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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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法国でも目立ちたくない③

竜に運ばれる事数分。

すぐに魔神と戦闘が行われているだろう光景が見えてきた。

戦場となるのは辺り一面に広がる草原。

魔法の応戦が繰り広げられているのか、そこかしこから魔法陣が浮かび上がり爆音を響かせていた。


「やっているな!!フハハ!腕が鳴るぞ!!!」

シルビアさんは相変わらず戦いになると目の色が変わる。

焦らなくてもこれから嫌というほど戦う事になるよ。


「この辺りに降ります!降りたら即行動を!竜は大きく目立つのですぐさま離脱します!」

サフィーさんから忠告され、僕らは戦闘準備を終えるといつでも動けるように構えた。


籠が地面に接すると真っ先に飛び出したのはシルビアさんだ。

表情が活き活きしていてなんとも嬉しそうだ。


「行きます!!……マリス殿、これから見る光景は忘れて頂けると助かります。」

「……え?」

サフィーさんが小さく呟くと一気に駆け出した。

僕らも置いていかれないよう全速力で追いかける。


というかサフィーさんの言葉の意味は何だったのだろうか。


「拳に宿れ!!破軍!!!」

サフィーさんが一際大きく叫ぶと、身体が緑の光に包まれた。

身体能力向上タイプの魔法によるものと思う。

でも剣じゃなくて拳って言ったようにも聞こえたが……。


それは僕の聞き間違いではなかったらしい。

サフィーさんは緑の光を放ちながら魔神の周りに蔓延る魔物の群れへと突っ込んで行った。


「あの女、なるほど、それで深緑の暴獣か。ククク、面白い真似をする。」


「シネェェェェ!!!!」

暴言と共に魔物の群れへと突っ込んだサフィーさんは拳を二度ほど振るう。

すると魔物は塵となって消し飛んだ。

……超脳筋タイプじゃないか。

頭脳派の見た目をしていたのは何だったのか。


僕らが魔物の群れがいた場所へと辿り着く頃には既に近場の魔物は殲滅されていた。

文字通り暴れる獣というに相応しい戦果だ。



「これは負けていられんな。俺も行くぞ!!!」

レオンもサフィーさんの勢いに感化されたのかやる気満々で駆け出す。


「待て!!余の分も残せレオン!!」

それを追うのはシルビアさん。

3人の暴獣は全力で暴れ始めた。

これ、僕必要だったかなぁ。



魔神ヘラは魔物を召喚する魔法を多用しているのか3人が暴れ散らしているにも関わらずなかなか減る気配がない。



「魔神は魔物を召喚する魔法が使えるからねぇ。それに魔力量はとんでもなく多いしこれは長期戦になるかもよ?」

テスタロッサはそんな事を言うが、復活直後の魔神だったらそこまで魔力は持つだろうか。

目に見えるだけでも数百体の魔物が跋扈している。

これだけ召喚し続ければいくらなんでも消耗しそうに思える。



「魔神ヘラをさっさと倒さないとこっちが消耗するよ。だから魔物はあの3人に任せてマリス君とフィンブルは先に行ったほうがいい。」

「そのようだな、乗れ!マリス!こっちのほうが速い!」

フィンブルが狼の姿に戻ると僕もその背中へと飛び乗った。


戦場を駆ける狼に目を引かれ周囲にいる神聖騎士団の人達はチラチラこちらを見てくる。

仮面を着けておいてよかった。

僕はあまり人に見られる事に慣れていないからね。



「見えたぞ、あれだ。」

魔神ヘラであろう女が魔物を侍らせて辺りに魔法をばら撒いていた。

一つ一つの魔法はそれほど火力はないようだが、ひっきりなしに飛んでくる魔法の対処に追われ神聖騎士団も魔神ヘラに近付く事は難しい。


「どデカい魔法をぶち込んでやれ、マリス。」

「分かった、七星爆発(セブンスノヴァ)!!!」

フィンブルの背中に乗ったまま魔神ヘラへと強力な魔法を撃ち込む。


7つの剣は魔物を蹴散らせながら魔神ヘラへと一直線に飛翔する。


「この魔法は……!虹色魔導師、やはりここにいたのね!!!その程度、私が防げないとでも思ったのかしら!?」

僕の放った魔法はかなりの威力を誇るモノであったが、魔神ヘラは大きな魔法陣を展開すると正面から受け止めた。

しかしこの魔法はここで終わりではない。


魔法陣へと突き刺さった7つの剣は強い光を放つと爆散した。



「キャァァ!!!」

魔神ヘラと思われる悲鳴が砂埃の向こう側から聞こえる。

それなりにダメージはあったのではないか?



砂埃が晴れると目の釣り上がった魔神ヘラが突っ立っていた。

うん、あんまり効いてないようだね。



「やってくれたわね……この私に傷を……傷を付けるなんて何百年ぶりかしら?今代の虹色魔導師はそれなりに力を有しているみたいね?」

反応する間もなく僕は再度七星爆発(セブンスノヴァ)を放った。



「また!?ちょっと!話くらい聞きなさいよ!!」

急いで魔法陣を展開したヘラはまたも防いだ。

簡単に防げる魔法ではないのだが、そこは魔神らしく相応の力を持っているらしい。



また砂埃が晴れるまでジッと見つめていると頬の辺りに血が滲んだヘラが苛立った顔で突っ立っていた。



「貴方、誰に魔法を撃ち込んでいるのかしら?」

声は目の前にいるヘラからではなく少し離れた横から聞こえてきた。


そちらに顔を向けると魔神ヘラがいた。

じゃあ目の前のあれは何だ、と再度顔を戻すとそこにはさっきさまで僕より後ろにいたはずのナターシャさんが傷だらけで横たわっている。



「しまった!幻惑魔法と転移魔法の併用か!!」

フィンブルがそんな事を零すが、僕はいまいち意味が分からず首を傾げる。


「あれはナターシャ本人だ、いいかマリス。お前が今撃ち込んだ魔法はナターシャに直撃したのだ。……我があやつに回復魔法をかける、それまで魔神ヘラを止めておけ。」

「そんな……どうやって入れ替わったんだ?」

「ヘラはナターシャと位置を入れ替えた。その上でお前に幻惑魔法を掛けナターシャをヘラだと認識させたのだ。……ぬかったな、復活直後とはいえ魔神を舐めていた。」


僕は仲間を瀕死に追いやってしまった。

幻惑魔法と転移魔法をあの一瞬で同時に使いこなすなんて高度な事を目の前でやってのけた魔神ヘラは魔法技術もかなり高い。

少なくとも僕にはそんな真似は出来ないだろう。



「ふふふ、虹色魔導師さん。仲間を手に掛けた感触はいかがかしら?」

「……まだだ、ナターシャさんはまだ生きている。」

「でも貴方……案外こんな小手先の技術に翻弄されるなんて……もしかしてまだ若いのかしらねぇ?」


仮面を被り声を変えているせいか僕が学生だとまだ気付いていなかったようだが、対応の甘さが露呈してしまった。


「……次は油断しない。」

「戦いに油断は禁物よ?虹色魔導師さん。」


目の前で嫌らしく笑顔を浮かべる魔神ヘラは、僕が想像していたよりずっと強いのかもしれないと気を引き締め直した。

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