学園でも目立ちたくない⑥
教室に戻ると既にオルバ先生が居た。
まだ授業の時間まではあるはずだが、何故か居る。
「ん?フェイルとマリスか。俺がなんでいるか不思議そうな顔してるな。一応こんなんでも担任なんだぜ?お前らの顔と名前を覚えようと思ってな。」
見た目によらず意外と真面目な人らしい。
ただ席に着いてもずっとこっちを見ているのは気になるが。
鐘が学園中に響き渡る。
授業開始の合図だ。
「はぁい、お待たせ〜。」
ジリアンがまたもや教室に来た。
「ウチもお手伝いっていうか副担任として就任したからよろしくねぇ〜。それに闇属性を極めているウチがいたほうが君達の為にもなるしね。」
オルバ先生とジリアン先生合わせれば、赤、緑、黄、藍、紫色と五属性を教えることが出来る。
特に紫色はなかなか居ないというし、ジリアン先生が副担任になったのはありがたい話だ。
座学はつまらなかった。
最初の10分で夢の中だった。
というか既にテレーズさんから習った事ばかりだ。
僕らは早いうちから学園レベルの魔法講義を受けていたんだなと今更ながら思う。
「はい、今日の授業は終わり!!当分座学メインになると思ってくれ。その代わり1週間後にはみんな楽しみなあれがあるぞ!それまでに班は決めとけよ。では解散!」
あれとはなんだ?
誰か知ってるかな?
周りをキョロキョロするがフェイルの周りには案の定女子が集まっているし話しかけにくい。
誰かいないものかと目線を彷徨わせていると目があってしまった。隣の人と。
「何よ?やっとあんたから歩み寄る姿を見せたわね。はぁ、待っていたのよアタシは。アタシから近付けば逃げるし、かと言って全然話し掛けてもこないし。隣なのにね!!!」
何も話してないのによく喋る女の子だ。
しかもまたプリプリしてるし。
この子に聞くのもなぁ、一応公爵様だし。
「えーと、ロゼッタ様、聞きたい事がありまして。」
「何よ、というか様なんて付けなくていいわ。アンタフェイルと普通に喋ってるじゃない。同じでいいわよ。」
「あ、そう。じゃあロゼッタあのさ。」
「はや!切り替えが早いわね!」
「え、だって普通に話していいっていうから。」
「いいんだけどね!ただアンタって公爵令嬢相手に物怖じしないのね……。」
「いやするよ。ただロゼッタはすぐプリプリするから慣れただけ。」
「何よ!プリプリって!!初めて言われたわそんな言葉!!」
全然本題に入れないじゃないか。
「あのー聞きたい事があったんだけど。」
「何?アタシが分かることなら何でも聞きなさい。」
「さっき先生が言ってた楽しみなあれって何?」
「アンタそんな事も知らないの?あれっていうのは一泊二日の野営キャンプよ!泊まりよ泊まり!学園が所有する山で野営するはずよ。」
「へー。ソレの何が楽しいの?」
「楽しいに決まってるでしょうが!!キャンプよ!?アタシ初めてだから楽しみで仕方ないわ!」
そうかな、僕は家族でキャンプしたことあるけどな。
そうか、ロゼッタは公爵家の娘だ。
お嬢様をキャンプなんて連れて行くわけがない。
だからこんなにウキウキなのか。
「ふーん、僕やったことあるからそんな楽しみでもないかな。」
「ええ!?キャンプしたことあるの!?どんなだった!?」
「普通にテント張って適当にその辺の動物狩って食べる。それだけ。」
「楽しそうじゃないの!」
動物を狩るなんてこともしたことないんだろうなこのお嬢様は。
そんな話をしていると何処から聞きつけたのかロゼッタの後ろにはシーラが立っていた。
「あ、シーラ様。」
「ご機嫌ようマリスさん。何やら楽しそうな会話をしてましたわね、ワタクシも混ぜて頂けるかしら。」
「良いですけど、キャンプの話ですよ。」
「あら、ワタクシも初めてですわ、楽しみですわねお姉様。」
「シーラも初めてよね!楽しみだなぁ空気が綺麗なんでしょ?」
「まあそうとも言う。」
「な、なんか煮え切らない返事ね……。」
「マリスさんはキャンプのご経験が?」
「そうですね、僕はやったことあります。男爵家なんて平民に近い生活ですから。」
「あら、それは頼もしいですわ。ワタクシ達にもテントの張り方など教えて頂けるかしら?」
「良いですけど……シーラ様とロゼッタとは同じ班にはなりませんよ?」
「何でよ?」
そんな不思議そうな目で見るなロゼッタ。
当たり前だろ、君等みたいなお嬢様と同じ班になろうものなら目立って仕方ないじゃないか。
「いや、目立つじゃないか……僕はあまり目立つのが好きじゃないんだ。」
「いいじゃない。アタシがこうして誘ってあげてて断るやつなんて初めてだわ。」
「そうですよマリスさん。それとワタクシにも普通の対応で構いませんわ。」
そうはいうがねシーラさん。
貴方の笑顔は怖いんですよ。
目が笑ってないし。
「いえ、その〜シーラさんでも良いですか……?」
「お姉様は呼び捨てですのに?」
くううう、なかなか食い下がってくるなこの人は。
「いやまあそのロゼッタは呼び捨てが似合うといいますか……。」
「ワタクシも呼び捨てで敬語はいりませんわ。」
「いえですから。」
「ワタクシも呼び捨てで敬語はいりませんわ。」
「わかったよ……シーラ。」
怖いから全く同じ事を繰り返すのはやめて欲しい。
「それで目立つからワタクシ達と一緒の班は嫌だと?」
「そう。だから別の人と組んでくれ。」
「では貴方は誰と組むのですか?」
「まあそれは同じ格の家柄の人と組むよ。」
「別にいいじゃないの!!!」
あーめんどくさ。
目立ちたくないからそう言ってるのにそんな声を荒げたからみんなこっちを見てるじゃないか。
「む、マリス。野営キャンプの話か?」
ほら来た。
フェイルが取り巻きの女の子を放ってこっちに来ちゃったじゃないか。
「野営キャンプ楽しみであるな。マリス!俺と同じ班になろうじゃないか!!」
「ええ〜お前もかよ……。」
どうすればここから逃げられる?
辺りを見回しても逃げ場はなさそうだ。
「ちょっとフェイル!今アタシが誘ってるでしょうが!後から出しゃばるのは辞めなさいよ!」
「何!ロゼッタ!君もマリスを誘っているのか!!くっ、なんてやつだ!!マリスを奴隷のように働かせるつもりだろう!!!」
「そ、そんな事するわけないでしょうが!!!アタシを何だと思っているのよ!」
はあ、1日が早く終わらないかなぁ。
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