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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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北の街ククルゥでも目立ちたくない⑩

宿の入り口でゾルトと出会った事をクレイさん達にも伝えると神妙な顔つきになった。

戦闘があった日から一週間が経っているにも関わらず未だこの街の中を探しているという事が分かり下手に動けなくなってしまったのだ。

レギオンとの合流を後回しにし先に拠点へと戻るべきかそれともこのまま宿に籠っておくのか、どうするべきか悩ましい所である。



「このままこの宿にいてもいつか見つかるだろう。レギオン殿には申し訳ないが先に帰還するのが望ましいと思うんだが。」

レオニスは拠点へ戻る事を提案する。

全員同じだったのかクレイも頷いていた。


「レギオンはちょっとやそっとでは死なん。ここに戻って来て我らがいなければ拠点まで自力で戻って来るだろう。」

「まあ龍王様だしね。よし、そうと決まればさっさと荷物を纏めてこの街を出ようじゃないか。」


と言う訳で僕らは出来るだけ目立たない恰好に着替えて、北の街ククルゥとおさらばした。

レギオンさんはまあ適当なところで帰って来るだろうし。



魔導列車に乗り込むまで見つかるのではないかとヒヤヒヤしたが、案外見つかる事はなかった。

人も多いし流石に目立ちにくい恰好をしてたからだろう。



首都へと帰って来るとなんとなく帰って来たような感覚に陥る。

本来の故郷は帝国の大地ではあるが、一カ月も暮らしていれば第二の故郷と呼んでも差し支えないだろう。



「追ってもなさそうだ。さっさと拠点に戻ろう。今は首都だって下手にうろつくのは危険だ。」

法皇庁がある街だし、ククルゥよりも索敵範囲は広くなっていそうだ。

僕やルーズさん、フィンブルは顔が割れておらず普通に出歩けるが、クレイさんとレオニスさんに関しては下手に歩き回ると確実にバレる。

レギオンさんもそうだが、そもそも何処にいるか分からないのでバレずに戻ってきてくれる事を祈るしかない。




元小屋だった要塞に戻って来ると気持ちが幾分か落ち着いた。

ホッと一息付けるとはまさにこの事だ。


クレイさんとレオニスさんも無事だったのが何より良かった。

レギオンさんは多分平気な顔して帰ってきそうな気がする。

ちょっとやそっとじゃ怪我すら負わせられないし、大怪我を負って帰って来るとなればもうそれは大事件である。



それにクレイさんの話によると、ヴリトラとの戦闘時三人を相手にして貰ったらしいが無傷で抵抗していたそうだ。

ムキになったヴリトラが転移魔道具を使い今に至る、というわけだがそれもちゃんと警戒していれば避けれたはず。

だから自業自得なのだ。




「さて、これからどうする?私とレオニス殿はもう下手に外は出歩けない。となるとマリス君とルーズ殿に調査を頑張ってもらう他ないが、二人では効率も落ちるな……。」

しれっとフィンブルが戦力外通告されていたが、気にならなかったのかフィンブルは澄ました顔でいる。

レオニスさんも申し訳なさそうな表情を見せるが、こればっかりは仕方がなかった。


魔法を使えなくする魔法陣というのも卑怯だが、三人に対して五人で対峙するというのもなかなかズルい。

対等な立場であればクレイさんとレオニスさんが遅れを取る事はなかったように思えた。




「魔道具の事は大体分かってきたしこの国の文明レベルも把握できた。後知りたい事となれば軍事の面だが調べるのはかなり難しいだろう。」

軍事関係においては僕らのような一般人が調査するには厳しいだろう。

何より一般人立ち入り禁止の場所ばかりなのだ。

調べたくとも入れないのであれば調べようがなかった。



「そんな時こそあやつの番ではないか?ほれ、なんだったか、ヘランかヘリンかそんな名前の貴族がいたではないか。」

フィンブルが言っているのは多分ヘレンさんの事だ。

興味がない事に関してはとことん覚えようとしないんだな。


「ああ、ヘレン嬢がいるか。彼女がどこまで軍事関連の調査が可能かは分からないが少なくとも今の我々よりは深入りできるはずだ。」

「ではヘレンさんに連絡を繋ぎましょうか?早く動くに越したことはないですし。」

「ああ、頼む。」


ヘレンさんへ連絡する為の通信魔道具は僕が預かっていた。

というのも僕が亜空間に収納する事ができる魔道具を買っているからだ。

その中に入れておけば無くすこともないし、捕まった時に取られる心配もない。



僕は通信魔道具を取り出しヘレンさんへと連絡を入れる。

数回光ったかと思うとすぐに返答があった。


「あら?どうしたのかしら。何か緊急事でもあったの?」

「緊急と言えばそうなんですが、今回は別件で聞きたい事がありまして。」

「ふーん。それは人に聞かれると不味い話かしら?」

「もちろんです。不味いどころではないですね。」

「じゃあウチの屋敷に来なさい。今日も両親はいないから内緒話するには丁度いいわ。」


ヘレンさんはそれだけ言うと通信を終了した。

今からお屋敷に行く事になってしまった。

しかしクレイさんとレオニスさんは外を出歩けない為僕とルーズさん、フィンブルだけで行く事になる。



クレイさんからは手間を掛けると言われたが、別に気にする事でもないと伝えて僕らはヘレンさんのお屋敷へと向かった。



道中警備兵数人とすれ違ったりしたが、何か言及される事もなかった。

まあ悪い事なんてしてないし、してたとしてもバレていないから問題はないんだけどね。

でも何となくドキドキするのは小心者だからだろうか。




何の問題もなくお屋敷へと辿り着くと既に門兵には話が通っていたのか数言言葉を交わすだけで敷地内へと入る事が出来た。

相変わらず敷地が広く門から屋敷の玄関まで数分歩かされた。

広いのはいいがもう少し利便性を考えて欲しいものだ。



玄関まで行くとメイドが立っており、客間へと案内された。

スイスイ進めるとストレスなく歩いて行けるから楽だ。



客間へと通され適当なソファに腰かけて待つ事数分。

ドアが開きヘレンさんが現れた。

完全な休日だったのか今日はとてもラフな格好をしていた。



「久しぶりってほどでもないけど、一週間ぶりくらいかしら。で?今日はどうしたのよ。」

「ええ、実は――」


北の街ククルゥであった出来事、レギオンの失踪、そして軍事関係の調査について話すとヘレンさんは呆れたような表情を見せた。

なかなか無茶を言っているのは自覚しているが、それでも調査しなければ先に進めないのだ。




「はあ、アンタ達良く生きているわね……。クレイとレオニスの腕は疑っていないけどそれでもヴリトラと正面切って戦闘するなんて馬鹿げているわよ。それとレギオンって人、ヴリトラの三人を相手に出来るなんてどんな化け物よ。」

化け物なのは合っているけどね。

少なくとも人間ではないし。



「で、本題の件だけど……正直言うわ。軍事関連の調査は困難を極めるわよ。」

とても残念そうな表情でヘレンさんはそう言った。

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