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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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北の街ククルゥでも目立ちたくない⑦

レギオンは最果ての町ルパートでとても人気が高かった。

何より力は常人の数倍以上であり、重い物でも簡単に運んでしまうのだ。

そんな力持ちとは裏腹に、絶世の美女である。

人気が出ないほうがおかしいくらいであった。



「レギオンさん、今日も手伝ってくれるのかの?」

いつもの如くレギオンは町長の畑で農作物の運搬を手伝おうと、畑に顔を出した。

するとノルン町長はまた手伝いに来てくれたのかと微笑みを浮かべる。


「うむ、無償で食事と寝床を用意して貰っているからな。これくらいの雑事ならば引き受けよう。」

レギオンはこれくらい、と言うが数キロもある重量物を何度も往復して運ぶのは骨が折れる。

だがレギオンはそんな荷物を一度に運び終えてしまう。


ノルン町長としては助かるどころではなく、ずっといて欲しい人材であった。



そんな生活も遂に終わりを迎える。

商人がやっとこの町ルパートまでやって来たのだ。

大量の商売品を運ぶ為大きな荷馬車を冠したような魔道車であり、田舎町であるルパートではとても浮いた存在であった。



「あれが商人か。」

「そうじゃ、あれに乗せてもらえば良い。ワシとしてはずっと居て欲しかったがそういう訳にもいかんのじゃろう?」

「うむ。妾にはやる事がある故にな。」


商人の魔道車への乗り合いは二つ返事で許可をくれた。

というのもこの魔道車に乗って別の街に行く者は何もレギオンだけではない。

旅行気分で乗る者、珍しい魔道具を仕入れに行く者、冒険者として成り上がりたい若者、理由は様々だが複数人が魔道車へと乗り込んだ。



「ではなノルン。世話になった。この恩は必ず返そう。」

「こちらこそ助かったよレギオンさん。また暇を見つけて遊びに来てくれ。」

最後にレギオンはノルンと挨拶を交わした。

転移で跳ばされた時にはどうやって復讐してやろうかとも考えたが、案外悪いものではなかった。

それどころか転移されていなければ、この温かい人達と交流を深める事も出来なかっただろう。



「なかなかこの大陸の人間も悪い者ばかりではないようだ。」

魔道車の中で小さく呟いた言葉は誰に聞かれる事もなかった。





レギオンがルパートの町を出発した時、北の街ククルゥにはマリス、ルーズ、フィンブルがやって来ていた。


「ここが北の街ククルゥか。遠かったけど割と綺麗なとこだな。」

「さて、この街の何処かにクレイ殿のチームはいるだろうか。」

現在、北の街ククルゥにはレギオン以外の面子が揃っている。

しかしマリスチームとクレイチームはお互いの情報がない為、近くにいる事を知らないのだ。



「まず何処から探そうかな。」

「一旦は街を見て回るのがよいのではないかい?僕らもある程度この街の地理は覚えておかないとね。」

「そうですね、フィンブルは匂いとかで追えたりしないの?」

「我をそこらの犬と一緒にするな。……まあ出来ない事はないが、狼の姿に戻らねば無理だ。この姿でも多少の匂いは判別できるが……ん?ほんの少しだがクレイとレオニスの匂いを感じるな。」


いきなり目的達成かと思われたが、フィンブルの表情は芳しくない。


「いや……おかしいな。レギオンの匂いが一切感じ取れん。少なくともこの街にクレイとレオニスはいる。」

「凄いな、流石は神獣だよ。」

「それは褒めているのか?」


フィンブルのお陰で街を探し回る事なく、クレイさん達がいると分かったのは大きい功績だ。

ただレギオンさんが居ないというのが少し引っ掛かる。


「現地で別行動していた、とかないかな。」

「まあなくはないだろうね。戦力の分散で考えるならレギオン殿が単独行動になるだろうし。」


僕らはクレイさん達と合流する為、各々別行動で探索を開始した。

とはいっても簡単に見つかるものではない。


この街も首都ほどではないとはいえ、十分大きい。

闇雲に探し回っても見つかる気がしないが、この街にいるという事が分かっているので根気よく探すだけである。



探索を開始して数時間が経った。

徐々に日も暮れてきて辺りは薄暗くなっていく。


これだけ暗くなるとクレイさん達の顔を判別するのは難しいだろうと、僕は事前に打合せしていた合流場所へと向かった。


ほどなくしてルーズさん、フィンブルも合流する。

三人で探索結果を共有したが、何の手掛かりも掴めなかった。

せめて泊まっている宿が分かれば早いのだが、この街に宿は数十もあり一つずつ聞き込みで探すのも一苦労である。



無事でいてくれればいいなと思いつつも、多分大丈夫だろうなと思っている自分もいる。

クレイさんのような魔導師が負ける様な相手とは正直戦いたくはない。


「明日は別の宿を探してみようじゃないか。そういえばマリス君は確かオリジナルの魔法を創れるんだったかい?それで探知魔法とか作れないだろうか?」

簡単に言ってくれるがオリジナル魔法を創るのは結構大変なのだ。

魔力も大幅に消費するし失敗すれば魔法が暴発、なんて事もあり得る。



「やってはみますが上手く行くかはわかりませんよ?」

「是非お願いしたい!このままだと何日掛かるか分からないからね。」

ルーズさんは恐らく楽したいのだろう。

本格的に探すとなれば一日中歩き続ける事になるかもしれない。

それが嫌なのだ。


「我も手を貸してやりたいがこんな場所で狼に戻れば確実に目立つからな。まだ派手に動く時ではないのだろう?」

「まだ、というか派手に動くつもりはないよ。どうするんだそれで目を付けられて命を狙われたら。」

「その時は蹴散らせてやればよいではないか。」

フィンブルはそう言うが僕としては出来るだけ人を殺したくはない。

いくら敵側の人間とはいえども人は人なのだ。

精神的に辛いものがあるし、その人達だって家族や友人はいる。


家族を失う辛さはよく理解しているからこそ、穏便に事を済ませたい。



「……まだ甘さは残っているか。魔神との戦いで吹っ切れたかと思っていたが、その辺りはまだまだ年相応といったところだな。」

「これでも学生なんだよ僕は。」

「実力だけなら世界最強と称してもおおげさではないだろうけどね。」


世界最強は流石におおげさすぎる。

世の中にはフィンブルのような者だっているかもしれない。

それこそ表舞台に出てきていないだけで僕と同じ虹色魔導師が何処かに存在するかもしれないんだ。



「とりあえず今から探知魔法を作ってみるのでルーズさんは寝ててください。もし上手く行かなかったら結局足で探す事になりますし。」

「そうだね、お言葉に甘えて先に休ませてもらうよ。マリス君も無茶はしないようにね。」



無茶を言ったのはルーズさんだが、まあそこは言わないでおこう。

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