決闘の時も目立ちたくない③
ガイから投げつけられた手袋を拾ってしまったマリスは今窮地に立たされていた。
剣を抜いていきり立つフェイルを、尊大な態度は崩さずそれを止めるカイル。
そしてその二人を牽制するかのようにリスティアが魔法陣を展開。
周りは棒立ち、あるいは座ったまま身動き一つできない生徒達。
ああ、数分前に戻りたい。
「拾ったなマリス。これで俺と決闘が決まった。ルーザー皇子、立ち合いをお願いできますか。」
「それは構わないけど、こんな所でやるのは感心しないな。お互い万全の状態で戦った方が後腐れなくていいだろうし、3日後、訓練場でやるのはどうかな?」
「分かりました。では3日後よろしくお願いします。」
流石にガイも皇子の言葉には反論できず、承諾し教室から出て行った。
「で?僕はどうすればいいんだ?決闘のルールもよく知らないんだけど。」
「私が教えて差し上げますわ。」
手を挙げたのはリスティアだった。
「マリスさん、まず決闘というものから教えましょう。」
要約すると、決闘は貴族同士でなければならない。
死ぬこともあり得る為滅多な事では決闘は行われない。
手袋を拾った時点で死は覚悟したとみなされる。
との事。
一昔前まではよく決闘は行われていたらしいが最近はめっきり減って、ちょっとした出し物のような扱いになるらしい。
確実に3日後ほとんどの生徒が訓練場に集まるのでは……。
「そして、大事なことがあります。負ければ相手の言いなりとなるか殺されるか、二択ですわ。」
だからこそ今では決闘をするものはほとんど居ない。
自分から仕掛けておいて負ければただのアホでしかないからだ。
普通の貴族であればそんなリスクを負ってまで決闘をしようとは思わないらしい。
「決闘時には契約魔法も使用されます。いわば逃げる事の出来ない枷をつけるのですわ。その契約に背けば死あるのみ。そんな恐ろしい事を3日後、貴方は行うのですわよ?」
「大変分かりやすかったです、ありがとうございました。では。」
「ですが、私が魔導師としての戦い方を教えてさしあげれば……ってちょっとどこ行くんですの!?」
話も聞けたしさあ帰るかと教室を出ようとしたらリスティアさんから手を掴まれた。
もう話は終わったと思ったがまだだったのか?
「なんでしょう?」
「ですから、私が魔導師としての戦い方を指南してあげようと提案したらすぐに貴方が出て行こうとするから手を掴んだのですわ。」
「はあ。」
正直もう帰りたい。
「貴方、死を恐れていないのかしら?」
「まあ、僕からは割と遠い存在ですからね。」
よく意味が分からなかったのかリスティアは首をひねる。
そのやり取りを見ていたロゼッタが急にプリプリしだした。
「はいはい、終わり!!!さっさと離れないさいよリスティア!」
「ちょっと!私はまだマリスさんと話しているのですよ?横から邪魔しないでほしいですわ!」
「なんですって!」
あ~あ~始まったよ。
リスティアさんも気の毒に。
プリプリしたロゼッタはうるさいししつこいぞー?
注目が2人に移った所でしれっと教室から抜け出し校門へと急ぐ。
前を歩く後ろ姿に見覚えがあった為、駆け寄って声を掛けた。
「ジン、ミア今から帰るのか?僕も一緒に帰るよ。」
「おわ!!お前!だからいきなり肩を叩くなって!びっくりするだろうが!」
つい友人達に遭遇すると肩を叩いてしまう。
「で?あれからどうなったの?食堂で揉めて、その後。」
「ああ、なんか決闘することになった。」
「「はあ!?」」
2人共ここ最近で一番大きい声だった。
一応今さっきあった出来事をかいつまんで話すと、2人共ため息をついた。
「お前さぁ、白い手袋を拾ったら決闘って常識だぞ?今じゃ平民ですら知ってるんだからな。」
「いやほんとにそう。マリスは抜けすぎ。目立ちたくないと言ってたのにどんどん目立っていくじゃん。」
そう、ミアの言う通り。
由々しき事態である。
「まあでも負けなければいいだけだよ。」
「それはそれで目立つけどな……。相手は伯爵家だろ?マリスが勝ったらその家は終わるんだぜ?目立たない訳がねぇ。」
負けても地獄、勝っても地獄。
あー受けなければよかったな。
今更嘆いても仕方ないが、3日後が憂鬱だ。
「で?どうすんだ?圧勝するのか、苦戦した風に勝つのか。」
「僕が負けるとは思ってないんだな。」
「負けないだろ……神獣すら一人で倒す奴がただの一貴族に負けるかよ……。」
そう考えれば少し気が楽になった。
よく考えれば、あの神獣より強い訳がないのだ。
ただ一応あんな奴でも三色魔導師だ、油断は禁物だな。
一級クラスに属しているのだから十分エリートには違いない。
「もし賭け事があるならお前に賭けるからな!稼がせてもらうぜ!」
「え~じゃあボクもお小遣い持ってきておこっかな~。」
「いいよ、じゃあ僕の分も一緒に賭けといてもらおうかな。」
せっかくの決闘なんだ。
稼がせてもらわないと。
それにこの決闘は僕にとってとてもありがたい。
まず、普通の魔導師の力がどれくらいか分かる。
僕はどうやら他の人とずれている節があるから、自分がどれくらい規格外なのかを実感できる戦いになるだろう。
---学園長室---
「お爺様、またマリスが……。」
「知っとる、風の噂で儂のとこまで聞こえてきとるよ。決闘だろう?」
「はい、バレなければいいのですが。」
「はあ、あのマリスという子は本当に落ち着きがないな。キャンプの時といい、今回の決闘騒ぎといい。ああ、そういえば入学時の試験でもやらかしとったな。」
レイは毎回マリスが何かをやらかすたびに祖父へと報告しに来ていた。
いつもながら先に知っているところをみると、ディルティアには専属の諜報員のような組織を持っているのかもしれないとレイは思う。
「それにしてもオルランドのとこの子か。また無謀な挑戦をすることになったな。これで一つ伯爵家が潰えたな。」
「恐らくそうなるかと。神獣ですら一撃で倒すマリスからすれば三色魔導師など赤子の手をひねるようなものです。」
「出来れば殺さないでいてくれればいいが……殺せばめんどくさい事この上ないからな。儂の。」
学園長室で不穏な事を言い合う2人の言葉は誰にも聞かれることはなかった。
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