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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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魔の森でも目立ちたくない⑦

ひっきりなしに行われる魔物の襲撃。

僕を含めた三人は疲労が蓄積していた。

休みたくとも休めない、そんな状況は確実にどこかのタイミングで綻びが生じる。


現に先程もロンさんが危なかったのだ。

上手くムチを操り魔物を撃退していたが、手元が狂ったのかフィンブルにも当たりかけた。

もちろんフィンブル本人は身体を後ろに反らせて回避したが、普通の人間であれば首が飛んでいたに違いない。


僕とて余裕があるわけではない。

魔力にはまだまだ余力があるが体力的な面では同年代の者より劣っていると自負している。

その為慣れない山道で足はクタクタになり今すぐにでも座り込みたい衝動に駆られていた。



「そろそろマリスが限界だ、結界を張るぞ。」

「フィンブル、助かるよ。」

見かねたフィンブルが三人を中心に結界を張ってくれた。

長時間維持するのは魔力消費を考えれば得策ではないが、背に腹は代えられない。



「それにしても二人が手を貸してくれて助かった。俺一人ではここで死んでいたかもしれないからな。」

ロンさんは肩で息をしながら言葉を紡ぐ。

喋るのもキツイなら黙って休んでたらいいのにとは言えない。


「何度か来たことがあるんですよね?」

「ああ、でもソロでは来ないぞこんな所。ソロでは死にに行くようなもんだ。」


ひっきりなしに襲ってくる魔物を撃退しつつ身体を休める事は不可能に近い。

フィンブルや僕のような無尽蔵な魔力があれば今みたいに結界を張って一休み、なども可能だがロンさんはそれほど魔力を保有していないらしい。

雑魚ばかりが襲ってくるのならまだしも、この魔の森深部で出て来る魔物は凶悪な奴ばかりだ。

アビスウルフ以外にも厄介な魔物はちらほらと見受けられた。

火を吐くウサギ、フレアラビット。

体液が強酸のポイズンベア。

両手に斧を持ち体長が2メートルを超える大男バリアント。


全てロンさんからの受け売りではあるが、様々な魔物が混在している。

魔物の特性を知らずに戦えば痛い目に合う事は日の目を見るより明らかだ。



「それでロンさんの目的の魔物はまだ出て来ないんですか?」

「もっと先にいるんだ。最奥と言われる場所に遺跡があってな、そこに(くだん)の魔物はいる。」

「遺跡……ちょっと冒険心が沸き立ちますね。」

「実際はそんな楽しい所じゃないぞ?罠だって沢山あるし一歩間違えれば死に繋がるからな。」


ロンさんの話によると罠は大量に設置されておりその一つ一つが致死性の高い罠だそうだ。

それを聞くとさっきまでのワクワクした気持ちが萎えていった。

危険な場所のようだしぶっちゃけ行きたくなくなってきた。


「おいおい、あからさまに行きたくないような顔をしないでくれ。ここまで来た以上は付き合ってもらうぞ。」

「まあ、そうですね。依頼を受けた以上は最後まで付き合いますよ。僕の気持ちは置いといて。」

「お前達、いつまでそうしてくっちゃべっているつもりだ。そろそろ結界を解くぞ。あまりここに長居していても無駄に魔力を消費するだけだ。」

ついロンさんと長話をしてしまいフィンブルからお小言を貰ってしまった。

軽く謝罪し僕らはまた深部最奥へと進んでいく。



道中ロンさんから教えて貰った事がある。

遺跡を守るようにして配置されているゴーレムは反魔法の術式が刻まれているそうだ。

それ故に火力の低い魔法では無傷であり、物理的に倒そうとしても頑丈な石で造られたゴーレムらしく刃が通らないとの事。

多分フィンブルが全力で殴れば倒せるかもしれないが、そんな事をすれば明らかに人智を超えた力だとバレてしまう。

僕も同じく七色の魔色を見せる訳にもいかない。


そこで提案されたのは僕とフィンブルが陽動となり時間を稼ぐ事。

その間にロンさんが攻撃を搔い潜りながらゴーレムの身体に爆弾を設置する。

魔導爆弾と呼ばれるもので魔力を流すと爆破する仕組みだ。


それを数個身体に取り付けられれば倒せると言っていたが、そんな上手くいくだろうか。

ゴーレムなら多分動きは遅いだろう。

フィンブルが速さで翻弄しつつ僕が後方から魔法を連続で当てる。

そうすればロンさんへと注意が向く事を避けられるはずだ。



「魔導爆弾は全部で五個持ってきた。一個当たりがかなり高額でな、あまり数は用意できなかった。出来ればその後に控えている目的の魔物との戦闘で二つは使いたいからゴーレム戦で使えるのは三つだな。」

「それってどれくらいの威力があるんですか?」

僕とフィンブルに至ってはロンさんが手に持つ握り拳台の爆弾を見たことがなかった。

威力ももちろんどれほどのものか理解できていない。


「威力か……分かりやすくいえば冒険者ギルドがこれ一つで吹き飛ぶ威力だな。」

恐ろしすぎるだろ。

手で握れるくらいの玉一つで冒険者ギルドが吹き飛ぶ?

冒険者ギルドは決して小さな建物ではない。


ビルと呼ばれる高層の建物が立ち並ぶ中、3階建て程度の高さで街に鎮座するのが冒険者ギルドだ。

伯爵が住まう豪邸より少し大きい建物であり収容人数は優に500人を超えると思われる。


そんな冒険者ギルドを吹き飛ばす程の威力だと設置した後すぐに離れなければ僕らも危ないのではないだろうか。

というかそんなレベルの威力がなければ倒せない程のゴーレムの頑丈さに驚きだ。


「もちろん設置した後は即座にその場を離れる。じゃないと俺達も身体が木端微塵になっちまうからな。」

「ですよね。でもそれを三つ使うんですよね?」

「ああ、三つだな。あのゴーレムはかなり頑丈なんだ。前回はある程度ダメージを与えた後二つの魔導爆弾で倒したが今回は俺達の力を温存しておきたい。だから三つ使うんだ。」


三つも使わなければならない理由は分かったが、爆破した瞬間が想像できなくて少し怖いな。

ギルドどころかビルすら吹き飛ぶ威力だろうし、かなり距離を取って結界を張らないと危なそうだ。



「魔導爆弾か。それはいくら程度で買える物だ?」

「これは魔道具店で大体金貨数十枚ってとこだな。使い捨ての武器にも関わらず凄い高いだろ?」

「ふむ……一つ買っておいてもよいな。」

フィンブルがそう溢すと僕の方を見た。

危ない危ない、僕らの真の目的はこの大陸の調査だった。

すっかり忘れて冒険を楽しんでしまっていた。


魔導爆弾を持ち帰って解析してもらえれば何か新たな技術を生み出せそうだしなんとしても手に入れないと。

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