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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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クラブ活動でも目立ちたくない⑦

魔法探求会の最初の活動は無属性魔法の習得に決まった。

といっても僕が創らない事には他の皆に教えることも出来ない。

ロゼッタはド派手な魔法がいいと言っていたし、創るとしたら攻撃魔法だ。

しかし魔力量の事もある。

全員がまったく同じ魔力量でもない為、あまり大きな魔力を使うような魔法はダメだ。


「えっとさ、創るのはすぐ出来るからいいんだけど試す場所が必要になる。どっか人目に付かない場所とかない?」

これだけ爵位の高い者ばかり集まっているんだ。

僕は魔法を創るんだから、場所くらいは提供してもらいたい。

そう思って提案するとすぐに返答があった。


「それならアタシの家に来なさいよ。魔法の試し打ちが出来る訓練場があるから。」

ロゼッタの一言でクルーエル家にお邪魔することに決まった。

しかし流石に今すぐという訳にもいかず、3日後の休日に行くことに。




「おはよう!」

「おはよう、早いなルーザー。」

3日後、待ち合わせ場所に行くと既にルーザーとエリザさんが到着していた。

皇族を待たせてしまって申し訳ないのか、ジンとミアは平謝りしている。

僕はというと、とりあえず手を上げてごめんと謝っておいた。

これは皇族軽視している訳ではなく、あくまでルーザーと友達であり対等なやり取りを好んでいるからやっているだけで、僕の意思ではない。


皇族を護衛もなしに外出させる事は出来ないのか、2人の護衛が張り付いていたがその2人は僕を射殺すような目線で見てくる。

敬うべき相手にこんな軽い謝罪をする僕が許せないのだろう。

ただ、ルーザーやエリザさんがいる手前何も言えず睨むだけだった。


少しばかり雑談しているとゾロゾロと集まってきた。

全員が揃ったところでクルーエル家が用意していた豪華な馬車に乗り込む。

しかし乗り込もうとした所でルーザーから待ったがかかった。


「あ、マリス!せっかくならこっちに乗っていかないかい?」

ルーザーとエリザさんは皇族専用馬車に乗るらしい。

馬車に取り付けられた皇族の家紋に太陽の光が反射し輝いている。

そんな馬車に乗れと?

罰ゲームでも乗りたくない。


「い、いや僕はロゼッタの方に、」

と言った所でロゼッタに遮られる。


「あーごめん。こっちもう人数いっぱいだわ。いいじゃない、皇族専用馬車なんて望んでも乗れないんだから。」

それだけ言い捨てるとロゼッタはサッサと自分の馬車に乗り込んでいった。


乗らないという選択肢を無くされ、肩を落としながら皇族専用馬車に乗る。

車内は広かった。

自分の家でも馬車は使うが、車内に絨毯など敷かれていないしワインセラーらしき棚も備え付けられていない。


「す、凄いんだなルーザーの馬車って。」

「私の、という訳ではないよ。父上が私達一人一人に用意させた馬車だからね。」

それを自分の物というんです。


揺れを感じさせない馬車は目的地へと走り出す。

無言でずっといるわけにもいかず話題は僕の話になった。

表向きは魔法創造が少し出来る学生ということにしており、護衛がいても問題はない程度の話題だ。


「それにしてもマリスはどうやって魔法を創っているんだい?」

「どうやって……か。うーん、なんかこんな魔法あったらいいなって思ったら出来るかな。」

護衛は口を開くことはないが僕をとんでもない目付きで見ている。

例えるとしたら、ドン引きしている、のだろうか?


「そ、そうか。凄いな。私には出来る気がしないよ。」

「いや、案外出来るかもよ。やってみたら、あ、出来た、みたいなこともあるかも。」

「無理だよ、私にはそんな才能はない。」

やらないうちから出来ないというのはダメだぞ。

意外と隠れた才能というものはどこに潜んでいるか分からないのだから。


「私も出来る気がしませんわ。確かにこんな魔法があったらみたいなことは考える事がありますが、それを実現させるというのは普通の才能ではできませんわ。」

エリザさんも出来ないらしい。

意外と皇族の血を引いてるのであれば凄い才能とかありそうなのにな。


「ルーザーとエリザさんは何か得意な事ある?」

僕は自分の話題から違う話題に切り替える。

するとルーザーは少し考え込んでから口を開く。


「そうだなぁ、私は取り繕うのが得意かもしれない。」

取り繕う?

何を取り繕うのだろう?

「まあこんな所でする話でもないかもしれないけど、皇族って案外忙しいんだ。色んな貴族と顔を合わせて話すことが多くてね。それでやっぱり笑顔とは裏腹に何か良からぬことを考えて近付いてくる輩も多い。そういう貴族に嫌な顔を見せるわけにもいかないだろ?だから態度を取り繕うんだ。そんな事を何年もやっていると得意になるってものさ。」

護衛は目を瞑り聞かなかった、という態度を取っている。

確かに今のは聞いてはならない会話だろう。

僕もまさかルーザーがそんな事を言い出すなんて思いもしなかった。


「へー、皇子ってのも楽じゃなさそうだな。」

「そうなんですよ!マリスさん!聞いてくださいよ!こないだ皇族と招待された貴族のみでのパーティがあったんです!私これでも16歳なんですよ?なのに脂ぎった肌のニヤついた顔をした貴族ばっかり私に話し掛けてくるんです!!それもイヤらしい目付きで!私に何を求めてるのか知りませんが自分の娘と同じくらいの女性に欲情するというのもどうかと思うんです!」

エリザさん、案外溜まってたんだろうな。

これでもかというくらいにパーティでの愚痴を披露してくれた。

護衛はもう勘弁してくれと言わんばかりの表情だ。


「大変ですね、皇女も。まあでもそういう時こそ無関心を貫くんです。これ、僕の処世術ですよ。」

「無関心……なるほど。勉強になります!今度イヤらしい目付きで近付いてきた貴族にやってみますね!」

おっと、それはまずいぞ。

純粋無垢な皇女にそんな事を教えたのは誰だ、なんて話になれば大変なことになる。

護衛もなんてことを教えてくれたんだと目で訴えかけてくる。

弁解しなければ。


「あーいや、エリザさん。これはあくまで僕の処世術です。やっぱりその人にあった処世術を身に着けるべきです。人のマネばかりしてても人は成長出来ませんから。」

我ながら良いこと言ったと思う。

しかしエリザさんは感心したような目付きで僕を見ていた。


「凄いですわ!!同じ歳なのにしっかりしていらっしゃるのですね!もっと私に色々教えて下さい!」


やっぱりこの馬車に乗るべきじゃなかった。

面倒な事になってきたぞ。

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