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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
無窮の記憶編

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一匹狼 サン

―――クソッ………日和った………ッ!!


 高速で動き続ける二足歩行の巨大狼―――獣魔形態となったアザーを目で追うことが叶わず、タイガは苦悶の表情を浮かべながら全神経を使って警戒を続ける。


「行くぞ人間ッ!!」


 続いて、目にも止まらぬ速さで肉薄するアザー。


 風の爪を生成する鉄爪を、先ほどより尚素早く振りぬく。


「―――ッ!!」


 タイガは、間一髪で相手の手首を止めることで腕全体のスイングを阻止するが、無情にも風の爪は生成され………


「ぁぐ………ッ!!」


 タイガの横腹を切り裂いた。


―――いや、大丈夫だ………ッ! ヤバいトコまでは達してない………!!


 込み上げる血を口の端から流しながらも、止まる気配のないアザーと合わせてタイガは動き続ける。


―――()()は同じ………! けどスピードが段違い!!


 アザーの攻撃の始まりは、大体下からの振り上げ。


 『見えない』と判断したタイガは、予測でその攻撃に対応して見せた。


―――速いが………まだ敵は俺のことを()()()()()………! 遠距離からじゃなくて近接戦で俺を殺そうとしているのがその証拠………


 紙一重で、殺到する鉄爪をいなし続けるタイガは、あらゆる箇所を防ぎきれない風の刃で傷つけられながら、思考を回す。


―――もっと………もっと相手のクセを読み込め………! 勝機はそこしかない………!!


 右腕で下からの振り上げ、コンビネーションで左腕からの振り下ろし、一歩踏み込んで右の薙ぎ払い、今度は左腕での下からの振り上げ―――


 無限にも思える刹那の時間。


 幾度となく人間を死に追いやる必殺の中、そのすべてにギリギリで対応し続けるタイガ。


―――下、上、左、右………


 額を切られ、流れる血で左目がふさがれる中、ただひたすらアザーの挙動を頭に刻み込む。


 そして………


―――………型がある。


 徐々にアザーの動きに順応していくタイガ。


「………お前」


 その事実にアザーが驚愕の表情を見せ―――同時に、決められた順序で振り下ろされた左手。


―――ここだな


 タイガは、アザーの左手を、右手で()()()()()


「なッ………!?」


 こんどこそ、はっきりと驚いた声を上げるアザー。


 タイガは、発生した風の刃で再び右の肩を切り裂かれるが―――


「捕まえたぜ」


 まるで恋人つなぎのように、真正面から握られるアザーの鉄爪。


 刹那―――


()()()


 鉄爪が突如―――粉々に()()()()()


「何ッ!?」


 能力(ギフト)『破壊者』。


 その能力は―――()()()対象の破壊。


 乱暴者のタイガに与えられた、皮肉な能力。


 条件として、『手のひらで触れた物』の破壊であるため、拳を作った状態で発動できないのがネックな能力(ギフト)である。


 タイガは、この能力をアザーが人型形態の時に使おうとしたが、『風の刃で死ぬかもしれない』という状況が、無意識のうちに彼の行動を阻害してしまったのだ。


―――だが………壊した!! なら次の行動は―――!


「くっ………!!」


 アザーは、『魔剣』を壊されたことで、自然とタイガと距離を置こうとする。


 しかし―――


「ティール・ウル・ソーン・ヤラ―――」


 タイガは呪文を詠唱しながら、アザーへ距離を詰めた。


「コイツ………!!」


 それは、アザーが後方に飛んだのと同じタイミングでの肉薄。―――『武器を壊されたら一度距離を放すだろう』と読み切ったタイガの策略だった。


 そして、同時に―――


「『超人化(サダナール)』」


 呪文を唱え終わったタイガの強化魔法が、行使されるタイミングでもあった。


「―――ケリをつけるぞ」


 加速する。


 全身のバネを活用した、無駄のない最大威力の拳がアザーの腹部に突き刺さる。


「ガッ―――!!?」


 強化されたタイガの拳は、獣魔形態のアザーをいとも簡単に吐血させ―――その巨体をまっすぐ後方の建物にブッ飛ばす。


「ぐッ――――――こん………のぉぉぉぉぉぉぉッ!!」


 すかさず立ち上がったアザーは、その膂力をもってしてタイガに肉薄。


 右腕の鉄爪を下から振り上げる。が―――


「それは何度も()()


 タイガの蹴りが、アザーの腕を迎撃。


 アザーの右腕の前腕に蹴りが炸裂すると、彼女の腕はあらぬ方向に()()()()()


「ぐ―――あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 ブラブラと力を失くした右腕から、風の刃が生成され、まったく見当違いな場所へ飛んでいく。


「フッ―――!!」


 右腕を押さえるアザーの顎を、回転の聞いたアッパーで打ち上げると、再び腹部へ右拳と左拳のコンビネーション。


「ぐっ………!!」


 たまらず後方によろけるアザーをタイガは逃がすことはしない。


「オラァッ!!」


 巨体であるアザーの顔面目掛けて飛んだタイガは、そのままの勢いで彼女の眉間に飛び膝蹴りをお見舞いする。


「ガ………ッ!?」


「まだだッ!!」


 タイガは倒れ込もうとしたアザーの胸倉を掴むと、そのまま力任せに持ち上げ―――


「だああああぁぁぁぁぁ!!」


 身体をうまく捻り、タイガはアザーを地面へ叩きつける。


「~~~~ッッ!!」


「これで終わりだ!!」


 放射状にひび割れる地面に仰向けに転がるアザー。


 タイガは、踵を振り上げ―――アザーの腹部に踵落としを炸裂させた。


「―――」


 アザーは、意識を保つことも許されず、そのまま白目を剥いて沈黙した。



 かくして、はみ出し者達―――一匹狼たちの戦いは幕を下ろした。


 勝者であるはずの赤岸タイガは、その傷と疲労から、そのまま地面に倒れ込み………建物の間から覗く狭い空を、呼吸を乱しながら見上げた。





閲覧いただきありがとうございます。

スーパーサイヤ人ってカッコいいですよね。

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