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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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魔神といても目立ちたくない②

大歓声は更に大きくなっていき空気を震わせるほどであった。

狐面の怪しい男という印象しかないはずなのに虹色魔導師というパワーワードが搔き消してくれているのか。

耳を澄ましてみれば顔を見せてくれと叫んでいるやつもちらほらいるみたいだ。

残念だがそれは諦めてくれ。

そんな事をすれば一生法国に足を踏み入れられなくなる。


一番多いのは七色の魔法を見せてくれ、だ。

顔は隠しているしそれくらいなら別にいいかと思い念の為法王様に視線を送ると小さく頷いた。


彼らの期待に応えるように、七色の魔力線を浮かび上がらせるとさっきまで騒いでいたくせに一瞬で静かになった。

と思ったのも束の間、先の大歓声すらも上回る声量が街を包む。

耳が痛いくらいの歓声だ。


「我など霞んでしまうな。」

フィンブルは自分より歓声が大きい事に不満らしい。

仮面の下でどや顔をしてやるとなんとなく感づいたのか足を踏まれた。




無事式典も終わり僕らは帝国へ帰る支度をする。

支度と言っても馬車に私物を少々積み込む程度だ。

法国側が事前に宮殿の裏口へと馬車を回していたお陰でスムーズに乗り込む事が出来た。

表は人混みが凄すぎて馬車が近づく事も出来ない状態だったから助かった。



「みんな虹色魔導師に会いたいんだろうね。最初は半信半疑だっただろうけどマリス君が実際に見せてしまったからね、当分は出待ちとかするんじゃないかな。」

ルーズさんに言われてちょっと後悔した。

調子に乗るんじゃなかったな。

つい歓声に釣られて七色の魔色を見せてしまったせいだ。


まあでももう帝国に帰るからいいか。

法王様には申し訳ないけど騒ぎの収拾頑張ってもらおう。



宮殿を発ち、帝国へ向けて馬車は動き出した。

数日の旅になるが今度は何かから逃げる訳でもなく旅行帰りみたいな感覚だからかとても気楽だ。

さっそくお休みしようと目を瞑った矢先、隣から声を掛けられた。


「マリス君、帝国でも虹色魔導師だという事は隠しているのかい?」

「ええもちろんです。知っている人はいますけど多くはないですよ。」

「ちなみに知っている人達はどういった方々か教えて貰えるかい?」

「僕の友人と後は十二神の方達は知っているかと。」

「なるほど、ありがとう。」

そんな事を聞いてどうするんだろうと思ったが、何かあった時の為に情報の共有をしておきたかったそうだ。

何もない事が一番だけど。


「マリスさん、法国での出来事は全て陛下にもお伝えする事になりますが、多分帝国でも虹色魔導師ガインとして振る舞うよう要求されるかと。」

「うわぁ、面倒だなぁ。」

「マリスさんから直接陛下へそう伝えて頂くと撤回されると思います。」

ナターシャさんはそう言うが、皇帝陛下にそんな物言い出来ないよ。


「問題はないかと。格という話であれば帝国の皇帝よりも虹色魔導師の方が上になります。」

「え?そうなんですか?」

「はい、そもそも虹色魔導師であるマリスさんを縛ることは出来ません。皇帝の力は十二神が全てです。なので力で抑えつけようと思っても難しいのです。」

いやいや無理だよ。

ナターシャさんは僕をなんだと思ってるんだ。

要は十二神を差し向けられても虹色魔導師なんだから追い返せるでしょって意味じゃないか。


「というよりその心配はしなくて大丈夫かと思います。もしもマリスさんの機嫌を損ねたら帝国を出て行ってしまう恐れもありますので、絶対にマリスさんの不利益になるような真似はしません。」

「それなら良かった……のかな。それはそれで腫れ物に触れるみたいで嫌だなぁ。」

「良いではないかマリス。我と世界を見て回る旅でもするか?」

それはそれで興味をそそるな。

案外知っているようで知らない事も多いし、行った事のない所だって多い。

大人になったらそういう生き方もありかもしれないな。


「む!その旅余も連れて行け。研鑽を積むのに最高の修行旅が出来るではないか。」

シルビアさんも興味を持ったのか会話に混ざってきた。

でも意外といいパーティかもしれない。

前衛のシルビアさん、前衛後衛両方こなすフィンブルに後衛の僕。

理想のパーティといっても過言ではない。


「まあいつか行くのもありですね。その時はお声がけしますよシルビアさん。」

「うむ、楽しみに待っているぞ。」


将来の楽しみが一つ出来たな。

いつになるかは分からないけど。


レオンも行きたいって言うかと思ったが、王子としての責務がどうのこうのと言い出したから誘うのは辞めておいた。

脳筋に見えて案外真面目な所があるからなレオンは。


ちなみにアスラさんは法国に残った。

法国であれば彼の事を知っている人はいないし、生きていくには丁度いいとの事だった。

彼ならばどこでも生きていけるような気はするが。



しかし帝国の被害はどれほどのものだろうか。

魔神ヘラは封印が解かれて魔界を目指したと聞いたが、その道中にある帝都の街は目茶苦茶にされたんじゃないだろうか。


家族が無事であることを願おう。


「そういえばマリス君は学生だったね、もしかしてグランバード学園かい?」

「はい、よくご存知ですねルーズさん。」

「グランバード学園を知らない魔導師はいないんじゃないかな。世界的に見ても最高峰の魔導師育成機関だからね。」

思っていたより凄い所だったんだな。

あ、でも言われてみればそうか。

学生とはいえ四色魔導師だって何人もいるし、ガウェインさんに至っては神級魔法まで使えるしな。


「魔導師という面だけでなく流石は世界最強の国家と言われるだけはあるよ。僕も帝国に生まれていたら通っていただろうね。」

「ルーズさんだったら十二神に入っていたでしょうね。」

ふと疑問に思ったが、十二神や五聖剣、四天など国ごとに最高戦力は肩書があるがみんな同じレベルの強さなのだろうか。

一度くらい世界各国の強者を集めて真の最強を決める大会とか開いてみたい。

クレイさんは除いて。


流石に五色魔導師が混ざるのは戦力差が大きすぎる。

もちろん僕も混ざれない。

あくまで四色魔導師までに限るけど、十二神の序列2位レオニス騎士団長、四天の雷天ジェイド、五聖剣のリーダーミランダさん、だったら誰が一番強いのかな。


いつか実現して欲しい組み合わせではある。


「よし、今日はこの辺りで野宿といこうか。」


帝国まで後2日ほどだ。

今はのんびり旅行を楽しむとするか。

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