殺しに来る………意味がわかんねぇ!!


 上空から、剣の振り下ろしに落下の速度を乗せた一撃を、後方に大きく下がることで回避。間髪入れずに距離を詰めてくるシルバーに、ヒカリは剣を薙ぐ。


 その一撃を難なく受け止め―――シルバーの剣がヒカリの刃の上を滑らせるように迫る。


 咄嗟にステップで回り込むように回避したヒカリは、そのままシルバーと何合も斬りあう。


―――だが、どんなにハイテンションでも技の冴えはハンパじゃないっ!!


 しかし、斬りあいは不利だった。


 つい数分前に斬りあったときと同じく、どんどんヒカリに切り傷が増えていく。


 形勢を変える一手が必要だった。


―――………………ッ


 その瞬間に脳裏に浮かぶのは、あの復讐者。


 ()()()()()()()()()()()()敵を殺しに来る覚悟。


「………………上等だ」

閲覧いただきありがとうございます。

ちなみに、サブタイトルにも色々意味を込めてます。

今更ですがね笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