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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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龍族が合流しても目立ちたくない⑤

「シルビア殿下……正直助かりました。私一人では限界が近かったものですから。」

「そうだろうな、まずはコレを飲め。」

シルビアは腰に巻き付けている小さなバッグからポーションを取り出した。


「魔力回復薬だ。全魔力とまではいかんが多少は回復できる筈。」

「高価な物を……すみません、有り難く頂きます。」

ゼノンは後数回魔法を使えば完全に魔力が尽きていた所だった為、シルビアに心から感謝した。


「ああ、それと余の事は殿下を付けなくて良い。既に王国は合併され連合国となっているからな。シルビアと呼べ。」

「左様ですか。ではシルビア殿と。それよりもどちらへ行かれていたのですか?共に前線へも赴く予定だったはずですが……。」


本来はゼノンと行動を共にする筈だったのだが、すぐにシルビアは後から追い付くとゼノンに伝え別行動を取っていた。



「む、ああ済まないな。余の部下達に黙祷を捧げていた。」

「例の黒騎士隊ですね?」

シルビアは頷く。


部下想いな王族とは珍しいとゼノンは驚く。

たかが前線の兵が死んだだけでそこまで想いを馳せるなど、魔族ではまず有り得ないだろう。


死ぬのは弱いから、そんな概念が魔族の心の奥底にへばり付くようにして残っている。

ゼノンもまたその考えは正しいと思っている。



「とりあえず雑談はここまでだ。なんだあの者達は?見るからに歯応えがありそうではないか。」

「あれは一級冒険者だそうです。全員が曲者揃い、使用魔道具も多岐に渡ります。」

「ふむ、丁度よい。魔力が戻り次第援護しろ。余が道を切り開く!」


ゼノンは口を開いたまま固まった。

援護に来たのではないのか、と。

何故こちらが援護する側なのだと。


「お待ちをシルビア殿。私が前に出てシルビア殿が援護――」

「そんなものつまらんではないか。いいからさっさと魔力を回復しろ。余が時間を稼いでやる。」

有無を言わさぬシルビアの圧に押し負けたゼノンは黙ってポーションを口にした。



「へっ!一人増えたからって数的優位は変わらねぇ!やるぞお前ら!」

「ええ!ごつい大剣を持っていても近付かれなければ何の意味も――」

一人の冒険者が言い終わらぬ内にシルビアは一瞬で近付いた後大剣を横薙ぎに振るった。



女冒険者は口を開いたままの状態で首が飛んだ。



「なっ!?」

「反撃しろぉ!!」

「リサをよくもぉぉ!!」

冒険者達は掌をシルビアに向けると魔法を唱え出す。


「遅い!」

また別の冒険者の首が飛んだ。


剣士にとって近付く事が出来なければ一方的に嬲られて終わる。

しかしシルビアレベルの練度になれば、一瞬で接近する事など容易であった。



「この程度で一級冒険者だと?クククッ笑わせる!!咲き誇れ!桜花剣!!」

桜の花が舞い散るが如く、冒険者達の鮮血が宙を舞った。


「コイツ強いぞ!!全員防御系の魔道具を起動しろ!使い切りのヤツでも使え!」

「惜しんでたら死んじまう!!」


各々冒険者達は身体強化や障壁などの防御手段を取った。

しかしシルビアの大剣は障壁すらも容易く斬り裂いていく。


「フハハハハハ!!!弱い!弱いぞ!!この程度か!!」

「シルビア殿!」

後方に控えていたゼノンから合図が飛ぶと、シルビアはすぐに飛び退いた。


死を司る死神の鎌(デッドリーサイズ)!」

首を刈り取る大鎌の刃が冒険者達へと襲い掛かり、みな同時に絶命した。



「ほほう、なかなかやるではないかゼノン。」

「お褒めに預かり光栄です。ですが今ので魔力は使い果たしました。一旦本陣へと退きましょう。」


強力な魔法になると相応に大量の魔力を消耗する。

ゼノンは先程回復した魔力も殆ど使い果たしてしまい、これ以上の戦闘は不可能だと判断した。


「うむ、では下がれ。」

「行きましょう。」

「ん?余は残るぞ。お前だけ戻れ。」

「い、今なんと?」


ゼノンは耳を疑った。

シルビアは戦闘狂だと前から聞いてはいたが、正直ここまでとは思っていなかった。


「いえ、貴方は仮にも王族ですよ。ここに置いていけるはずありません。」

「構わん!余がいいと言えばいいのだ。」

何という強引さ。

ゼノンはこれ以上何を言っても無意味だろうと、踵を返し一人だけ戻る事にした。


「魔力が回復次第、前線に戻って来ます。それまでどうかご無事で。」

「フッハッハ!誰に物を言っている。余に敗北はない!!」


ゼノンは仕方ないと全速力で本陣へと急ぐ事にした。



――――――――

ルーズと雷天ジェイドの闘いは既に決した。

血だらけで這いつくばるルーズを見れば一目瞭然である。



「身を引け。これ以上は死ぬぞルーズ。」

「そ、ういう……訳にはいかないな……。」

息も絶え絶えにルーズはムクリと起き上がった。


全身が悲鳴を上げている。

血が滴り落ち、ルーズの足元は真っ赤に染まっていた。


ジェイドは彼に慈悲を与えるつもりであった。

同じ国を代表する者として、同じ境遇にいた事もあってか親近感を覚えていたからだった。



「僕が……退いたら、君は……どうする?」

「このまま進軍し本陣を叩く。」

「だろう、ね。なら退けないな。」

震える手で剣を取るとジェイドに剣先を向けて構えた。



「……やる気か。次の一撃で死ぬぞ。」

「さて、それはどうかな?」

ルーズの見た目は満身創痍だが、目はまだ死んでいなかった。


「僕には仲間が、いる……君は一人だけ。勝敗は覆るよ。」

「どこにいる?お前は今たった一人じゃないか。悪足掻きはやめたまえ。」

ルーズの言う仲間とやらは周囲にいない。

気配も感じ取れずただの強がりだとジェイドは憤る。


「もういい……せめて最期くらい痛みなく殺してやる。堂々たる雷神の一撃(ライオニックサンダー)。」

ルーズを確実に葬れる威力の魔法。

ジェイドが魔力を十分に乗せた一撃。


ルーズへと一直線に迫ると轟音が響き渡った。

もはや逃げる事も出来ぬ程に疲弊していたのか、ルーズは立ったままジェイドの魔法を真っ向から受けた。



「……跡形も無く消え去った、か。」

ジェイドは小さく呟く。

高電圧の雷撃により、塵も残さず消え去った――

ように見えたが目の端に何者かの姿が映った。



「危ない所ねルーズ。私が間に合ったから良かったものの……。」

「あ、ああ来てくれたか。僕は信じていたよサフィー。」

ルーズに迫る雷撃よりも素早くサフィーが彼を救い出していた。



前線でこれだけ戦闘が長続きすればサフィーにも感知できる程であった。

すぐさま持ち場を部下に任せ駆け付けてみれば、まさに今ルーズが殺されかけているのが目に映った。


サフィーは脚のみに全力で強化魔法を掛けると、一気に駆け出す。


片腕でルーズを下から掬い上げるようにして担ぎ、雷撃が放たれる寸前でその場から離脱した。



「貴方が苦戦する相手なんて――ああ、なるほど。これは厳しいわね。」

サフィーが敵へと目を向けると、ジッと二人を見据えるジェイドと目が合った。

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