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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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キャンプ中も目立ちたくない②

とりあえず野営の準備は整った。

あとは食料調達だな。


「じゃあ獣を狩りに行こうか。何も狩れなかったら今日は夕飯なしだからね。」

「む、それは困るな。」

当たり前の事を言ったつもりだったがフェイルらからしてみれば自ら食糧調達など初めての試みだからだろうか、困り顔を見せる。



森の中へ入ると動物の糞や足跡が見つかった。

ここにはそれなりに動物がいるようだ。

「どうする?二手に別れて探してもいいし、みんなで探してもいい。」

「うーむ、二手に別れれば効率は良いかもしれんが皇子皇女側に付いたものはそれなりに戦闘が出来るものでなければならないな。」

だろうね、何かあれば守らないといけないし。


「じゃあどうやって別れる?」

「ロゼッタ、君はシーラと共に動くつもりだろう?ならば俺がそちらに入ろう。マリスは皇子皇女に付いてくれ。」

待て待て待て。

僕の荷が重すぎる。

不穏な事を言い出したフェイルに待ったを掛けた。


「いや!ちょっとまってくれ。僕より剣技が使えるフェイルのほうがいいだろ。」

「うーむ、しかしだな。何となくだがマリスは私より強い気がする。」

フェイルの勘は恐ろしいな。

まさか僕の秘密を知っているのか?


「そうね、マリスに任せた方がいいでしょう。フェイルは強いかもしれないけどなんとなくアタシもマリスの方が強そう。」

「じゃあ決まりだな。ではマリス。皇子皇女を頼んだぞ。」

そう言ってフェイルはロゼッタ達と共に森の中へと入って行った。


残された僕と皇子らはそれをただ見送るしか出来なかった。


「じ、じゃあ行こうか僕らも。万が一魔獣が出ると危ないから僕から離れないでよ。」

「ああそうさせてもらおうかな。」

「あの、マリスさん。手を繋いでも宜しいでしょうか?私薄暗い所が苦手で……。」

確かに森は木が生い茂っているせいで昼だと言うのに少し薄暗い。

皇女と手を繋ぐのは如何なものかと思ったが今は誰も見ていない。


「いいですよ。」

エリザと手を繋ぎ、僕の横にはいつでも魔法を使えるよう手に魔力を纏わせたままルーザーが歩いている。


「ん?何か気配がしますね。」

念の為索敵用魔法をコソッと展開していると、何かが引っかかった。

「分かるのかい?」

「まあ、なんとなくですが。」

勘です、と言わんばかりに言葉を濁す。


すると前方に一匹の猪が現れた。

人間という餌を前にした猪は涎を垂らしている。


「丁度いいですね、今日はぼたん鍋だ。」

「わ、私はどうすればいい?」

「ルーザーはエリザさんを頼む。あれは眉間を撃ち抜いた方が血抜きがしやすいんだ。」

「分かった!従おう!」

エリザの手を握り後ろでルーザーが控える。


ルーザーが後ろへと下がった事を確認し手を猪へと向ける。

雷光一閃(サンダーボルト)

掌から一筋の電撃が猪の眉間目掛けて飛翔する。

眉間を撃ち抜いた電撃はそのまま後方の木を貫き三本目の木に当たった所で止まった。

「しまった、ちょっと威力強すぎちゃったな。」

想像より猪が弱かったせいでオーバーキルになってしまった。


「す、凄いですわ!マリスさん!!」

駆け寄ってきたエリザは満面の笑顔で手を握ってくる。


「いや、ちょっと威力調整が上手く出来なかっただけですよ。」

「それでも初級魔法であの威力は有り得ませんわ!」

「凄いねマリス。威力もそうだけどあんな正確に魔法を撃てる事が驚きだよ。」

そんなに褒めても何も出ませんが。


狩った猪はその場で血抜きし、ルーザーの異空間収納の指輪の中にしまう。

血抜きしている時、エリザは見たくないのか目を瞑っていたがルーザーは興味津々といった具合にジッと血抜き風景を見ていた。


多分いまこの間にも護衛が見ているんだろうな。

と思い辺りの木々を見つめる。


「ああ、影の護衛かい?今は居ないよ、ジリアンが着いてきているからね。」

僕の視線に気づいたのか、ルーザーはある方向を指差す。

そこには木に隠れきれていないジリアンが居た。


「皇子〜気付いても言わないのがお約束ですよ〜。」

「ごめんよジリアン。マリスが気になってたからさ。」

「影の護衛ですか。今いないよマリス君。いたら何か不都合があるのかな?」

「いや、ないですけど気配を感じないなーと思って。」

「へぇ影の護衛の気配を感じ取れるんだねぇ、普通は出来ないと思うけど。」

またいらない事を言ってしまったようだ。


「ま、聞かなかった事にしとくよマリス君。」

それだけ言うとまた隠れきれない木の陰に戻って行った。


まずいな、ジリアン先生も僕を怪しんでいるようだ。

これは今後の動きに気を付けたほうがいいかもしれないな。


「とりあえず猪一匹あれは十分夕飯には足りるし戻ろうか。」

「そうだね、さ、行こうエリザ。」

「はい、お兄様。ですがマリスさんと手を繋いで行きますので。」

そう言うとまた僕の手を握る。


だいぶ懐かれたようだなエリザ皇女に。

これは由々しき事態だ。

平穏で静かな生活が脅かされる気がしてならない。


「そう言えばマリスはその魔法技術を何処で習ったんだい?」

野営地に戻る道すがらルーザーに先程の魔法について聞かれた。


「テレーズ子爵っていう神殿魔導師が知り合いにいるんですけど、その人に教えてもらいました。」

「神殿魔導師か、よくそんな知り合いがいたもんだね。」

「まあ父の知り合いってだけですけどね。」


他愛もない会話をし、歩いていると不穏な気配を感じた。


「ルーザー止まって。」

念の為歩みを止める。

気配察知に集中すると僕らの後ろから何かが近付いて来ていた。

何かは分からないが凄まじい魔力を感じる。

明らかに普通の魔獣とは違う気配だ。


「何かが近付いて来る。ルーザーは防御魔法を。エリザは僕の後ろから離れないように。」

「あ、ああわかった!」

「はい、後ろから絶対に動きませんわ!」

ルーザー達に警告し、何かからの脅威に備える。


「まずいわね、貴方達も逃げなさい。」

すると木の陰からジリアンも出てきた。

顔に焦りが出ており、額に汗が滲んでいる。

確かに凄まじい魔力が近づいているが、ジリアンほどの魔導師が動揺するほどなのだろうか?


「貴方達じゃあまだ分からないかもだけど、今近付いて来ている魔力は神獣のものよ。」

ジリアンは真剣な眼差しで僕らを見つめそう言った。


なるほど、それはさっさと逃げないといけないな。

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