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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
奈落の復讐者編
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渇望の番人 イチ

 薄暗い一本道の坑道。


 角が生えた者や、牛の頭蓋の者など、様々な種類のスケルトンが中を闊歩していたが、今のヨミヤには敵ではなかった。


 加えて、単純な構造の内部のおかげで、迷うことなく進むことができている。


 万が一の間違いがないように、慎重に進んでいたヨミヤだったが、あまりの余裕さに走って駆け抜けることも視野に入れていると―――


「く、くるなッ!! くるんじゃねぇぇぇ!!!!」


 人の声がした。


 それも、慌てているかのような、焦っているかのような男の声だ。


「………」


 一刻も早くこの洞窟を抜けたいヨミヤは、ほんの一瞬だけ放置する選択肢が脳裏に浮かぶが、生憎、それを選択するには、『普通』の人間すぎた。


 声の主の元までおよそ三十メートルはあるだろうか。


 碌に目算もできないまま少年は一本道を駆け抜ける。


 そして、少し開けた広間に飛び出る。咄嗟に目の前に広がる状況を確認する。


「やめろ!! やめてくれぇぇぇぇ!!!!」


 ヨミヤから見て左の壁際にスケルトンの群れが確認できた。さらに、悲鳴のような叫びは、その奥から聞こえる。


 使える魔法は、『救出対象が目視できない』という理由で、使用を控える。そして、それらが使えないということは、ヨミヤにとれる方法は一つ。


「剣なんて振ったことないけどなっ………………」


 少年は、剣を構え―――突貫した。


「オオオオォォォォォオォオオオ!!」


 『身体能力補正』を得てから初めての疾駆。あまりの速度に、認識が追い付かず脳が困惑しているが、それを堪えて、剣を横なぎに振る。


 それだけで剣から衝撃が発生し、目の前の数体が吹き飛ぶ。


 骨の断面は荒く、『切断した』というよりは『叩き折った』という表現が近いかもしれない。それを底上げされた認識能力で自覚するが、それでも、ヨミヤは構わなかった。


 少年は返す剣を一歩踏み出しながら、再び一薙ぎ。


「あれか………」


 薙ぎ払われ、自然に開けた視界。その先に、悲鳴の主と思わしき()()()()の男が確認できた。


 遠くから見てもわかるガラの悪さに、『助けなくてもいいかな』なんて脳裏に囁きが落ちたが、頑張って一歩を踏み出し、加速した。


 一瞬前まで自分がいたところにスケルトンの剣が殺到しているのを尻目に、ヨミヤは男の元までスライディング。


「舌ぁ、噛まないで!!」


 そして、男の脇腹に手を回すと、そのままの勢いで真上に跳躍。そして、天井付近で壁を蹴りつけて軍団の真後ろへ躍り出る。


「こっからはオレの時間だ」


 そして、落下中に火球(レーザー)を三つ展開。『鉄踊り』を消し飛ばしたものよりも少しだけ小さい熱線は、スケルトンの群れを跡形もなく灰に変えてしまった。



 ※ ※ ※



「ホントに感謝っすアニキ!!」


 あろうことか、このモヒカンの第一声はソレだった。


「ちょちょちょちょ………アニキになった覚えはない………っていうか………」


 タイガとはまた違ったベクトルのヤンキーに、ヨミヤ若干引き気味に距離をとる。


 タイガはなんというか、義理堅いし、ヤンキーのわりには物腰も柔らかい方だとヨミヤは思っていた。しかし、目の前のモヒカンはなんていうか―――言葉を選ばず言えば『小物っぽい』。


 しかし、ヨミヤのような一般人にはむしろ、こちらのほうが怖かったりするのだ。


「いや、アニキっす!! 命を助けていただいたんですから、オレはもうアニキの舎弟っす!!」


「命を助けたのなんてどうでもいいから………アニキはちょっと………」


「それにしても、アニキ超つえーっすね!! 魔法ってあんなバンバン撃てるんすね!! なんか魔法ってもっと難しいものかと思ってました!!」


 正解だ。ここまで簡単に撃つほうがおかしいのだ。


 ヨミヤ最早自分の願いは聞き入れてくれないものだと判断すると、ため息を我慢して口を開く。


「えっとそれで、あなたは………?」


 金髪のモヒカンは、その瞬間、ピンと正座し、ヨミヤよりもなお大きい身長を収縮した。


「オレはモーカンっす。―――じつは、()()()仕事中に魔族に襲われたんす。仲間はそれぞれバラバラに逃げ出して………そしたら魔族の奴、オレを追いかけてきやがって………」


 それからは最悪だったという。入口にいた強力なスケルトンに魔法で殺されそうになりながら逃げて………それでも、魔族は執念深くモーカンを追いかけてきたという。


「お、オレ………スケルトンを蹴散らしながら追いかけてくるあの女が怖くて怖くて………」


 モーカンはそれから、恐怖の場面を思い出したのか、地面に顔を伏せて、ガタガタと震えだした。


 しかし、ヨミヤはそんなモヒカンに一切意識をむけなかった。


―――本当に地上につながっている………!!


 そう、今の話で、地上への脱出が可能であることが判明したのだ。もはや、モヒカンとか魔族とかスケルトンなんてどうでもいい。


 ヨミヤが希望に目を光らせていると―――



「おい」



 黒く濁り、淀んだ女の声がヨミヤに覆いかぶさった。

閲覧いただきありがとうございます。

ドラクエは8が一番思い出深いです。竜神王めっちゃ戦いました…

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― 新着の感想 ―
[良い点] わかりやすい特徴の良いキャラですね。ノリが好感持てます。リアルでは会いたくないけど。女もまた良い味が出ていそうで、とても楽しみです。リアルでは会いたくないけど。今回もとても面白かったです。…
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