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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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超大陸でも目立ちたくない⑦

魔の森という名前はとても単純なネーミングである。

冒険者ギルド受付のお姉さん曰く、純粋に魔物が多いから、だそうだ。


しかし良く考えてみれば、魔物は邪神が生み出した生物だ。

それを討伐させるのは何か意味があるのだろうか。

そんな疑問をフィンブルにぶつけてみると返ってきた答えはとても単純なものであった。


戦力の増強の為。


邪神は様々な魔物を創り出し超大陸の至る所に放った。

そしてそれを狩ると戦闘技術が身に付く。

今度は強化した魔物を放つ。

またそれを狩れるようになると戦闘技術は向上する。

それを繰り返せば最初は弱い人間であっても強力な戦力へと成り代わる。

邪神はそうして手駒となる者達を鍛えているそうだ。


だからこそここ超大陸では冒険者という職業がとても普及しているのである。


僕がいた帝国では冒険者という職はそこまで人気でなかった。

騎士団が存在し、軍隊がある。

それだけで十分魔物に対しての抑止力となり、わざわざ危険を冒してまで自身を鍛える必要はないのだ。



しかしここ超大陸ではそうもいかない。

国として成り立っている以上、軍隊は存在しているがその軍隊ですら抑えきれない程の魔物が野に放たれている。

だからこそ自分の身は自分で守る必要があり、冒険者稼業がとても流行っているのだそうだ。



ちなみに余談ではあるが、受付嬢によると特級冒険者は単独で軍隊とも互角に戦える程の力を持つらしい。

冒険者の質もピンキリだろうが、特級冒険者に関しては警戒しておいた方がいいだろう。



「む、前方三体の魔物だ。緑色の醜悪な化け物……ゴブリンで間違いはないな。」

「じゃあどっちがやる?フィンブルがやってもいいけど。」

僕は出来るだけ楽をしたい。

フィンブルは暴れたそうだったので適材適所と言うやつだ。



戦闘自体はものの数秒で終わってしまった。

フィンブルが速攻で近寄り腕を振るうと三体のゴブリンは身体を真っ二つにして絶命した。


魔物は絶命して時間が経つと魔石をその場に残し身体は消失する。

弱ければ弱いほどその時間は短くゴブリン程度であれば数分で魔石のみとなる。

その魔石を持ち帰れば討伐完了となるのだ。


「一瞬で終わっちゃったな……どうせだったらもう少し彷徨いて魔石を集めてから帰ろう。その方が稼ぎにもなるし。」

「我も暴れ足りん。消化不良で気持ちが悪いぞ。せめてもう少し粘ってくれれば張り合いがあるのだがな……。」

フィンブルと張り合える魔物が現れたらそれはそれで困る。

ベヒモスとかグリフォンクラスじゃないか。

そんな魔物が現れればたまったものじゃない。



結局その後日が暮れるまで魔の森入口付近で彷徨いたが、魔石は袋一杯になるほどになった。

これだけあればそれなりの金にはなるだろう。



ギルドに戻り受付に成果を渡すと見たこともない硬貨が何枚か渡された。

貨幣価値が分からずそれが多いのか少ないのか分からない。


どうすればいいかと悩んでいると後ろから声を掛けられた。



「君、もしかして田舎から出てきたのか?」

これはまさか田舎臭いガキは畑でも耕してろ的なイベントか?

と思ったがそんな事はなく、振り向くと笑顔の男性が立っていた。



「ああすまないないきなり話し掛けて。もしかして貨幣価値が分からないのじゃないかと思ったんだ。」

「その通りです。でもどうして分かったんですか?」

「前にも一度君のような子が困っていてね。話を聞けばどうやらとても僻地の田舎から出てきたと言う。故郷では物々交換が常で貨幣価値が一切分からないと言っていたんだ。だからもしかして君もそうじゃないかと思ってね。」


バカにするどころかとても親切な方だった。

今時こんな優しい人がいるだろうか。

いや、いないね。

ここは是非とも仲良くなっておきたい。



「その通りです。貨幣価値が分からないのでどれがどれだけ価値のある硬貨か分からなくて……。」

「やはりか!俺の目に狂いはなかったな!よし、じゃあ教えてあげよう。そこのテーブルでいいかな。」


親切な男性に言われるまま近くの空いていたテーブル席へ移動する。


貨幣価値に関しての説明はとてもシンプルだった。

銅貨、銀貨、金貨、黒金貨と四種類ある。

純粋に素材となっている鉱石の価値がそのまま貨幣価へと繋がる。


「君が先程受付で貰った硬貨は銅貨と銀貨だ。金貨はあまり見る機会もないし、ましてや黒金貨なんて一生のうちで見られたらラッキーだな。」

帝国で言う白金貨のような扱いらしい。


「そうだな、分かりやすく言えば一ヶ月宿で寝泊まりするなら十数銀貨かかる。毎月五十銀貨稼げれば十分生きていける計算だな。」

「なるほど、分かりやすいですね。」

「他に分からない事はあるか?せっかくの機会だ、何でも聞いてくれればいい。」

こんな機会あまりないだろうし、友好を深めておくに越したことはないだろう。


「じゃあ名前を教えてもらえますか?僕はマリス、こっちの師匠はフィンブルです。」

「師匠?へぇ……そういう間柄だったのか。しかし俺から見れば君の方が強そうに見えたんだがな。」

この人……勘が鋭いのか?

フィンブルも「ほう」と溢している。


「俺の名前はロン、クラスは一級冒険者だな。」

「一級……冒険者のほぼ頂点じゃないですか。」

「まあな、ちとギルドに顔を出してみれば見ない顔ぶれがあったもんで声を掛けさせて貰ったって訳だ。あれだろ?登録したばっかの冒険者だろ?」

「はい、僕らは五級です。」

「ふぅん。ま、五級に見えないが……そういう事にしておこう。冒険者ってのは誰しも秘密を持っているもんだからな。」

若干怪しんでいたが深くは聞いてこなかった。

冒険者なりの流儀というものがあるようだ。


「君らなら俺と同等……いやそれ以上の力は持っていると仮定して一つ仕事を頼みたい事がある。」

おお、いきなり仕事の話か。

一級冒険者から振られる仕事なんて結構難易度が高そうに思えるが相応に報酬もでかそうだ。

とりあえずは話を聞いてから決めるとしよう。



「内容にもよりますがどんなお仕事ですか?」

「簡単に言えば討伐の手伝いをして欲しいってわけだ。俺が指名で受けた依頼なんだがな、俺一人じゃ達成するのは難しいんだよ。」

「一人?もしかしてロンさんはソロなんですか?」

「ああ、言ってなかったな。俺は昔からソロだ。ただどうしてもソロだと難しい依頼だってある。そういう時は誰かに協力を取り付けて手伝ってもらうんだよ。」


一級ともなれば指名で依頼される事も多いらしく、その中でも貴重な素材を欲する富豪が無理難題な依頼を突きつけて来る事も少なくないという。

その際はいつも同等程度の冒険者に協力してもらい討伐するらしいが今回は運悪く他の一級冒険者は出払っているそうだ。



「そこで目を付けたのが君達だ。新入りなのは分かったがどう見ても五級冒険者に釣り合わない力を持っているように見えた。だからこそこうして協力してくれないか頼んでいるんだ。」


という事はかなり強力な魔物が相手の依頼になりそうだ。

これは受けておいた方がよさそうに思える。

フィンブルを見れば僕と同じ意見なのか小さく頷く。



僕らはロンさんからの依頼を受けるつもりで、更に詳しく話を聞く事にした。

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