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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
無窮の記憶編

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132/270

夜と銀の交差で輝く ヨン

 雨が降りしきるあの日、彼と私は違う道を歩み始めた。


 私は共に()()()()()


 でもそれは私のワガママだった。


 『一緒に居たい』と願いながら、彼の気持ちに寄り添うことのできなかった私に、そのワガママを貫くことは許されない。


 でも―――


 でも、もし………もしも許されるのなら、私はもう一度だけ………貴方に会いたい。


 それが、彼と共に()()()()()()()()()()()、今の私の願い。



 ※ ※ ※



「ヨミ………!」


 突如として『賢者の柱』から現れたヨミヤに、アサヒは瞠目する。


 そして、同時に、今の彼がボロボロの状態で自由落下していることにいち早く気が付いた。


「………行かなきゃ」


「真道………?」


 周囲に待機していた騎士に誘導され、住民が避難している今、悲鳴やら怒号が飛び交う中で、タイガは隣にいるアサヒの呟きを確かに聞いた。


「ヨミが………ヨミが………危ない………!!」


「『ヨミ』………? 千間が………?」


 『柱』の一部は瓦礫と共に崩れた。その瓦礫のせいでタイガはヨミヤの存在に気づけていない。


 よって、アサヒの言葉に若干困惑していたタイガだったが………


「あっ………オイ!! 今別行動すんなッ………!!」


 咄嗟にアサヒの腕を掴もうとするタイガだったが、紙一重で彼女のことを止めることが出来ず、アサヒは一人、人混みの向こう側へ消えていく。


「アサちゃんどうしたの!?」


 パニックの中、人混みの中に消えていくアサヒに、茶羽は慌てたようにタイガに言葉をかける。


「わかんねぇ………! だが嫌な予感がする………!」


「ど、どうする赤岸君………?」


 加藤はあわあわとアサヒとタイガを交互に見てひとり慌てている。


「どうするも何も、追いかけるしかない。―――何がなんだかわからない状況だ。固まって動いた方がいい」


 タイガは、そう結論づけて、加藤と茶羽と共にアサヒを追いかけようとするが―――


「止まってもらおうか」



 逃げ惑う民衆のど真ん中で、タイガ達は()()に囲まれた。



「「「なっ………!!」」」


 咄嗟に立ち止まる加藤とタイガ。


 加藤は、すぐに茶羽の腕を引っ張り、タイガと二人で茶羽を庇うように立ち位置を入れ替える。


「………一体どうゆうことだ?」


「さぁ………? 俺もよくわかんないや」


「アサちゃん追いかけなきゃいけないのに………!」


 魔族の登場に、一層パニックに陥る住民。


 騎士達は、困惑の表情を浮かべながらも、囲まれているタイガ達よりも、他の住民を避難させることを優先させていた。


「勇者一行………計画の為だ。―――ここで死んでもらう」


 魔族の中から、青い獣の耳を生やした女性―――アザー・ホリゾンが現れる。


「………」 「………」


 真正面から向けられる殺気に、加藤も茶羽も喉を鳴らす。


「………チッ」


 一方で、無数の魔族と、より実力の高そうなアザーを確認したタイガは舌打ちをする。


「こんな形で()()したくなかったが………」


 タイガはポケットから、平水晶を取り出すと、少しだけ息を吸った。


「―――」



 ※ ※ ※



 タイガ達が魔族に囲まれる少し前。


「―――しくじりましたねシルバー」


 壁の一部が破壊され、瓦礫が降り注ぐ中、警護の人間に囲まれ避難するアルドワーズ。


「賭けは私の負けですね………ですが、まだ終わっていない」


 アルドワーズは、警護の一人―――フォーラムの構成員に、指示を出す。


「アザーに今すぐ伝令を。―――『デモノイド』の総力をもって勇者一行を今すぐ撃滅するように。………もう民衆の目を気にしなくてもいい」


「承知いたしました」


 すぐにその場から離れる部下を見届け、もう一人いた部下へ再び指示を出す。


「違う場所へ避難したセラドンにも伝令を。―――計画の前倒しを。敵に『メインプラン』を奪取されている可能性を考えて、『リサーチャー』を動かすよう伝えなさい」


「し、しかし、それではアルドワーズ様の警護が誰も居なくなってしまいます………!」


「いいのです。―――いいから行きなさい」


