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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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英雄と言われても目立ちたくない③

マリスらが王都観光をしている頃、王城ではマゼラン王とルーザー、エリザ、ミカ王女が同盟関係についての話を詰めている所であった。


「では、連合国と帝国との導線は、ここの国境辺りに作りますか。」

「うむ、ここならば商人も通りやすいはずだ。街道の巡回警備はミカ殿に手配を頼む。」

「そちらに関しては手の空いている兵を配置致します。後は帝国内にも周知をお願いしますルーザー様。」

同盟が結ばれればお互いに恩恵を得られる。

帝国は魔法技術の提供、元王国からは広大な土地で生まれた食料提供、元亜人国からは人にはない特異性を活かし兵士の訓練や戦力の貸出が可能となる。


「元々我が国では魔法技術がそれほど高くなかったのでとても有り難い話です。こう言ってはなんですが、お父様が何者かに暗殺されたのは将来的に良かったのかもしれません。」

ミカは部屋からあまり出て来なかったせいで、ハルマスク国王に対してそれ程情は持ち合わせていなかった。


「ま、まあそれはワタクシからは何とも言えませんが……それにしても一体誰に殺されたのでしょうか?」

エリザも国王を灰に変えた魔導師の存在が気になっていた。

現場を見させてもらったルーザーとエリザは争った形跡などなく、一方的に灰にされたようにも見えた。

そんな芸当が出来るのは圧倒的な力を持つ者だけだ。

大抵は少なからず抵抗の跡が残るが今回はそれがなかった。

ということは抵抗する事なくやられたという事になる。


「考えられるとすれば水天ですが……ですがあの方はとても温厚な方でした。そんな事をする理由がありませんし、そもそも水属性を得意としているので灰に出来るとは思えません。」

「有り得るとすればその水天とやらの仲間、という可能性か。」

「はい、ですがそれが出来るかもしれない人物は帝国に幽閉されています。」

「ああ、炎天ムーア・グスタフですね?確かに彼であれば可能でしょう。ですが脱獄してここまで来て国王を殺すなんて事は……現実的ではありませんね。」

一番可能性の高いのは炎天ムーアであったが、残念ながらこの場に来れる立場にない。


「一つ気になったのは……十悪が関わっている……なんて事はないでしょうか?」

エリザの一言で全員が黙り込む。

もしも十悪が関わっているとすれば、ハルマスク国王は十悪の何者かと繋がっており、何か機嫌を損ねるような事をしたとしか考えられなかった。


「十悪であれば人を灰にする、なんて事も可能でしょう。ですが証拠がない以上断言できません。」

「この件は一度帝国に持ち帰らせて頂きます。もしかすると十二神の誰かが知っているかもしれませんし。」

ルーザーは帝国に帰って、抵抗することなく人を灰にしてしまえる魔法があるのかどうか聞いてみようと考えた。

十二神であれば、魔法に長けた者が多く新しく分かる事もあるかもしれない。


「ああ、そう言えばアレはどんな魔法を使ったのだ?長距離からマリス殿を撃ち抜いた魔法だ。」

マゼラン王がその話を口にすると、ルーザーやエリザもそう言えばと思い出した。


「その件ですが、実は私もあまり良く分かっていないのです……。お父様が関係していたと武官の数名が口にしていましたが、実際の所誰がどういった魔法を使ったという情報は何一つ分かりませんでした。」

「アレについては魔法技術に長けているエルフや我々帝国の者でも分かりませんでした。ただもうご存知の通りマリスは虹色魔導師です。そんな彼の結界を容易く貫いたのは生半可な魔法ではないはずです。」

ルーザーはエルフ達と話し合ったが結局何も分からなかったとミカに伝えると申し訳なさそうな顔をした。


「何か分かれば追って連絡しますが……なにぶん一番知っているであろう人物は既にこの世にいないので……。」

「もしかすると、その情報を我々亜人や帝国に渡さない為に国王を殺したのかもしれんな。それならば辻褄が合う。」

話し合いの末、国王を殺したのは外部の人間でありその者が長距離魔法を持ち込んだ可能性が高いと結論付けた。


その後また同盟関係についての話し合いが行われたが滞りなく終わった。



「そういえばルーザー様、エリザ様。ご友人は王都へ観光に出ていると聞きました。せっかくですから私の部屋でお茶でも如何でしょうか?」

「よろしいのですか?ではそれに甘えるとします。」

こうして3人はミカの自室へと足を運んだ。



「こちら、王国で採れた茶葉で淹れた紅茶になります。お口に合うか分かりませんが……。」

「頂きます……おお、なかなか深みがあって美味しいですね!」

「本当ですわ、ワタクシこの紅茶が好きになりましたわ。」

ミカの出した紅茶は2人にとても喜ばれた。

ミカもそれなりにお茶狂いであり、相応の茶葉は常に用意している。


「言おうと思っていたのですが、これからは同盟関係なのですから様をつける必要はありませんよミカさん。」

「宜しいのですか?ではお言葉に甘えてルーザーさんとエリザさんと呼ばせて頂きます。」

ミカは歳が近い彼らであった為少しでも仲良くなりたいと部屋に招いたのだが、ルーザーからそう提案され内心とても喜んでいた。


「実は私……殆ど部屋から出たことはなく……。こうして皆様の前でお話するのもお父様がいなくなった為仕方なくなんです。本当はあまり人前に出たくはないのですが……。」

ミカは極度の人見知りだ。

本来こんな事にならなければいつまでも部屋から出ることはなかっただろう。

なんとか王女としての努めを果たすべく、マゼラン王との話し合いに出席したのだった。


「歳が近い貴方がたがいてくれたお陰で少しは楽になりました。ありがとうございます。」

「一緒に紅茶を飲めば、もう友人ですわ。」

「うん?まあそうだね。エリザはちょっと何言ってるか分からないけど、私達も友人が少ないですからこちらこそよろしくお願いします。」

「ついでと言ってはなんですけど……あの、マリスさんはどういったお方なのでしょうか?話によると虹色魔導師だとか……。」

ミカの口からマリスの名が出ると、ルーザーはやっぱり来たかといった反応を見せた。

マリスは一応狐のお面を被って公の場には出席している。

顔が見えない以上、どういった人物か予測が付かないようだ。


「マリスは私達と同じ学園に通う友人です。大人しいですし誰に対しても優しく平等に接しますよ。」

「マリスさんはワタクシも師と呼ばせて頂く仲でして、多分ミカさんもすぐ仲良くなれますわ!そういえばマリスさんと初めてお会いした時の話なんですが……。」


こうしてミカの初めての友人との会話を楽しみながら時間は過ぎて行った。

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