英雄と言われても目立ちたくない④
王都観光を楽しみ、王城へと帰ってくると既に出発の支度を始めていたようで慌ただしく兵士達が走り回っていた。
亜人達は元の場所へと一度帰るし、僕らは帝国に戻る。
なかなか長い旅行になってしまったが、それなりに楽しめたと思う。
思わぬ収穫と言っていいのか分からないが、神獣フィンブルと魔神テスタロッサまで仲間になってしまった。
「それにしても本当にアンタといれば問題が尽きないわね。」
「それは僕が悪いんじゃないよ。問題が勝手に僕に寄って来るのが悪いんだ。」
決して僕から問題事に首を突っ込んで行っている訳ではない。
何故か知らないが、行くとこ行くとこ全てで何かしらの問題が待ち構えているのだ。
「でもこれで分かったわ。アンタも虹色魔導師だなんだと言いながらアタシらと同じで簡単に死ぬ可能性があるって事がね。」
「確かに!マリスってなんだか何でも出来るから殺しても死なないと思ってた!!!」
ロゼッタにアスカ、君達は僕を何だと思っていたんだ。
何度も言っているようにただの学生だという事を忘れてやいないか?
「マリスは大抵の魔法が使えるんだもんなぁ。それに魔法を創る事だって出来るんだ。どんな魔法を撃たれても効かないって思ってたぜ。」
「人間辞めてるな~って思ってたけど、そうじゃなくてボクは安心したけどね。」
ジンとミアも昔からそんな風に思ってたのか。
逆にそんな奴とずっと一緒にいれたな。
「師匠も人間だったんですね!!」
「キリカ、君が一番ひどいな。」
「ええ!!!」
何気に放った一言が一番心にくるよ。
シンプルに傷ついた。
「そんな事より早くルーザー様とエリザ様と合流しましょう。多分待ちくたびれているのではないでしょうか。」
レイさんの言う通りだ。
僕らは遊びに行ってたけど、あの二人は仕事の為残っている。
まあお土産も買ったし許してくれるだろう。
その辺にいた兵士に居場所を聞くと、今は謁見の間で全員集まっていると聞いた。
まだ何か難しい話でもしているのだろうか。
「おかしいわね。アタシ達が帰って来るまで相当時間があったはずよ。それなのにまだ話し合い?アタシ達も行くわよ、もしかしたら何か揉めているのかも。」
「王国側が条件をなかなか飲まないとかかな。」
もしそうだとしたらあまりにアホすぎる。
それでまた亜人達の怒りを買えば、今度こそ国が滅ぶと思うけど。
全員急ぎ足で謁見の間へと向かうと、衛兵が何やら難しそうな顔をして立っていた。
「貴方達、王国の兵ね。アタシ達は見て分かる通り帝国から来た使者よ。中に通して頂戴。」
「いえ、その……出来るだけ落ち着いて話を聞いて頂いた方がいいかと思います。」
「どういうことかしら?中で何の話が交わされているの?」
「ご自身の耳で聞いた方がいい内容かと……。」
何とも言いにくそうな、微妙な顔付きをする衛兵。
訳アリな話のようだ。
正直僕は聞きたくないな。
また何かトラブルでも起きたんだろどうせ。
「女王陛下、帝国の方々が来られました。」
衛兵が一言、部屋の中に向かって声を掛け扉を開いた。
中にはミカ王女、シルビア王女、ルーザーとエリザさんにマゼラン王やレオンまでいた。
王国の宰相だった男もいる。
ミモレットさんやグラン、エマさんまでいる所を見ると、各部隊の隊長格までもが集められているようであった。
やっぱり何かあったらしく全員の顔つきが険しかった。
「ただいま、帰ったよルーザー。」
「ちょっと!!マリス、他の王族がおられる場で何ふざけた事言ってんのよ!!」
「いや、構わん。マリス殿には頭が上がらんからな。」
ほら、マゼラン王はそう言ってくれる。
ミカ王女も別に何か言ってくる様子もない。
シルビアさんに至っては目を瞑ったままこちらを振り向こうともしなかった。
「とにかく全員席に着いてもらえるか?話はそれからだ。」
マゼラン王に促され僕らは適当に空いてる席へと腰掛けた。
「王都観光から帰ってきて早々こんな話をするのもどうかと思うが……言わん訳にもいくまい。」
「その続きは私から話します。」
ルーザーが手を挙げるとマゼラン王は口を閉じた。
怖いな、何の話なんだ。
もう今すぐ耳を塞ぎたい。
「心して聞いて欲しい。先程君達が帰って来る直前、私の魔道具に連絡が入った。もちろんだが相手は父上。つまり皇帝陛下だ。」
皇帝陛下からの緊急性の高い連絡ってもう嫌な予感しかしないな。
「まず大前提として知っておく話があるんだけど、帝国の地下には一体の魔神が封印されているんだ。」
知ってるねそれは。
まあキリカとかは知らないだろうけど。
「その魔神の封印が解けた、と連絡があったんだ。」
「つまり……封印が解けた魔神は暴れ回っているってこと?」
「そう、この話には続きがある。封印が解けた魔神を止める為、城に待機していた十二神が対峙。しかし止める事は叶わず魔神は城を破壊しながら暴れ回ったらしい。」
魔神が暴れるって想像出来ないけど、多分帝城は半壊、もしくは全壊だろうね。
「現在帝都を破壊し尽くしながら、ある方向へと向かっている。」
ある方向とはどこのことだ?
まさか今僕達がいる所なんて言わないでくれよ。
「帝国から北西に向けて進行中だそうで、ここを目指しているのかそれとも別の場所に向かう為の通り道なのか。」
「北西だったら、我々亜人国の北ということか。ならば魔界を目指しているのではないか?」
マゼラン王がそう指摘する。
良く考えればそれが一番しっくりくるな。
「魔界を目指す理由なんて一つしかないじゃ〜ん。」
急にテスタロッサが姿を現したと思ったらそんな事を言い出した。
皆の注目が僕の頭上に集まる。
なんか僕が注目されているみたいで嫌だな。
「魔神が魔界を目指すのは、当然の事だよ。だって配下が沢山いるんだから。いくら魔神が強くてもたった一人じゃ出来ることはしれているからねぇ。」
「配下を従えたらその次は?」
「まあ大陸支配じゃない?しかもヘラでしょ?それだけで止まればいいけどね〜。」
テスタロッサは軽い口調で言うが聞いている僕らは気が気ではなかった。
魔神の力は良く知らないとはいえ、テスタロッサがほぼ死にかけていた僕を復活させる程の魔法を使った為、何となく人の身では辿り着けない領域にいる事は理解していた。
「そのヘラって魔神は通りすがりに出会った僕らを無視するかな。」
「しないよ。」
「テスタロッサ殿、その理由を聞かせて頂けないでしょうか。」
「だってここには虹色魔導師がいるし、魔神のボクもいるし、神獣のフィンブルまでいるんだよ。立ち止まらない方がどうかしてるね。」
言われてみれば、錚々たるメンバーだった。
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