キャンプ中も目立ちたくない①
野営キャンプはグランバード学園が所有する山で行う。
学園側がある程度安全を確保しているが如何せん山が大きすぎる為全ての魔獣を駆逐することはできない。
故に、生徒達は自衛が求められる。
これも授業の一環ということで、危険な時以外は先生方は手を出さないというルールだ。
「ハァハァ、ちょっと……山ってこんなに……しんどいのね……。」
山を登り始めてロゼッタが既に息切れしている。
それもそうだろう、お嬢様が山登りなんてまともに出来るはずもない。
「体力なさすぎじゃない?ロゼッタ。」
「う、うるさいわね……ハァ……。」
返事をするのも一苦労といった具合だ。
仕方ない、とロゼッタの持つリュックを僕が背負う。
「な、何よ……ハァハァ。」
「これで多少は楽になっただろ?」
「よ、余計な……お世話よ……。」
文句は言うがそれでも取り返そうとする体力もないらしい。
「いいよ、僕は慣れてるから。」
「あ、ありがとう……。珍しいわね、アンタがそんな気配り見せるなんて……。」
「まあ、恩は売っておいて無駄にはならないからな。」
「一言余計よ!……ハァハァ。」
それを見ていたらしいシーラが僕に話し掛けてくる。
「フフ、貴方も多少はお姉様に気を遣えるようになったのね。」
「シーラか。まあ前に言われたしな君に。」
「それでいいのですよ、お姉様には優しくしなさい。ただし、お姉様はワタクシのものよ……。」
怖いなもう。
シスコン極まれりって感じだよ。
「ルーザーは大丈夫かな?」
少し後方にルーザー皇子とエリザ皇女が汗を垂らしながら歩いている。
フェイルは何故か涼しい顔をしている所を見ると、体を鍛えているのだろう。
「フェイル、エリザさんのリュック持ってやれよ。」
「む!何故だ!」
「いや、何故だ!じゃなくて。大変そうにしてるじゃないか。」
「む、確かに。」
そそくさとエリザの元へと駆け寄りリュックを持ってやるフェイル。
あいつは優しいやつだが、気が利かないな。
「こ、ここら辺で休憩するのは……どうかしら。」
ロゼッタはもう限界が来たらしい。
そうだな、この辺で休憩したほうが良さそうだ。
僕とフェイルはまだ余裕があるが、みんな汗だくになっている。
丁度広がった場所でもあるし、ここで休憩しよう。
「みんな、ここで休憩にしようか。」
各々荷物を置き、肩で息をしている。
正直1人でさっさと登れば早いんだけどな。
「大丈夫か、ロゼッタ。」
「だ、大丈夫よ……。アタシがこの程度で弱音を吐くわけ……ないでしょ。オェ……」
強がるのも無理があるぞ。
息も絶え絶えじゃないか。
「15分休憩したら登山再開しようか。」
「流石マリスは慣れているね。私は城から出ることなどそうそうないから山登りは大変だよ。」
「だろうね。フェイルが特殊なだけでみんなそうだよ。」
「む、俺の話をしているのか?」
「フェイルは無駄に体力があるなーと思って。」
「それはそうだろう。ワーグナー家といえば魔導騎士で有名なのを知らないのか?」
魔導騎士?なんだそれ。
「ワーグナー家の一族は代々魔導師と騎士の両方の才に恵まれて生まれてくるのだ。故に魔法と剣技を合わせ持つ魔導騎士を代々輩出している。」
「へー知らなかった。だから体力があるのか。」
「そうだ。だから剣技もそれなりに出来るぞ。教えてやろうか?」
「いやいいよ。僕そういうの向いてないと思うから。」
七色の魔力を持っているんだ、これ以上何かを得たくはない。
それこそ虹色の魔導騎士なんてものが生まれてしまうじゃないか。
そんな事になればもう誰も手を付けられない最強になってしまう。
目立つことこの上ないだろう。
休憩もほどほどにまた山登りを再開する。
なんとか全員無事にキャンプ地へと辿り着いたが、僕とフェイル以外は虫の息だ。
「じゃあちょっと休んだらテントを張ろうか。」
正直ルーザーが持ってきたテントを見るのが恐ろしいが、今更別のテントに変えれるわけでもないしどんなのが出てきても諦めよう。
しばらくすると他の班も到着したようで各々キャンプの準備に取り掛かり出した。
「マリス、皇子皇女に怪我などさせてはいないだろうな?」
後ろから話し掛けられ振り向くと、カイル・アストレイがいた。
「あ、どうも。今の所は何もないですよ。」
「ふん、それならいいが。何故男爵風情が皇子から気に入られているか知らんが、あまり調子に乗るなよ。」
それだけ言うと元の場所に戻って行ったが、何が言いたかったのか良く分からなかった。
「何よアイツ。カイルは昔からあれだから困るわね。気にしなくていいわマリス。アイツの偉そうな態度は今に限った事ではないし。」
「いや、気にしてないよ。なんか良くわからないことしか言ってなかったし。」
ロゼッタが心配してくれたのか、フォローしてくれる。
「そ、そうだったわね。貴方はそういうタイプだったわね。」
気にしたら負けだと思う。
「さあ、俺達もテントを張ろう!ルーザー皇子、テントを出して頂けますか?」
「ああ、分かった。」
ルーザーは懐から1つの指輪を出した。
魔力を込めると目の前には既に出来上がったテントが出現した。
あれは異空間系統の魔導具か。
流石は皇族。
確か異空間系の魔導具はかなり高価な物だったはず。
それを持っているだけでお金持ちだと分かるほどだ。
ただ、出現したテントがいけない。
張る必要もない出来上がったテント。
それも10人は入れるだろう大きさの。
それが2つ出て来た。
やっぱりな、何となくそんな気はしてたよ。
「流石は皇族の持つ野営用テントですね。中も広いしテントには結界魔法が施されている。これならば夜も安心でしょう。」
結界?何から身を守るというのだこんな山の中で。
「どうかなマリス。これなら全員余裕を持って1日過ごせると思ったんだけど。」
「あ、ああいいんじゃないかな。」
もうどうにでもなれ。
それから各々が持ってきた物を拝見したがどれも超高級品ばかりだった。
持ってくるなと言ったのにロゼッタはティーセットを持ってきているし。
こいつらホントにキャンプする気あるのかな。
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