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Odd :Abyss Revengers  作者: 珠積 シオ
無窮の記憶編
103/270

慰霊の式典 イチ

「皆さん、おはようございます。私、『メフェリト』統治貴族―――アルドワーズ・ネーロでございます」


 慰霊の式典当日。


 『賢者の柱』を背後に置き、街一番の広場で、特別に設置された豪奢な台の上で『老紳士』は宣った。


「『魔法都市襲撃戦争』から早二十年。………当時の混乱は、私もよく覚えています」


 空は快晴。


 誰も、何にも恨まれるはずのない空模様。


 その下で、『メフェリト』の住人はアルドワーズの言葉に耳を傾けた。


「魔族の攻撃だけではない、『ウーズ・ブレーク』の出現で、魔族も、人も、等しく犠牲を払いました」


「我々はその時学んだのです。―――隣人がどんなに理解できずとも、争ってはいけない」


「争えば、悲劇の渦は愛する人を飲み込むのだと」


「我々は戦うための『魔法』を探求しているのではない」


「我々は生活を豊かにするための『道具』を開発しているのだと」


「その教訓を胸に、『四偉人』を先頭に我々は日々進歩してきた」


「今一度、我らは教訓を胸に刻みなおし―――そして、進み続けましょう!!」


 アルドワーズの後ろに控える『四偉人』の残り二人―――セラドンとナーガマ―は、『老紳士』の演説に拍手をしていた。



 ※ ※ ※



「なんか、タイミング悪い時期に着ちまったみたいだな」


 街の外、慰霊の式典に足を運んだ者達に囲まれ―――タイガやアサヒ『勇者一行』は街に入るための検閲待ちをしていた。


「セーカ、この街って………」


「魔法都市『メフェリト』だね。帝国でも、帝都に続いて二番目に栄えている街。―――なんでこの街に殺人犯と繋がってる人間がいるのかわかんないけど………」


「スゲー………なんだか日本思い出すなぁ………」


「なんでこんな混んでんだ?」


「―――そこら中から聞こえるのは、なんか『慰霊の式典』をしてるって」


「ふーん………『慰霊』ねぇ………」


 そんな会話をしていると、やっと検閲の番がタイガ達に回ってくる。


「荷物の検査と、人相の確認をします。―――顔を良く見せてください」


 検閲は、手荷物の検査と、重罪人が街に入り込まないようにするための人相のチェックの二つのみだった。


 タイガ達は、一人ずつ荷物を守衛に見せ、彼らとよく目を合わせる。そして―――


「―――はい、ではお入りください」


 ほんの数分で検閲は終わり、晴れて四人は街に入ることができた。


「………お前ら」


 すると、少しだけ眉をひそめるタイガが全員を呼び止めた。


「荷物………盗られたもんはないな?」


「………? ええ、特に私は」


「うん、俺もセイカも大丈夫」


 タイガの確認に、軽く荷物を確認しながら各々問題ないと伝える。


「どうしたの突然」


 タイガの謎の質問に、アサヒは首をかしげている。


「いや、検閲のしてた奴………俺らの顔見て、少し様子が変わったからな。なんとなく嫌な予感がしたんだよ」


「気のせいじゃないタイガ君?」


「………だといいけどな」


 加藤の能天気な言葉に、後頭部を掻きながらタイガは答えた。



「アルドワーズ様から通達のあった者達―――勇者一行が現れました」


「そうか………あの方はこの事態を見越して勇者のことを調べさせたのだな」


 守衛室。


 そこは、窓越しに入ってくる者達の顔を覗ける場所。


 人が数人しか入れない室内で、帽子で獣の耳を隠したアザーが外を見つめる。


「勇者には尾行を。居場所を常に私に伝えろ。―――他の者は取り急ぎアルドワーズ様に報告を」


 場面を切り取られ、バラバラの役者は、ようやく一つの壇上へ()()()()()していた。


 悲劇か、喜劇か。


 ハッピーか、バットか。


 誰も、誰も、その先を知ることはない―――

閲覧いただきありがとうございます。

最近、食生活が乱れがちです。

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