「は、はい………」


 無理やり部下をセラドンの元へ行かせると、アルドワーズは一人、落ちてきた瓦礫を見つめた。



「………」


 全身を、臓腑が泡立つほどの浮遊感が支配している。


「………?」


 そんな感覚が嫌で、ヨミヤはボンヤリと目を開けた。


「―――ッ!!」


 認知した現状は『落下』。―――しかも、地面がすぐそこに迫っていた。


「~~~~ッッ!!」


 すぐさま地面から風を生成。


 落下の勢いを全力で相殺する。


「ぐッ―――!!」


 しかし、勢いを全て殺すことが出来ず、右肩から地面へ激突しながら地面に転がった。


「ぐぁぁぁぁ………!!」


 シルバーにつけられた刺創に、落下の強打が重なり、ヨミヤは悶えるように地面にうずくまる。


「ぅぅぅぅぅぅうう………あ‘‘あ‘‘ァ!!」


 歯を食い縛るヨミヤは、右腕についていた義手の残骸をはぎ取り、地面へ乱暴に置きながら―――立ち上がる。


―――シルバー(あいつ)ならすぐに追いかけてくるはず………ッ!!


 全身を傷だらけにするヨミヤは、グッと『柱』を見上げる。その時だった。



「ヨミッ!!」



 脳裏に、染み込む声が聞こえたのは。


「………………………………アサ、ㇶ?」


 振り返ると、


「ヨミ………ヨミ………!」


 少年が、一方的に別れを告げた少女が駆け寄ってきていた。


「なん、で………?」


「ダメッ!! 話はあと!!」


 アサヒは、すぐにヨミヤのケガの様子を確認すると、すぐにポケットからハンカチを取り出し右肩の止血を始めようとする。


 が、


「ダメだッ!!」


 探知の魔法に反応があったヨミヤは、すぐアサヒを背後に追いやり左手で剣を構える。


「でも、治療しないとッ!!」


「ダメなんだ!! ヤバい奴が来る!!」


 念の為、アサヒの周囲に結界を展開し、ヨミヤは上空に向けて火球やら熱線を撃ち出す。


「チッ―――!!」


 荒々しく舌打ちするヨミヤは、剣を構え―――上空へ飛び上がる。


「ウォォォォォォォォッ!!」


 振りかぶった剣を全力で振り下ろし、風と爆風で威力を底上げする。


「無駄だッ!!」


 ヨミヤはそうして、上空から()()してきたシルバーと打ち合う。


「クッソ………!!」


 しかし、片腕のないヨミヤに拮抗は許されず、力のままヨミヤは打ち落とされ、地面を盛大に転がる。


「ヨミッ!!」


 術者が結界を維持できず、自由になったアサヒは、転がってきたヨミヤに駆け寄り、上半身を抱きあげる。


「に………げろ………」


 最早剣を握る力すらないヨミヤは、逃亡をアサヒに伝えるが………


「嫌!! 今のヨミだけは絶対置いて行かない!!」


 少年を追いかけてきた少女に、目の前のボロボロな少年を置いていく選択肢が取れるわけがなかった。


「あぁ? お前………勇者一行の………」


 そこへ、シルバーがゆっくりと歩み寄る。


「………まぁいいか。アルドワーズのことだ。―――抹殺対象だろ」


「あなたがヨミを………ッ」


 殺意をマックスにして近寄ってくるシルバーからヨミヤを守るべく、アサヒは剣を抜き―――シルバーに対峙する。


「にげ………てくれ………頼む………アサヒ………逃げて………」


 声を発するのもギリギリな状態で、ヨミヤは必死に声を絞り出す。


「………大丈夫。もう、『裏切らない』から」


 アサヒは振り向くことなくヨミヤに告げる。


「ハッ………愛だねぇ………」


 そんなアサヒを見下ろすシルバーは吐き捨てるように呟くと―――剣を振り上げた。


「クソッ! クソクソクソクソクソッッッ!!」


 無慈悲な現実に抗うように、手を伸ばし、魔法を撃とうとするヨミヤだったが、攻撃魔法はおろか、結界すら視界がぼやけて、再現させる座標が安定しない。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 少女へ銀の刃が迫る。

閲覧いただきありがとうございます。

三が日で時間が一杯あるので、短編を一つ上げれそうです。

ちなみに、この作品には関係ない奴ですね。

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― 新着の感想 ―
ヨミヤは未だ無力と言うか実力不足だったのですね。なかなか強さというのは十分なところに至れないものですね。魔族のせいで大混乱ですが、どうなるのかとても楽しみです。
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