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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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魔界でも目立ちたくない⑨

最上階へと辿り着いたマリス一行は扉の前で立ち止まった。

この先にヘラがいるのは間違いない。

暴力的なまでの魔力を感じ取れるからだ。


最上階はただ一つの部屋しかない。

階段を登った先にある扉だけだ。

その部屋の中にヘラがいるのは確実である。


深呼吸を一つすると、両手で扉を押し開けた。


「案外時間がかかったわね。」


ヘラは椅子に腰掛け足を組み、紅茶か何かが入ったカップを手にしている。

とても寛いでいたように見えた。


「ん?あら、テスタロッサ貴方封印から解かれていたのね?」

「まあねー。それにしてもヘラは喧嘩を売った相手が悪かったね。」

「どういう意味かしら?」

「そのままの意味だよ。帝国を荒らしたでしょ?沢山人が死んだらしいよ。その中にマリス君の家族もいたみたいでね。」

「ああ、そういう事……。それで、貴方達は仇討ちにでも来たってところかしら?」

ヘラは悠々とカップを口元まで持っていきゆっくりと飲む。

人が死ぬ事にあまり頓着していないようで、何とも思っていないらしい。


そんな様を見ていると苛立ちが増していく。

ただ無意味に僕の両親を死に追いやったのかと。


「っ!!虹色魔導師というのは本当に厄介ね。」

感情が露わになったせいか魔力が漏れ出ていたようだ。

それを敏感に察知したヘラはビクッと身体を揺らし、僕の方を見る。


「まだ完全に魔力が戻った訳じゃないけれど……仕方ないわね。さ、掛かってきなさい。」

飲み終えたカップをテーブルに置くとヘラは立ち上がった。

気を抜いているようにも見えるが恐らく瞬時に魔法を発動できる準備は出来ているだろう。



「マリス君、フィンブル、3人で同時に魔法を放つよ。合わせてね?」

「誰にモノを言っている。最高火力の魔法で消し飛ばしてやる。」

ロゼが魔力を練り始めた。

フィンブルにそれに合わせて足元に魔法陣を浮かべる。

僕も習って魔法陣を展開した。


「同時になんて……卑怯ね。」

どの口が言うのか。

ヘラはそんな僕らの様子を見て少し体勢を変える。

よく観察してみれば、両手に濃密な魔力を練っているようだ。



「行くよ!!死を司る死神の鎌(デッドリーサイズ)!!」

疾走れ、銀色の一閃(シルヴァリーボルト)。」

堂々たる雷神の一撃(ライオニックサンダー)!」

3人同時の上級と最上級魔法だ。

部屋ごと吹き飛ばすかの勢いで放たれた3つの魔法はヘラを完全に飲み込んだ。

恐らく両手に溜めていた魔力を使って障壁を張っただろうが、無傷ではいられないだろう。



視界が晴れるとさっきまでと変わらぬ立ち姿で佇むヘラがいた。

僕ですら今の同時攻撃を防ぐのは難しいが、それを無傷で防いだとでも言うのか?


