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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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大陸間戦争でも目立ちたくない②

「て、転移魔法だと!?」

レオニスさんはリズリアに詰め寄り声を荒げる。

まあその反応も仕方のない事である。


転移魔法の使い手は世界に数人と言われており、帝国で転移魔法が使えるのはグロリア・メイスランド子爵ただ一人。

……今は僕も使えてしまうのだが。


まさか十悪にもいたとは思わず、レオニスさんは声を荒げたのだった。



「近いわよ!燃やされたいの!?」

「む、確かに。」

リズリアに思った以上に近付き過ぎたのが自覚出来たのかレオニスさんはすぐに彼女から離れた。



「転移魔法が使えるなんて……なんで十悪に身を落としたんだろう。」

「さあ?アイツの考えはよく分からないし。」


転移魔法が使えるのであればどこに行っても重宝されるはず。

それなりの待遇と富は得られるだろう。

なのにも関わらず十悪になってしまったのには何か理由があるのだろうか。


僕はとても気になってしまい夜も眠れない。

……というのは嘘だが、勿体ないなとは思う。



何か目的があるのだろうが、深く考えても分からないので一旦置いておく事にした。



「というかアンタ達こそなんでこんな所にいんのよ?」

「我々は……この大陸を調べる為だ。」

「調べる?ああ、技術を盗みたいとか?」

「いや、戦争で勝つために。」

「はぁ?……あーそういう事ね。いずれ起こりえる大陸間戦争でしょ。無理よ、アンタ達じゃメガラニアに勝てないわ。」


リズリアは肩を竦め、ため息を付く。

何やら彼女には僕らが必ず勝てないと言える根拠があるらしい。



「いや、そうとは限らんぞ。こちらには虹色魔導師がいるのだからな!」

ちょっと気恥ずかしいけど、その通りだ。

でもそれは相手も同じ条件のはず。

軍事施設で出会ったソフィアは記憶に新しい。



「紛い物の力では本物には勝てん。それにこちらにはフィンブル殿とレギオン殿もおられる。万が一にも負けはせんはずだ。」

「そんなもの所詮は個の力でしかないわ。メガラニアには数の力があるし、どう足掻いても勝てるビジョンは見えないわね。」

「数の力?確かに軍事技術は目を見張るものがあるが、それほどまでか?」

「あら?貴方達知らないの?この国が誇る武力を。」

リズリアの話しぶりだと、僕らの知らない兵器でもありそうな感じがする。



「戦艦の事を知らないなんて……そりゃあ勝てるだなんて世迷い言も吐けるわね。」

「戦艦……とはなんだ?」

「僕も聞いたことがないです。」

戦艦、名前の響きから察するに船だろうか?


「戦艦は文字通り戦う艦よ。もうそれはとんでもないわ。よくあんな巨大な物体が海に浮かぶなと感心したくらいね。」

「そ、そんなに凄いのか?」

「凄いなんて言葉で片付けていいのかしらねぇ?ま、貴方達も頑張れば一隻くらいなら沈められるんじゃない?」


リズリアは目を細め嫌らしい笑みを浮かべた。

勝ち誇ったかのような表情を見せるということは彼女はメガラニア側に付いたのだろう。


「おっと、これ以上は言えないわね。ま、頑張りなさいな〜私はこっち側だから戦争が始まれば貴方達とも戦場で会うかもしれないわねぇ。」


リズリアは振り返ると僕らに背を向け目的の場所へと歩き出した。

不意打ちされるかもしれないとか考えないのだろうか。



「……敵に背を向けるとは大胆な奴だな。」

「そうですね。あの余裕の裏には何があるのやら。」

「戦艦か、少し調べてみるか。この国にも確か図書館があったな。この国独自の技術かもしれん。蔵書を漁ってみよう。」



結果から言うと、何も見つからなかった。

まあそれも当然の結果と言える。

そもそも軍事機密を民間人が触れられる本に記載しているはずもなかった。



「この後はどうしますか?」

「そうだな……十悪こちらの国に味方するとなれば脅威度は上がる。リズリアの歩いて行った方向を覚えているか?」

なるほどなるほど。

どうやらレオニスさんは十悪の考えを知ろうとしているようだ。


「もちろん覚えています。確かあっちでしたよね?」

僕はリズリアの去った方向を指差した。

今僕らはその辺にあったレストランなのだが、リズリアと別れた場所は近い。



「ふむ、食べたら行こうではないか。奴らの住処があるかもしれん。それと奴らがどうやってメガラニアの者達に取り入ったのかが気になるしな。恐らく引き入れた人物がいるはずだ、ソイツも一緒にいるだろう。」


僕らは適当な所で食事を切り上げ目的の場所へと向かった。

既に辺りは日が落ち闇が包んでいる。

深夜と言うにはまだ早いが、人の通りは少なくなっていた。



「ここ、か?」

リズリアの向かった先は僕もよく知っている店であった。


僕の目の前には魔道具店の看板がある。

それはこの大陸に来て初めて入った魔道具店であった。


「ここって……。」

「ん?知ってるのか?」

「はい、首都セントールに入って最初に行った店です。」

変な所で繋がりがあったものだ。

とはいえまだ確定した訳では無い。

もしかしたらリズリアは魔道具を買いに来ただけの可能性だって拭えないのだ。



「入ってみるか。」

店の中からは明かりが漏れており、未だ店は開いている事を示していた。


扉に近付くと勝手に開く。

まあこれは一度見たからもう驚かないけど。


しかしレオニスさんは初見だったせいで、飛び退いて驚いていた。



と、まあ入る前から一悶着あったが、再度扉に近付き店内へと入店する。


夜もだからかそれとも閉店間際だからか、僕らの他に客はいなかった。



「店員すらもいないのか?」

「恐らく奥に引っ込んでるんじゃないかと。もう店仕舞いだったのかもしれませんね。」


しばらくしたら出てくるだろうと、僕らは棚に並べられている魔道具を物色し始めた。


やはり帝国には売ってない代物が多く、見ているだけで面白かった。



「こんなにも多くの魔道具が……ふむ、これなんか良さそうじゃないか。」

レオニスさんが手に取った物は、剣の柄だけのような形の魔道具だった。


「多分それ魔力を流すと刀身が出てくるやつじゃないですか?」

「なに?試してみるか……オオッ!!」

勢い良く飛び出した刀身に驚きながらも、レオニスさんはほんのり光る刀身をマジマジと見つめる。


「これは凄いな。鉄の剣と打ち合ったらどうなるのか――む?」

レオニスさんが何かを言い掛けて止まる。

店の奥に視線を移しじっと見つめると、男性がヒョッコリと現れた。


「ああ、お客様。大変申し訳御座いません。奥にいたもので気付きませんでした。」

「いや、こちらこそ店が開いていたもので勝手に入って物色していたのだ。」

「来て頂いて早々申し訳ないのですが、実はもう閉店仕舞いをしておりまして……。」

男は本当に申し訳無さそうな表情で、頭を下げる。


「こちらこそそんなタイミングで入店してしまって申し訳なかった。」

「いえいえ、また日が高い時にでもいらして下さい。」

男はとても朗らかに笑う。

人の良さそうな見た目だ。


「すまないな。一つだけ尋ねてもよいか?」

「ええ、どうぞどうぞ。」

「ここに赤い髪の女が来なかったか?」


しかし、レオニスさんがそう言うと、途端に男の表情は凍り付いた。

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