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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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大陸間戦争でも目立ちたくない⑨

僕達は最高速で海を渡り、一日足らずで帝国の大地へと降り立った。

レギオンさんは疲労困憊で動けなくなっていたが、今は介抱している暇もない。


僕は全員を対象に帝城へと転移した。



出発時、飛び立った中庭に転移してきた僕らはあまり代わり映えのしない帝城を見て笑みが溢れた。


「一月以上も離れていたというのに、随分と懐かしく感じるものだな。」

クレイさんもしみじみと帝城を見上げ呟く。


しばらくすると巡回していた警備の者が僕らを見つけ、ちょっとした騒ぎになった。

侵入者と見間違えたらしい。


僕ら一行はすぐさま謁見の間に連れて行かれ、皇帝と面会する事となった。

レギオンさんだけは疲労が明らかに表情に出ており、いまにも寝てしまいそうだ。



「長旅ご苦労であった。して、調査結果としてはどんな感じかね?」

「それですが陛下。すぐに港町カンデラに軍隊を送って下さい。」

「ん?まてまて、何がどうなったらそんな話になるのだ。」

「今すぐにです。事は一刻を争います。話はその後でも出来ますのですぐ手配をお願いします。」

クレイさんの有無を言わせぬ言葉に陛下もタジタジである。


だがクレイさんの目が冗談を言っているように見えなかったのか、陛下は宰相を呼び付け指示を飛ばした。


「港町カンデラに兵ですと?何か問題でもございましたか?」

「理由は後で言う!急ぎ兵を送り込め!!」

宰相は慌ただしく声を張り上げながら去って行った。


「さて、理由を話して貰おうかクレイ。超大陸で一体何があったと言うのか。」

陛下は玉座へ座り直すと、クレイさんを真正面に見据え真剣な表情で問い掛けた。


クレイさんは僕らと視線を交わし、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「陛下、超大陸は数日後にこの国へと攻め込んで来ます。」

「何だと!?なぜそんな事になる!」

「邪神の考える事は分かりません。ただ強力な兵器と大軍が今も押し寄せて来ています。」

「すぐにグロリアを呼べ!!同盟国からも兵を送ってもらわねばならん。十二神を総動員する。」

帝城はとても慌ただしくなった。

僕らが邪魔になっても困るので、一旦会議室へと避難する事にした。



「まあこうなるだろうね。僕も急いで本国に戻らないと。五聖剣の力も必要だろう?」

「ああ。法国からの増援はルーズ殿に任せる。マリス君、連合国に跳んでシルビア第二王女とレオン王子を連れてきてくれないか?」

僕は頷き、すぐに行動を開始した。


転移魔法が扱える者は帝国ではグロリアさんと僕しかいない。

転移によって連れてこられる人員は限られているが、何もしないよりかはマシだ。



せめて友人達と会いたかったがそんな暇もなさそうで、僕は連合国へと転移した。




連合国王城の謁見の間で、いきなり空間に歪みが生まれ僕が現れたからかその場にいた人達は目を剥いて固まってしまった。


瞬時に見てる景色が切り替わる感覚はまだどうも慣れそうにない。


ふらつく足でなんとか踏み止まると、周囲に目を向ける。


謁見の間で何か大事な話でも行われていたのか、丁度いい所にシルビアさんとレオンがいた。

もちろんミカ女王陛下も。


ついこないだまではミカ第一王女だったが、連合国となった今彼女をそんな呼び方する訳にもいかないのだ。



「む、いきなりじゃないかマリス。どうした、緊急事態でも起きたか?」

レオンは勘が鋭いな。

これなら話も早そうだ。



「探す手間が省けてよかったよレオン。急いで僕と一緒に帝国へ来て欲しい。」

「待て待て。流石に理由もなくこの国を離れるわけにいかん。せめて理由を言え。それといつの間に帝国へ戻って来たのだ。超大陸へと行っていたはずではないのか?」

説明が面倒くさいから端折りたいんだけどなぁ。

でも仕方ないか。


「じゃあ端的に言うけど。超大陸が攻めてくる。全力で防衛しないと帝国どころか周辺国も全て滅ぶよ。」

「なに!?それを早く言え!!」

だから端的に言ったじゃないか。


「その話、本当かマリス。」

「あ、はい。出来ればシルビアさんにも来て欲しいんですが。」

「……その話が本当であれば今ここでしていた話などよりそちらを優先した方が良さそうだ。すぐに出立の用意を!余とレオン、それと数名を一緒に転移させられるな?」

「出来ます。できれば強力な戦力が欲しいなーって感じです。」


シルビアさんは即座に周囲の兵士へ通達し、各所へと連絡を入れる。

ミカ女王とマゼラン王もいるところを見るに、恐らく大事な会合でもあったのかな。



1時間ほど待たされ、準備が出来たからと呼ばれた時には既に謁見の間へと彼らは集まっていた。


シルビアさん、レオン、グランさん、エマさん、ミモレットさん、と錚々たるメンバーだった。


「それと彼も連れて行って欲しいとの事だ。」

レオンの後ろからは何処かで見たことのある魔族が立っていた。

なんか見覚えがあるようなないような。



「ゼノン・スティアードです。ほら、亜人国で食堂の店長をしていた――」

「あー!思い出しました。あの時はとても美味しいご飯を頂きました。」

「そうです。確かフィンブル様とおいででしたね。それはそうと私も微力ながらお手伝いさせて頂ければと。」

ゼノンさんは伯爵位の高位魔族でありながら、亜人国で食堂を開いていた方だ。

しかし何故急に手を貸すだなんて言い出したんだろうか。


「フィンブル様も戦うのでしょう?ならば私もこの力を存分に振るいましょう。長らく戦闘からは遠ざかっていたので少しばかり腕は落ちているでしょうが、そこらの魔導師には負けないかと思います。」

「こちらとしては少しでも戦力は多い方が助かります。」


じゃあ連れて行くのは六人かな?

これ以上増えるとなると割と僕の負担も大きくなる。



「他の兵士や龍族の方は俺が引き連れていく。籠に乗せて俺らが飛べば後から合流出来るからな。」

龍王国の副官、ベルゼルガさんの申し出はとても有り難い。

後から合流してくれるだけでも、十分活躍してもらえるだろう。


「ありがとうございます。じゃあ転移で行くのは六人でよろしいですか?」

「ああ、構わん。ベルゼルガ殿、後は頼んだぞ。」

「任せろシルビア王女。俺がしっかり全軍引き連れて行ってやるからよ。龍の翼は世界で最も速い。すぐに追いついてやる。」

なんと頼もしい言葉なのだ。

龍族が協力してくれるというのは、百人力である。


「では、行きます。舌を噛まないようにして下さい。」

僕はベルゼルガさんやミカ女王、マゼラン王に頭を下げると六人を連れて、帝城へと帰還した。

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