「この程度かしら?テスタロッサもまだ起きたばかりみたいだし、これじゃあ私に傷すらつけられないわよ?」

不敵に笑うヘラが腹立たしい。

手を抜いたつもりはないが完全に防いだようだ。

ロゼも顔を顰めて舌打ちを一つする。

フィンブルは相変わらず表情を変えていないが、若干不機嫌になったような気がする。


「ヘラ、アンタもまだ起きて間もないでしょ。なんでそんな魔力を持ってるのかなぁ?」

「ふふふ、なんでかしらね?魔界だからじゃないかしら?」


魔界は空気中に漂う魔力の密度が僕の住まう帝国などとは比較にならない。

魔力吸収によって集めただろうヘラだが、それでもこの数十日で集められる量なんてたかが知れているはずだ。

法国での戦闘により魔力を殆ど失ったであろうヘラがなぜここまで回復しているのか……。



「そんなわけ無いでしょ。それならボクだってそれなりに魔力が回復しているはずじゃない。」

「魔力の吸収が下手なんじゃない?」

ヘラに煽られ少しイラッとした表情を見せるロゼ。

しかしどうやってここまで回復させられたのか。



「……魔石を使ったな?」

不意にフィンブルが呟く。


魔物は身体に魔石を持っている。

その魔石を抜き出し自身の魔力としたのか。

それでも数百体程度では魔神の魔力をここまで回復させる事は出来ないはず。

それこそ数万体という魔物が必要になるだろう。


だがフィンブルは確信を持って告げていた。

何故か、答えは単純だ。


魔物は強力になればなる程、体内に持つ魔石の質が上がる。

膨大な魔力を保有する魔石を持つような魔物だってこの世には存在するのだ。



「ベヒーモスか……それともドラゴンか。その辺りの魔物を殺して魔石を奪っただろう。」

「ふふふ、正解よ神獣。ベヒーモス二体を狩ったのよ、ああもちろん私じゃなくてゴリアスがね。」

「やはりか。伝説級とも言われる魔物の魔石であればその魔力も納得がいく。」

ベヒーモス……聞いた事はあるが出会ったことはない。

伝説級と言われる魔物は他の追随を許さない程の力を持つ。

ベヒーモスやドラゴンがその対象である。

一体が帝国に現れただけでもとんでもない被害をもたらすと言われているその魔物達は神獣と互角に渡り合えるそうだ。

高位神獣のフィンブルからすれば相手にならないかもしれないが、普通の人間からすれば戦闘能力は天地の差があるだろう。


そんな伝説級であるベヒーモスの魔石を2つも吸収したのなら膨大な魔力量を持つヘラの器ですらそれなりに埋められる。


それでもまだ完全ではない魔神の底知れない魔力の器の大きさは一体どれほどのものなのだろうか。



「じゃあ今度は私の番ね?受け止められるかしら、大罪の焔(ギルティフレイム)。」

ヘラは2つの魔法陣から火属性最上級魔法を発動する。

高威力の魔法を2つも同時に展開できる時点でロゼを遥かに上回る魔力量だ。


夢幻の創造(ファンタジア)!」

すぐさまマリスは3人を覆う結界を展開する。

強固な結界ではあるが、流石に最上級魔法を2つ同時に受け止めるとマリスもそれなりに魔力を消費する。

マリスの額には大粒の汗が浮かび、余裕の表情は消えていた。



ヘラの魔法が収まると結界を解く。

かなりの魔力を消費したせいでマリスは肩で息をしていた。


「すまん助かったぞマリス。」

「うんうん、危なかったよ。ボクの魔法障壁だと多分破られてたからね。」

2人はマリスに感謝すると同時に虹色魔導師の可能性に希望を持った。

恐らく今のヘラに致命傷を与えられるのはこの場にはマリスしかいない。

そう考えた2人はある提案を持ち掛ける。


「マリス、我とそこの魔神で時間を稼ぐ。その間に溜められるだけ溜めた全力の一撃を持って奴を殺せ。」

「ボクも本気でやるからさ、多少は時間を稼げると思うし全魔力を注げばかなりの威力の魔法を使えるでしょ?」

「僕の最高峰の一撃をお見舞いしてあげるよ。ただそうだな……5分、5分でいい。一切僕にヘラの攻撃が通らないよう守ってくれ。」


マリスは自身の持てる魔力を全部使い最後の一撃に賭けることにした。

今のヘラには生半可な魔法は傷一つ付けられない。

全力の魔法で葬るしかないだろうと考えたマリスは2人の提案に乗った。



「じゃあ溜めるよ。頼んだよ二人共。」

「任せて!」

「任せろ。」


マリスが少し後ろに下がるとそれを守るかのようにロゼとフィンブルは前に出た。

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