夜と銀の交差で輝く サン
「遅い遅い遅い!!」
ヨミヤに迫るのは、同時に放たれているかと思われるほど速い斬撃の数々。
「っ………!!」
それらの刃を、回避したり、剣や義手・結界で防いで対処をする。
しかし、それでもヨミヤは肩口や腕、足を次々切り裂かれていく。
「っアァァ!!」
一度シルバーと距離を置くべく、全方位に結界を展開。相手の刃を弾いた後、ヨミヤは大きく後退する。
―――止まるなッ!!
ヨミヤは、シルバーが次の行動をとる前に、すぐに熱線を複数展開。―――急所を狙い容赦なく打ち込む。
「ハッ!! 芸がねぇなァ!!」
『至極当然』とでも言いたげに、必殺の熱線のすべてを回避して見せるシルバー。
「悪かったなッ!!」
ヨミヤは、シルバーの回避している隙に再び接近。―――剣を上段に構える。
「ハッ………見え見えだよ」
「………そーかよ」
神掛かっている反射神経によって、ヨミヤの攻撃は察知されてしまう。が―――
―――どうせ反応してくるなら………その上からッ………!!
刹那、ヨミヤは剣を構える自分の腕に―――火球を当てた。
「防いでみろッ!!」
人外の膂力は、爆発の推進力を得て―――その威力を増大させた。
「なッ―――!?」
次の瞬間、刃と刃が衝突。―――しかし、拮抗することもなくヨミヤがシルバーを弾き飛ばす。
―――防がれたけど………崩した!!
ヨミヤはすぐさま魔法で追撃をしながら自らも突貫。
―――ここを逃したら………負けるっ!!
「ㇵァ………」
その時、シルバーは大きなため息をついた。
と、同時に少年は見た。
―――何を………
地面に手をついて、後方にバク転で着地したシルバーが剣を腰に構えたところを。
姿勢を低く、それでいて、まるで集中を高めるように瞑目している姿をみた。
―――その態勢は、まるで、『居合』の構えだった。
「ッッッ!!?」
この時、ヨミヤが異世界に来てから磨いてきた生存本能が、最大限の警鐘を鳴らした。
だが、止まれない。
突撃の態勢をとった身体は、すぐには静止することは出来ず、ヨミヤは踵をブレーキ代わりに、義手と、複数枚の結界で次にくるであろう斬撃に備える。
「『一・血緋の誓い』」
そして、静かなる宣言の後―――
銀の剣閃がすべてを切り裂いた。
ヨミヤの何枚も重ねて展開したヨミヤの結界も、ただの膂力―――剣閃の鋭さのみで切り裂いていく。
「まずっ―――!!」
刹那―――ヨミヤの義手が両断された。
「~~~~ッ!!」
破壊された義手に意識を向ける暇もなく、全力でヨミヤは上半身を仰け反らせて―――切っ先が少年の前髪を裂いて過ぎ去る。
「グッ………!!」
そのまま態勢を崩して地面に転がるヨミヤ。
「ホラ、まだ終わってねぇぞ」
「がッ………!?」
先ほどよりもトーンの下がった声で、いつの間にか接近したシルバーは、横たわるヨミヤの腹部に思い切り蹴りを入れる。
それだけで少年の身体は決河の勢いで壁に叩きつけられる。
「『二・飛青の定見』」
シルバーは先ほどとは打って変わって、別人のように冷酷に攻め立てる。
―――避けられない………ッ!!
次の瞬間―――斬撃が飛んだ。
「………マジかよ」
高速で飛来する斬撃は、少年に達するまで、道中の物をすべて切り裂き迫る。
飛ぶ斬撃を、ヨミヤは剣で防ぐ。―――が、あまりの勢いに、ヨミヤが埋まっていた壁が破壊される。
「これで終わりだ」
勢いよく飛ぶヨミヤに追いついたシルバーは、そのままヨミヤの心臓めがけて剣を突き出す。
「―――んなろ………ッ!!」
何度も壁に打ち付けられ、全身が痛むヨミヤであったが、それでも、無理やり身体をよじる。
「ぐぁ………ッ!!」
痛みで苦悶の声を上げる少年は、心臓に突き刺されるはずだった剣を、何とか右の肩口にずらすことに成功した。
「チッ………」
舌打ちを隠さないシルバーは、少年を突き刺したまま、加速した。
「しつこいヤローだ………」
剣に突き刺した少年を、壁を破壊しながら何度も傷つける。
「ぶっ飛べッ!!」
そして、身体を回転させて遠心力を乗せて少年を最後の壁に叩きつける。
「かッ………ハァッ………!!」
吐血するヨミヤは、壁を破壊し―――
そのまま外へ放りだされた。
「やっちまった………」
シルバーは、対象がまさか外に出るとは思わず、急いで追いかける。
「しかも、あの方向は―――式典がやってる広場の方じゃねぇか!!」
※ ※ ※
「あのオッサン、ずっと喋ってんな」
「アルドワーズ………だっけ? この街の統治貴族っていうなら、こんな日には喋らなきゃいけないんじゃない?」
「統治貴族………元の世界でいうところの市長みたいなものだっけ?」
タイガ、アサヒ、加藤がそれぞれ『賢者の柱』前で行われている演説を聞いていた。
「………」
そんな中、茶羽は一人茫然としていた。
「………? セイカ、どうした??」
そんな恋人の様子に気が付いた加藤が、茶羽に声をかける。
「あ………えっと………」
茶羽の手には、『リーニ湖』で拾った仮面が握られている。
すると、茶羽の様子に気が付いたアサヒも、茶羽の体調を気に掛けようとして―――彼女の手にある仮面に視線をおとした。
「あれ、セーカ………こ、これって………」
「うん………この仮面に追跡の魔法をかけた人を逆探知してたんだけど………」
茶羽の言葉に、加藤も、タイガも、その仮面に―――否、仮面から立ち上がる煙のようなものが示す先に視線を送っていた。
「アルドワーズさんを………示してる………」
その時だった。
ドンッ!! という轟音と共に、『賢者の柱』の最上階から何かが壁を破壊して出てきた。
「「「きゃぁぁぁぁ!!」」」
突然の出来事に、民衆の間で悲鳴が上がる。
「なんだ………!?」
タイガ達勇者一行の視線が、仮面から、『賢者の柱』に集まる。
「ぁ………」
そして、アサヒは見つけた。
道を違えてしまった恋人が―――千間ヨミヤが落下してくるところを。
「ヨミ………?」
閲覧いただきありがとうございます。
新年あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。




