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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
無窮の記憶編
141/270

仇討ちと抑止の狭間 イチ

 それは、『悲劇の男』が息を引き取った後の光景。


「フン………くたばったか………」


 雨の降りしきる『柱』前広場。


 その広場の中央で倒れるイアソンを、セラドンは雨に打たれながら見下ろした。


「これで、『柱』の最有力主任はこのワタシだ」


 セラドンは頭脳明晰な男だった。


 多くの『柱』研究員が、ハイスクールの卒業後から研究を始め、街からの少ない援助金を元手に研究を始め、努力を積み重ねてやっと『柱』に入ることができる。


 しかし、セラドンはハイスクール時代で既に街に認められるほどの研究成果を示し、ハイスクール卒業後に『柱』に入った。


 誰もが認めるはずの才能。


 しかし、当時の『柱』にはイアソンとハーディがいた。 


 『魔工具』という、歴史に名を遺す程の発明をした逸材が。


「昔から目障りだったんだ………」


 秀才であったハズの男は、その実、誰かに認めてほしかった。


 けれど、周囲は決してセラドンを讃えることはしなかった。


 それどころか、セラドンに誰も見向きもしない。―――賞賛は常にイアソンに向かう。そして、その中心にいるはずの男は、常に死んだ目をしていた。


 気に食わない、気に食わない、気に食わない―――


「………………これは」


 その時だった。


 セラドンが、イアソンの遺体の腰に差してあった『銃』を見つけたのは。



 ※ ※ ※



『死ねェハーディ・ペルションッ!!』


 賢者の柱、『羽』にある一室で、『鉄の巨人』を操縦するセラドンは、おもむろに、四本指の腕部をハーディに向けて………()()した。


「っ!?」


 迫るのは、指の先より発射された無数の『結界弾』。


 消費タイプの『鉄の弾丸』より、より魔法使い向けに設計されたイアソン製の銃………その『原型』に近い弾丸だ。


結界(プリズン)ッ!!」


 ハーディは殺到する弾丸を前に、咄嗟に自信を覆う結界を顕現。


 間一髪で死の嵐を回避する。


『ハハハハッ!! 驚いただろうハーディ・ペルション!!』


 前方から迫ってくる弾丸に対して、()()()の結界を展開したハーディを心の底から笑いながら、セラドンは気持ちよさそうに声を張り上げる。


『この巨人は、全身に銃の機構を取り入れた戦闘用魔工具『機銃巨人ドレッド・ガンフォート』さ!!』


「『機銃巨人ドレッド・ガンフォート』………」


 鉄の巨人の名を声高に宣言するセラドンは、それでも尚口を回す。


『あの忌まわしい男の発明を、ワタシのアイデアで発展させた傑作さ!! 小回りの利く指の小銃機関、破棄力に優れた大口径砲、その他、様々な魔法を発動できる術式機構』


 ペラペラと、まるで自身の功績を讃えてほしいかのように喋るセラドンは、その調子のまま指の小銃をハーディに向ける。


 ハーディは、その行為が示すところを先ほど学んでいるため、淀みなく今度は前方のみの結界―――結界(シールド)を展開する。


『この『機銃巨人ドレッド・ガンフォート』と銃………それと『ウーズ・ブレイク』さえいれば、ワタシ達『フォーラム』は世界を取れる!!』


「………」


 セラドンの思い上がりにも、真実にも聞こえる言葉をハーディは静かに()()()


 まるで、現在地が嵐の中心であるかのように、嵐の直前に全く風が無くなるように―――


 そして、


調()()()()()()()


 ハーディは一歩踏み出す。


「『傑作』? 『世界を取る』? ふざけるのも大概にしろ―――」


 ゆっくりと前進するハーディ。それに伴い、結界も弾丸の嵐の中を掻き分けて進んでいく。


『ッ………』


 結界にも強度がある。


 込める魔力の量によって、強度も変わってくる上、展開中は魔力を注ぎ続ければ結界を修復できる。


 よって、結界を物理的に破る方法は二つ。


 一撃の破壊力によって壊すか―――圧倒的物量の攻撃をもって修復が追い付かない程衝撃を浴びせるか。


 セラドンは後者の選択をもって、ハーディの結界を破りにかかる。―――具体的には、計八本の指から飛び出る弾丸を用いた致死量の攻撃。


「イアソンが作った武器で―――」


 しかし、()()()()



「そんなことさせるわけがないだろうッ!!」



 次の瞬間、ハーディは事前に発動を()()させていた魔法を行使する。


 すなわち―――空を焦がす豪火球(グランデイ・フレイム)


 特殊強化魔獣を葬ったエルフの一撃が―――殺戮兵器へと向けられた。

閲覧いただきありがとうございます。

「セラドンの話つまんねぇ…」なんて思ってたら昨日はモチベーションが上がりませんでした。

でも、コイツの境遇も共感できるのが悲しい所。

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